祐紀の目覚め 2
祐紀は出された重湯を食べていた。
医者からの指示で布団から出ることを禁止されており、食事は布団の上で取っている。
空腹感はあるのだが、思った程食べられない。
さすがに2日間も寝ていたという事だけあると内心でぼやく。
ご飯茶碗で1杯半食べただけで箸を置いた。
お紺からお茶が出され、一口飲む。
お茶が美味しい。
お茶を飲み干し、お代りをする。
お茶を半分ほど飲んだところで、湯飲みを両手でそっと包み込む。
手に伝わる《《ほんのり》》とした温もりを噛みしめる。
すると食事で体が暖まったためだろうか、睡魔が襲う。
瞼が閉じそうになっては、ハッとして瞼を開く。
それを何回か繰り返す。
その様子を見てお紺が笑った。
そして飲みかけの湯飲みを祐紀から受け取る。
「祐紀様、寝られたらどうですか?」
「いや、起きていようかと・・。」
「どうして起きていようとするのですか?」
「・・あ、うん・・・、2日間も寝て起きたばかりだからね。」
「でも、無理して起きている必要はないと思いますけど?」
「・・そうかな?」
「はい、すこし横になられては?」
「うん、そう・・するね・・。」
そういうと祐紀は布団で横になった。
横になったとたん、睡魔に負けて寝息を立て始めた。
お紺はその様子を見て、一瞬不安になる。
また、起きなくなるのでは・・?と。
思わず声をかける。
「祐紀様?」
「・・・う・・ん。」
祐紀が応えてくれたことでお紺は安心した。
どうやら大丈夫のようだ。
このまま寝かせてあげようと、祐紀の上掛け布団をかけ直す。
そしてお粥の膳を、音を立てないように気を付けながら運び去った。
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祐紀が目を覚ますと、辺りは暗くなっていた。
どうやらいつのまにか寝てしまっていたらしい。
起きようとすると声がかかった。
「祐紀よ、起きたか?」
「あ! これは御奉行様!」
「よい、そのまま寝ておれ。」
そういうと佐伯は祐紀の肩を軽く押さえて寝かせつける。
「すみません、御奉行様。」
「御奉行様、ね~・・」
そういうと佐伯は不満そうな顔をした。
祐紀は怪訝な顔をしたあとハタと気がついた。
「あ、えっと、佐伯様、その、ご心配をおかけしました。」
「おお、呼び方を覚えておったか?」
「え、はい・・。」
祐紀は、佐伯様と呼ぶのには抵抗があり困惑する。
そうとは言え、御奉行自らの指示のため、なんとか慣れようとしていた。
「ご心配をおかけしてすみません。」
「うむ、まあ、目覚めてなによりじゃ。」
「はい。お手数をかけました。」
「よいよい・・、そんなに恐縮するでない。」
「・・はい。」
「お前の養父から、お前が倒れたのは御神託によるものだと聞いておる。」
「・・・。」
「どのような御神託じゃ?」
「それが・・、その、思い出せないのです。」
「どういう事じゃ?」
「前もそうだったのですが、時間と共に思い出すかと。」
「そうか? そういうものなのか?」
「いえ、普通はそのような事はないのですが・・。」
「何か理由があるのか?」
「それは、私にもわかりません。 神のなさることですから・・。」
「そうか・・。」
「はい。」
「お腹は空いておるか?」
「いえ、寝る前に食べたばかりですので。」
「では・・、飲み物は?」
「それも、今はいりません。」
「そうか・・。」
「・・・。」
「まだ、横になっていた方がよいのでは?」
その言葉に祐紀は瞬きをした。
そして何か言おうとしてグラついた。
「これ! 祐紀、大丈夫か!」
「あ、え、はぃ、ちょっと目眩が。」
「寝ていなさい!」
「え、でも・・。」
「儂への気遣いは無用じゃ。」
「・・。」
「寝なさい。」
「・・はい。」
そういうと祐紀は横になった。
体が重く、また睡魔が襲ってくる。
瞼が閉じそうになるのを堪える。
瞼が閉じそうになっては開く様を見ていた佐伯が声をかけた。
「目を閉じなさい。」
「・・・はい・・。」
祐紀は素直に目を閉じた。
すると睡魔が祐紀を包み込んだ。
祐紀はすぐに意識を手放した。
やがて穏やかな寝息を立て始める。
そのようすを佐伯は暫く見届けた。
やがてゆっくりと佐伯は立ち上がった。
佐伯は日が暮れる前に祐紀の側にきて、それからずっと付き添っていたのだ。
お紺が自分が付き添うからというのを断り側にいた。
祐紀の養父から預かったと言うことだけで無く、祐紀を気に入っており心底心配していた。
祐紀の寝顔を立ったまま確認をして呟く。
「うん、寝息も穏やかで、顔色も大丈夫そうだ。」
そう言うと、佐伯は音を立てないように、その場を去った。




