第三十七話 「冤罪容疑」
「じゃああれか、あの人倒せばいいのか?」
「ほお?言ってくれるのお。
一つ助言するとな、ワシはこの近辺最強やねん。
邪魔せん方がええと思うんやけどなぁ?」
「そのエセ関西弁、気に食わねえな。」
「よぉ言ってくれるわ。」
その時、ノートには見えていた。
正面のチンピラの背後にいる守護者が。
ガスマスクのようなものを付け、帽子を深く被っている。
たなびくマフラーは戦い慣れた風格の表れか。
恐らく、ノートは彼を見たことがあった。
顔こそ違うが、その服装が記憶にある。
「…ネス?」
その一瞬が命取りだった。
禍々しい闇に包まれた槍が右足を掠めた。
「ほお、避けたんか。」
「!」
異常なまでのスピード。
槍が地に着くまでの間、1秒にも満たない。
避けるのは簡単。
だが問題は、後ろに隠れている少女。
安易に避けようものなら、少女にダメージがいく。
「…そっちから来ないなら、こっちから行くで。」
判断を見誤ったら死。しかし長考は許されない。
男がどこからか取り出したのは拳銃だ。
オートマか。
この距離で拳銃なら、命中率は悪い。
それが逆に怖い。
流れ玉がどう動くかまでは想像できない。
どうしたものか。
足元の少女がズボンを引っ張ってきた。
「おじさん、剣持ってるよね。」
「あぁ、あるな。」
「それを力を込めて振って。あの人めがけて。」
一体何をさせようと言うのか。
けれども今、他に良い手段は無い。
この少女に賭けてみよう。
「…わかった。」
ノートは言われるがままに剣を振るった。
地に剣が着く間際、少女は一言唱えた。
「暴走」
次に起きた事と言えば、道路が真っ二つに避けたことだ。
津波の如く吹き上がる衝撃波に辺りの物全てが吹っ飛んでいく。
いくらこの剣は重量があると言えど、こんな事は起こした事がない。
その勢いのまま、男まで吹き飛ばした。
数十キロ離れ、やっと衝撃波は消えた。
「……は?」
気付けば街並みは大惨事へと変わっていた。
「…これが…君の能力?」
「さあ?それにしてもおじさん、肩強いね。」
クスクスとその女の子は笑っている。
「……」
にわかには信じがたい。
こんな能力を持つ人間がこの世界にいるわけがない。
だがどうしてか、今、目の前にその人はいる。
「君、いつこの力に気付いたの?」
「分かんない。気付いたらできるようになってた。」
…おそらくこの子の能力は、
「エネルギー量を大幅に増加させる」能力。
だからこそ、さっきの衝撃波が笑撃波になった。
末恐ろしい少女だ。
「君、名前は?」
「…ダイラ。」
「ダイラか。覚えておこう。
さて、君の両親を探さなくてはな。
まずはこの辺りを歩いてみるとしよう。」
そうして、彼らは街へと歩き出した。
……
…
「…ほう、変な力を持った殺人犯?」
「そうです!!どこからか剣を取り出したと思ったらいきなり地がせり上がって」
「まあその話はあとで聞く。
問題はその男がどこへ行ったかだ。
これ以上被害を出す訳にはいかない。」
「じゃあつまり?」
「決まってる。
指名手配だ。
銃刀法違反、殺人の容疑で追え!」
捜査の手は、刻一刻とノートに迫っていた。




