第四十三話 「偽装」
何人もの警官が階段を登っている。
じきに二階へは到達するだろう。
軋む階段に緊張が混ざる。
先頭の警官が二階へ着いた。
扉は三つ。
順にドアノブを回していく。
……
一つ目、二つ目のドアは何事もなく開く。
勿論中には誰もいない。
だが三つ目のドア、一番奥のドアだけは鍵がかかっている。
彼はここにノートがいると考えた。
「…突入するぞ?いいか?」
後ろに続く警官達は、既に覚悟を決めている顔だ。
一つ深呼吸したその男は、そのドアを蹴り破った。
……
そこにノートはいなかった。
あったのは、家具ぐらいだ。
「!? どこかに隠れているのか?」
ベットの下を覗き込んでみた。
しかし埃ぐらいしか見当たらない。
「まさか…もう外に出ていたのか?」
後ろの警官は、顔を見合っている。
警官の思考回路を止めたのは、ある仲間の声だ。
「隊長!! 敵はどこに!?」
彼は援軍に来た男の一人のようだ。
…
「……待てよ?お前ら、一階に戻るぞ。」
彼は何か閃いたようだ。
…
散乱した瓦礫。
自分の手だけを頼りに瓦礫を取り除いていく。
「…まさかとは思ったが…な。
よし、一回外に出るぞ。」
警官達は困惑した表情で外に出てきた。
「一体なんですか…?」
「俺らは、最初12人で防衛していた。
その後2人を研究所内にいれた。
それ以降の動向は関与していない。
その後援軍を呼んだ。
そして10人来た。
つまりここには、俺含めケガ人を除いて20人居なきゃおかしいよな?」
「ええ。ですが、どう見ても今ここにいるのは20人ですよ。」
「ああそうだな。
だが、大切な事を忘れている。」
「?」
「さっき研究所に入った時、瓦礫に埋もれていた警官が1人いた。
そして地下からもう1人警官が出てきた。
俺は玄関から目を離さなかった。
誰も入って行く様子はなかったし、そもそも俺が出入りを禁じていた。
なのによ?
なんでもう1人瓦礫の中から仲間が出てくるんだ?」
男は知っていた。
ノートは幻を作りだし、見せられる事を。
もしその幻が、身に纏えるのだとしたら?
「!!」
「…してやられたって訳だな……」
つまり。
ノートは幻を身に纏い、自身が警官だと装って、警官を呼んでくるという体で外に出たという訳だ。
「探せ!!まだそう遠くまで行ってないはずだ!!」
……
…
一方のノートは、既に隣街に入りかけていた。
「…流石に…ここまでは来ないだろ。」
研究所がある街とこの街は、前々から仲が悪いという話がある。
となれば、そう簡単にこっちまで捜査ができる筈がない。
「さてと、目的地はどこだったかな。」
ポケットからスマホを取り出し、目的地を確認しようとした。
その時だ。
遠くの方で爆発音が聞こえた。
震源らしき場所からは、煙も確認できる。
果たしてそれが何の音なのかは分からない。
だが非常に悪い予感がする。
スマホに目を向けた。
目的地の方角は、煙の上がっている方角と同じだった。
「!!……まさかな。」
焦る指先を巧みに動かし、レスムの名を電話帳から探し当てた。
通信は数分前切っているので、スマホで掛けなければならなかった。
何度かコールが鳴る。
しかし繋がらない。
30秒程待った。だが繋がらない。
「…無事だろうな?レスム?」
留守電を残す間も無く、現場へ急いだ。




