表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イデア  作者: 天汰唯寿
第3部 「帰るべき場所」
38/70

第三十六話 「恐怖の刃」

両者の間は数百メートル。

剣と銃では分が悪すぎる。


「接近戦で行くしかないか!」


ノートが一歩踏み込む。


この時既に銃弾は放たれている。




弾はノートの眉間を射抜いた。


その影が一瞬揺らぐ。


「?」


「この能力は目視出来まい。」



ノートは今まさにガルフィスの背を斬る所だった。

この時既に刺さったままのコアを回収していた。


「!?」


振り向くが速いか、また剣は右手から離れ、真後ろに飛んでいった。




そこまでは計算済みだ。



「弐の型『双竜』!」


光を放つ二本の剣。

空さえその光で覆われそうだ。


「なんだ。目くらましか?」


「寝言は寝てから言いな。」



双剣が宙に円を描く。

的確にガルフィスを狙っている。


1秒で三振りか。


しかしその程度ではやられない。


「ベクトル弄るのは間に合わない。

だがこの程度、避けるのは容易い!」



至近距離。

二発の弾丸が撃ち込まれる。


弾丸は剣に掠りもしない。


ノートはすぐに理解した。



ほんの僅か、弾丸が右へ左へ動いている。


「チェックだ。」

「そう思うか?」



正面のノートの影が消えていく。


「ワンパターンだな!」

振り向きざまに構える銃。


しかしノートはいない。


「なっ!?」

「上だ。」


ノートの剣は構えられていた。

その手には、光り輝く一筋の剣。


そして詠む。

「超流一式居合『死の鎌』!!」



一瞬にして刻むガルフィスの体。






時空さえ歪み、崩れたかのように錯覚する。







周囲がグラつく。










とうにガルフィスの意識は飛んでいた。




……







右手に持った先程の小瓶。


うんともすんとも言わなくなったガルフィスにそれと落とす。



するとガルフィスは闇に溶けていった。

恐らく、あの城へと戻っていったのだろう。




ひと段落。



かと思いきや


「お巡りさん!あの人です!逃げる人を捕まえて暴力を振るってたんです!」




待ってくれ。どっちが犯罪者だ。




そんな言い訳も聞く訳がない。


警察は自分の肩に手を掛けてきた。



「キミ、ちょっと話聞かせてくれるかな?」



やれやれどうしたものか。







とにかく逃げるしかない。



「あ、待ちなさい!」



住宅に囲まれた久しぶりの道をとにかく走る。





徐々に足がもつれていくのに気がついた。




このままでは捕まる。




「しゃーない…!」


力を込めた大剣でアスファルトを殴りつけた。


途端、地割れでも起きたかのように地面がせり上がった。



「このツケは税金で出しといてくれ!」


ほぼゴリ押しで警察の手を振り切った。





…しかしどうするか。

このまま逃げようとも、いずれ指名手配されて終わりだ。


この世界に仲間はいない。


その現状だけが苦しい。




その時だった。


「…おじさんも、変な能力持ってるの?」



声の主は、自分の足元から話しかけていた。


小学校低学年…といった所か?

おしとやかそうな少女がこちらを見ている。



「おじさんか…。俺もそんな歳か。


それより、ここは危ないよ。

はやくどこかに避難しないの?」


「だって、楽しそうなんだもん。」



楽しそう……?

なぜそんな事を平気で言える?



…いや待て、さっき『おじさんも』って言ったよな?

まさか…こんな子が能力者?



「…どうしたの?」

「いや、ただの考え事さ。


…ところで君一人?親とかは?」


「はぐれちゃった。」


「どの辺りで?」

「分かんない。さびしい。一緒に探してくれない?」




言動を聞く限り、やはり子供だ。

それに、手先と言う訳でもないらしい。



「君の親を探してあげたい気持ちは山々なんだけど、俺は今犯罪者なんだ。

ついてきたら、君も共犯者になっちゃう。」


「…むずかしいことは分からない。だけど、アナタは優しい人だと思う。



だからアナタにおねがいしたの。」




……一体どうしたものか。

もしまた誰かを犠牲にするような事になったら…





不安。


トラウマ。




それらの思考を遮ったのは、変な声だ。


「お前さん、可愛い顔してるなぁ。」


「誰だお前?この子の親という訳じゃ無さそうだな。」



足元の少女はノートの後ろへ隠れた。


「そんな隠れんでもいいのに。隠れたらその綺麗な顔が見えないやんか。」



少女は殺しかけの声で話した。


「あの人、怖いの。

すぐに誰かとケンカするの。」



どうやら世界は、休ませてくれないらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ