姫御子の動揺 : 緋の国の野望・・
「緋の国の巫女と神官については分かったな?」
「はい。」
「さてと、次は緋の国と陰の国の関係だ。」
「関係、ですか?」
「ああ、そうだ。それが祐紀殿にかかわってくる。」
「?」
姫御子はポカンとしてしまった。
神社関係者である祐紀様に、国どうしの諍いが関係あるとは思えない。
そう思い眉間に皺を寄せた。
養父は姫御子の顔を見て、苦笑いをした。
「まあ、聞きなさい。」
「え・・、はい。」
「緋の国なのだが陰の国を欲しているのだ。」
「それは何故ですか?」
「緋の国では自然災害が度々発生し、作物が不足しているのだ。」
「でも、それは自業自得であり、陰の国は関係ないではないですか?」
「まあ、理屈ではそうなる。」
「理屈・・では、ですか?」
「よく考えてみなさい。」
「?」
「自分の家が貧しく食べるものがなかったとしよう。」
「はい・・?」
「隣の家では食べきれないほど、食べ物があったとする。」
「・・・。」
「自分の家は武勲にすぐれ、隣の家はひ弱で力でなんとでも出来たとしたらどうする?」
「え? まさか力ずくで食べ物を奪い取るとでも?」
「人とはそういうものだ。」
「そして、緋の国と陰の国がまさにその関係なのだ。」
「しかし国と国どうし、そんな簡単に戦争などするわけがないかと・・。」
「そうだ、今はな。」
「?」
「ただ陰の国には戦争をする理由はないが、緋の国にはある。」
「それは自分勝手な理由じゃないですか?」
「そうだ、それが人間であって国なんだ。」
「・・・」
「ただ、陰の国も馬鹿ではない。緋の国の動向はわかっているであろう。」
「・・・」
「では、お前が緋の国の為政者ならどうする?」
「それは、戦争をしたい場合ですか?」
「そうだ。」
「そんな・・。」
「考えてみなさい。」
姫御子は仕方なく緋の国について考えてみた。
戦争を行うには、相手国に戦争をするための理由が必要だ。
ならば、どうする?
陰の国が緋の国に戦争をしかけるとは思えない。
ならば、陰の国が緋の国を貶めたとか、戦争をしかけたという嘘を吐かなければならない。
いや、そう見せなければならない・・。
なら、どうする?
姫御子は考える・・。
そういえば祐紀様の話をしていたんだっけ・・。
なのに緋の国の話しを養父様はし始めた。
なんで緋の国の話しを交えているのだろう?
祐紀様が陽の国に来ることでさえ大事だ。
もし、祐紀様が緋の国に行ったとなると・・。
あ!
「父上、もしや祐紀様が絡んできますか?」
「そうだ。」
「例えば祐紀様が緋の国に捕らえられ、緋の国が陰の国に亡命してきたのだと言ったら?」
「・・続けなさい。」
「陰の国には、そのようなことが納得できるとは思いません。」
「うむ。」
「陰の国が何と言おうが、緋の国が祐紀殿を返さないならば・・。」
「正解だ。戦争となっても不思議はない。」
「そんな恐ろしい事を本当にするものなのでしょうか?」
「疲弊した緋の国ならやっても可笑しくはないだろう。」
「人とは、いえ、国とは恐ろしいものですね・・。」
「そうだな・・。」
「もしかして小泉神官は、緋の国を手伝っているのですか?」
「たぶん、そうだろう。」
「何のメリットがあるのでしょう?」
「わからないが、おそらく金銭、そうでなければ緋の国の爵位かもしれんな。」
「緋の国の爵位?」
「ああ、緋の国が陰の国を手中に収めたら、陰の国の一部を与え爵位も貰うとかだ。」
「・・・」
「もしかして陰の国が私を貶めたという噂も小泉神官が?」
「おそらくそうであろう・・。」
「なぜ、そのような噂を?」
「陰の国を貶めて、緋の国をよい国に見せる。世論操作の下地であろうな。」
「そんなことをしても陽の国にメリットはないではないですか?」
「陽の国にはないが、小泉神官にはある。」
「えっと・・、それは緋の国へ協力をしたという事でですか?」
「そうだ、それ以外にもある。」
「?」
「もし、姫御子が噂を気にしていた場合、その噂対策をすると持ちかけて恩もうれる。」
「・・・確かに、それと思われる行動が・」
「あったのか!」
「え、ええ・・。」
「なんでそれを言わん!」
「すみません、持ちかけられましたが振り切れましたので・・。」
「そうなのか!・・、まぁ、そうであればよい。小泉神官に言質さえ取られなければな。」
「はい。」
「小泉神官から接触があった場合の対策を考えんといかんな・・。」
「え?・・。」
「まあ、よい、それよりも気を付けなければならないことがある。」
「・・・それは何ですか?」
「祐紀殿がこちらに来た時に、小泉神官が祐紀殿を緋の国に連れ去ることだ。」
「なっ! そ、そのような事!」
「さっきお前が言ったではないか、緋の国が陰の国と戦争をするための筋書きを。」
「あ!」
姫御子は青ざめた。
私の御神託の手伝いに来て下さった場合、危険にさらしてしまうなんて!
まずい、どうすればいい?
祐紀様には事情を話して、こちらに来るのをやめてもらおう。
御神託は私だけの力でなんとか乗り切ればいいだけの話しだ。
祐紀様に迷惑はかけられない。
「養父様、祐紀様にはお越しの件、お断りの文を送ります。」
それを聞いた養父は別に驚かなかった。
国と国との問題に陽の国を巻き込むわけにはいかないからだろう。
いくら私の御神託のためとはいえ。
そう思ったのだが・・。




