表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/277

寺社奉行・佐伯 : 殿への説得 2

 寺社奉行の佐伯(さえき)は殿の右眉(みぎまゆ)が少し上がるのを見ていた。

これは殿の(くせ)だ。

なにか相手に違和感を感じたり、相手が真意を話していないと感じた時に出す。


 「其方(そなた)には何か対策があって進言しに参ったのであろう?」

 

 殿の問いかけに、佐伯はやはり・・と、思った。

幼き頃より仕えただけに、お見通しのようだ。

さて・・、祐紀(ゆうき)()の国へ行く許可をどう取るかだが・・。


 佐伯が押し黙っているのを見て、殿はさらに言葉を重ねた。


 「どうした?」

 「・・・。」

 

 佐伯は直ぐには答えず、一度深呼吸をする。

これから話すことは殿がおそらく激怒するだろう。

へたをすると蟄居(ちっきょ)(※1)かもしれな・・。

いや、蟄居ですめばよいが・・。


 丹田(たんでん)(※2)に力を込め、覚悟を決めて佐伯は話し始めた。


 「祐紀に閻魔堂(えんまどう)が破壊されてもいいように結界を強化させます。」

 「そんなことが、できるのか?」

 「はい。」

 「ならばそうせよ・・。」


 殿は怪訝(けげん)な顔をした。

祐紀ができるなら、(わし)になど報告する必要もない。

それなのに、態々(わざわざ)儂との面会など求めてきたのだ。

訳が分からず、おもわず顔に出してしまった。


 佐伯はそんな殿の顔を見つめながら、(わけ)を話し始めた。


 「一つ、問題があるのです。」

 「なんじゃ?」

 「祐紀一人では結界の強化はできないそうです。」

 「?」

 「霊能力者の協力が必要です。」


 「霊能力者? ならば頼めばよかろう?」

 「祐紀同等の霊能力者が必要とのことです。」

 「なんじゃと!? そのような者などいないであろう!」


 「いえ、居ります。」

 「?」


 殿は佐伯の言葉に呆然(ぼうぜん)とした。

祐紀と同等以上の者など聞いたことはない。

多少の霊感のある者はおろうが、祐紀ほどの霊能力者がいるなどと聞いたことがない。


 「そのような者がいるのか?」

 「はい。」

 「誰じゃ?」

 「()の国の姫御子(ひめみこ)様です。」

 「バ! バカを申すでない!」


 殿は激怒した。

無理もない。

姫御子は《《陽の国》》で(あが)められる最高位の霊能力者だ。

《《陽の国》》が自国と関係の無い事に、姫御子を寄越してくれるはずがない。

猫の子を貰うのとは訳が違う。


 それに国賓として姫御子は祐紀の《《成人の義》》でお越し頂いたばかりだ。

立て続けに姫御子を呼ぶと誤解を招く。

姫御子を呼び寄せ、そのまま返さないのではないかと。


 ましてや、今回の頼みは《《陽の国》》の利益にならないのだ。

もし我が国の求めに応じたとしたら見返りを求めるだろう。

それも我が国の足元を見て、無理難題な要求をしてくる可能性がある。


 佐伯は殿の怒りに(しば)沈黙(ちんもく)をする。

殿に少し冷静になってもらうためだ。

やがて殿が怒りで握った拳が少し緩む。

それを見て佐伯は殿の説得を(こころ)みる。


 「それでは殿にお尋ねします。」

 「なんじゃ?!」

 「祐紀のような霊能力者が他にいると思いますか?」

 「!・・。」


 佐伯の言葉に殿は押し黙った。

その様子を見て、再び佐伯は殿に聞く。


 「もう一度お聞きします、他に霊能力者はいますか、殿?」

 「・・・おらんじゃろうな・・。」


 そう言うと殿は再び黙る。

佐伯は押し黙った殿を見つめていた。

しばらくの沈黙の後、殿が佐伯に確認を行う。


 「結界は、本当に祐紀一人ではできぬのか?」

 「はい。」

 「・・・なんとかならんのか?」

 「なりませぬ。」

 「・・・。」


 「それでは殿、結界を諦めますか?」

 「・・・。」

 「ご決断を。」

 「結界の強化以外、方法はないのか?!」

 「ありませぬ。」

 「う、ぬ・・。」


 殿は再び押し黙ると、腕を組み目を(つむ)ってしまった。

佐伯は殿の様子を伺うしかなかった。

重苦しい沈黙が続く。


 佐伯の背中に冷や汗が流れる。

ひたすらに殿の言葉を待った。

しかし、いつまで待っても殿は姿勢を崩さず沈黙していた。

佐伯は覚悟を決めて殿に声をかけた。


 「殿、《《陽の国》》の姫御子様をお呼び致しましょう。」


 「《《陽の国》》が了承するわけがないであろう。

 仮に了承する事があっても、法外な見返りを要求されるであろう。」


 「見返り要求なしに、依頼ができるとしたら?」

 「何?!」

 「もし、できるとしたら如何(いかが)いたしますか?」


 殿は目を見開き固まる。

しかし、直ぐに冷静になり佐伯を見つめた。

佐伯も目は反らさずに殿を見る。

そして殿は、やれやれと首を横にふり、佐伯に語りかける。


 「もし、そうできたとして《《陽の国》》が依頼を受けるかは別物であろう?」

 「いえ、姫御子様は依頼を受けます。」

 「なに?!」

 「《《陽の国》》は依頼に乗ってきます。」


 殿は佐伯の言葉に思わず息をのんだ。


===============================

参考) 簡略して記載しております。参考程度にして下さい。

 ※1 : 蟄居 ちっきょ

    刑罰の一つ。

    家の中に閉じ込める刑。


 ※2 : 丹田 たんでん

    おへその下、3cm位の場所にある気に関連する場所。

    武芸などで気合いや、勝負を決める時、または座禅などで意識する場所。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ