姫御子の養父の一面・・
養父様は私が祐紀様のお越しを断ると聞いても無反応だった。
ただ、私の顔をじっと見る。
そして、突然、口角をあげ悪巧みをした時の笑顔をつくる。
この笑顔はヤバい。
養父様がこのような笑顔をしたときは大変なことになる。
昔、私が姫御子になったばかりの頃、御神託を受けた事がある。
その頃、私の御神託に対する信頼感は神殿内では二分されていた。
そして、その影響もあり、その御神託を知らせたのだが災害は防げなかった。
それはある神官が、私の御神託を軽く見た落ち度による物であった。
そのため、その神官が降格されたのだ。
その神官が降格されたことにより、私に災難がふりかかってきた。
その神官の親戚筋に権力者がおり、降格を根に持ったからだ。
その権力者は、私に何かと難癖を付けてきた。
私に降格した神官に詫びさせ、その神官に落ち度がなかった事にしたかったようだ。
しかし、それは私の矜恃が許さなかった。
防げたはずの災害が、その神官により発生してしまっているだ。
人の命がなくなっているというのに、そのような身勝手な要求など呑めるはずもない。
そんな状況の中、御神託を私は受けた。
そして、その御神託の実行に対しても嫌がらせをしてきたのだ。
養父は、そんな私の状況を把握していた。
しかし決して私を甘やかしたり、助けることはなかった。
私も養父に助けを求めはしなかった。
なぜなら、これは私の問題で養父には関係ないと幼いながらに分かっていたからだ。
しかし、そう思いつつも養父が声さえもかけてくれない事が寂しかった。
私は何故養父が声さえもかけてくれないか考えた。
そして、この程度を乗り切らなければ姫御子は勤まらないからだろうと察した。
そう思うと自分が姫御子だということを改めて自覚したのだった。
権力者は最高司祭である養父が私への嫌がらせを咎めないことをいいことに、神官達が見ている前でも私に嫌がらせをするようになった。
権力者とコネのない神官や、私を取り込みたい神官は、その様子を見て好機と捕らえたのだろう。
甘言や、権力との仲介をして恩を売ろうとする者が現れた。
そのため、私は権力者の嫌がらせ以外に、神官にまで気を使うはめとなった。
私はまとわりつく神官達に、言質をとられないよう慎重に振る舞った。
今でも、その当時の神官達の顔や、声色を思い出すことがる。
そのような状況の中、私は嫌がらや、神官をなんとか受け流し御神託をこなしたのだった。
養父は、御神託をやり遂げた事を見届けると私を褒め称えてくれた。
そして今まで甘やかさなかった分まで甘やかしてくれた。
子供心に凄く嬉しくてしかたなかったことを覚えている。
そして、私を褒めちぎった後、養父は今日と同じ笑顔をしたのだ。
「よくやった。そして、お前の邪魔をした者にはお仕置が必要じゃな。」
この言葉を添えて。
それからまもなく、私に嫌がらせをした権力者達が処罰された。
養父が私に対する嫌がらせをした者を徹底的に調べ上げた。
それも決して言い逃れができない証拠をそろえて。
処分は、権力者だけでなく、権力者に荷担した者を一人も逃さない徹底ぶりだったらしい。
私に甘言や、権力者との仲介で恩をきせようとした神官も降格や、排除がされた。
それらか私には安らかな日々がもどってきた。
養父は基本優しい人だ。
善意には善意を返すが、悪意には徹底して二度と立ち上がれない程に叩く。
怖い人でもある。
それも権力者が権力を笠に着た悪意には、特に厳しいのだ。
その笑顔が今日現れたのだ。
悪い笑顔を見せながら、私に話した内容が信じられなかった。
「祐紀殿に是非来ていただこう。」
「え!」
「祐紀殿が姫御子に示したご厚意を無にできんであろう?」
「し、しかし!」
「大丈夫だ、大掃除を行うことにした。」
「え?!」
「小泉神官一派を箒で掃き出す事にした。」
「そんな事をしたら神殿で内紛がおきます!」
「そうはならない。塵一つ残さないから内紛など起きん。」
「!」
「それに神殿を中立的な立場に戻すには、ちょうどよい機会だ。」
「・・・」
「それに姫御子に情報部の仕事をさせるには丁度よい教材だ。」
「え?」
「情報部の長としての初仕事だ。」
「え?」
「返事は?」
「は、はい・・。」
「よろしい、楽しいお仕事になるとよいな、姫御子よ。」
私は養父の笑顔と言葉に背筋が寒くなる。
ただ、しなければならない事は分かっている。
一つには私への御神託をなんとしてでも完遂させる事。
それに協力するためにお越し下さる祐紀様に迷惑などかけられない事だ。
これには、陽の国と陰の国との平和も関連してくる。
それはひいては陽の国の平和となる。
養父様の言葉は重いが、決意を固めた。




