第八十二話 杖を先に
今回は十四層、十五層の主、そして帰りまで!
長いですが、一度地上に戻る所まで一気に行きます。
帳面に「箱に化ける物がいる」とだけ書いてあった十四層と、オークの群れが待つ十五層。
ゆっくり読んでもらえたら嬉しいです!
十三層の下り口は、岩の列の一番奥にあった。
キメラの砂が引いた岩場を抜ける間、ゴブリンは巣の岩の上からこちらを見ているだけで、石の一つも飛んでこなかった。槍を拾い直す気も無いらしい。壊れた巣の前で、何匹かが砕けた岩を転がしているのが見えた。
「巣を直してるわ」
「あれが去ったのが分かったんだな」
「去ったんじゃなくて、死んだのよ。あんたが斬った」
左の肩は、歩いている間に少しずつ上がるようになった。腕の赤黒い所は引かなかったが、痛みは脈を打つ物から、触れば痛む物に変わっていた。
空が暗くなる前に、十四層へ下りる階段に着いた。階段の脇の岩陰に荷を下ろして、ミアが結び目を一つ足した。五つ目。
「外の三日目の夜ね。帳面の通りなら、明日は十四層で一日、明後日に十五層の主」
「明後日で五日か。申告の半分も使ってない」
「使わないで済むなら、それが一番いいのよ」
火は焚かなかった。見張りは交代で、俺が先に寝た。
十四層は、砂だった。
階段を降りきると、足元が岩から細かい砂に変わっていて、歩くたびに靴が沈む。空の下に砂の窪地が広がって、その縁を岩棚が囲んでいる。岩棚は段になっていて、一番低い段でも俺の背の倍はあった。
風は窪地の底を真っ直ぐ横切って、向こうの岩棚の切れ目に吸われている。
「下り口は向こうの切れ目。砂を真っ直ぐ渡れば昼のうちに着くわ」
「砂の上だと、足が遅くなる」
「ええ。囲まれたら岩棚まで走れないから、何か来たら来る前に射るわ」
ミアが結び目を足した。六つ目。空は明るくなりきっていて、砂が白く光っている。
窪地の真ん中まで来た所で、ミアが足を止めた。
岩棚の一番低い段の上に、箱が置いてあった。
八層の隠し部屋で見たのと同じ、膝の高さの石の箱だ。ただし、隠し部屋の中ではない。誰でも見える岩棚の上に、蓋を閉じたまま置いてある。
「帳面の、箱に化ける物」
「鑑定する」
窓は開いた。
ミミック Lv28
HP:900/900
スキル:擬態 Lv3/叫声 Lv2
「二十八。キメラよりは下で、熊より上だ」
「箱に見えるだけで、箱じゃないのね。帳面の組は、これを見て、それだけ書いて帰ったんだわ」
放っておけば、ただの箱だった。ミアもそう言うと思っていた。
「射るわ」
「放っておく話じゃないのか」
「放っておいたら、いつか誰かが開けるわ。それに、叫声って何をするのか知っておきたい。知らないまま十五層へ下りる方が嫌」
ミアは弓を上げて、箱の蓋の合わせ目に矢を放った。
矢は合わせ目に刺さって、止まった。
箱が、開いた。蓋ではない。箱の正面が縦に割れて、その割れ目の中に歯が並んでいた。石の箱だと思っていた物の表面が、濡れた赤い色に変わっていく。
そして、叫んだ。
咆哮とは違った。足が止まる声ではなく、耳の奥に針を刺されるような高い声で、岩棚に当たって何度も跳ね返る。
声が終わる前に、岩棚の裏から音が来た。
「来るわ! 岩棚の裏に洞がある! ゴブリンと狼が詰まってた!」
「箱で釣って、声で呼ぶのか」
「そういう仕掛けよ! 後ろの岩棚!」
砂を蹴って、箱の無い方の岩棚まで走った。砂が靴を掴んで、思ったより遅い。背中を岩に付けた時には、窪地の縁から狼が十匹、ゴブリンがその倍、砂の上に溢れ出していた。
ミアの矢が、先頭の狼を砂の上に転がした。
砂の上では、狼も遅かった。走るたびに足が沈んで、十二層の騎手の狼のようには抜けてこない。来る順に首を払った。二匹目、三匹目。ゴブリンの槍が砂に刺さって、抜く前に斬った。
「右! 五匹まとめて来てる!」
右に体を向けた。五匹のうち二匹が矢で落ちて、残りの三匹が砂を蹴って来る。先頭の胴を斬り上げて、二匹目の首を払った時に、三匹目の牙が外套の袖を噛んだ。引かれた。引かれた方へ自分から踏み込んで、噛んだままの首を刀の柄で打ち、離れた所を斬った。
HPは減らなかった。減らない代わりに、袖がもう一か所裂けた。
ゴブリンは狼が減ると、投げる物を持っていない分、近づくしかなかった。近づいたゴブリンは十一層の相手で、十一層の相手は、もう刀で間に合った。
最後の狼が砂になって、ゴブリンが三匹、窪地の縁へ逃げていった。追わなかった。
【洞窟狼を討伐しました】
【経験値 +30】
砂の上に、魔石と毛皮と、ゴブリンの槍が散らばっていた。
岩棚の上で、箱はまだ口を開けていた。動かない。擬態が解けたまま、赤い口で砂の上を見ている。
「動けないのね、あれ」
「動けたら、とっくに降りてきてる」
岩棚に上がった。箱の口が俺に向く。それだけだった。歯を上から下へ斬ると、石の音がして、刃が中まで通った。箱は口を開けたまま砂になって、岩棚の上に、親指の爪ほどの青い石が一つ残った。
「八層の赤い石と同じ大きさね」
「中身は、こいつが飲んでた物か」
「前に開けた誰かが持ってた物かもね」
ミアは青い石を袋に入れて、それから矢を拾って回った。狼に刺さった分は砂の中で、ゴブリンに刺さった分は砂の上で、全部で十一本戻ってきた。
十五層への階段は、岩棚の切れ目の奥にあった。
空が暗くなる前に着いて、階段の脇に荷を下ろした。ミアが結び目を足した。七つ目。
「明日は主。帳面の二つ、どっちで行くか決めておきましょ」
「杖が倒れるまで群れが減らない、と、長を先に落とせ」
「両方の組が戻ってきてる。どっちでも死なないって事だけど、私は杖を先にしたい」
「理由は」
「長は一匹で、杖も一匹。どっちも一匹なら、私の矢が届く方を先に落とす。長は斧を振ってるから、あんたじゃないと止められない。杖は杖を振ってるだけで、矢が届けば終わるわ」
反論は無かった。
夜の半分で、ミアに起こされた。星の下で、階段の下から上がってくる風は、どこか煙の匂いがした。
空が白んで、八つ目の結び目をミアが作った。
十五層へ下りる。
降りきった所は、谷の口だった。
両側に岩の壁が立って、その間を細い道が奥へ下りていく。壁の高さは岩棚の比ではなく、見上げても星に紛れて先が無い。道は人が三人並べば一杯で、谷の奥へ行くほど少しずつ広がっている。
煙の匂いが強くなった。谷の奥で、火を焚いている。
「主の間は、谷の奥。風がそこで止まってる。……野営してるわ。火が三つ」
「帳面の通り、二十か」
「数えるわ。長が一匹、岩の上。その後ろに、杖を持ったのが一匹。残りは……十八。全部で二十」
鑑定を向けた。遠い分、窓は小さかったが、開いた。
オークジェネラル Lv30
HP:1,100/1,100
スキル:剛力 Lv3/斧術 Lv4/統率 Lv3
オークマジシャン Lv26
HP:600/600
スキル:治癒 Lv3/護壁 Lv2
オーク Lv24
HP:700/700
スキル:斧術 Lv2/剛力 Lv1
「長が三十。杖が二十六。残りが二十四で十八匹」
「二十四が十八匹。十二層の騎手が十四だったのに、ここは下の方が上ね」
「主の層だ。熊の時と同じで、ここだけ跳ねてる」
谷の道は奥へ行くほど広がる。広がった所で囲まれたら、十八匹を背中に岩を付けて捌く事になる。
「谷の口で受けるか」
「ええ。ここなら、来られるのは三匹ずつよ。私は壁を登って上から射る」
ミアは谷の壁の崩れた所を見つけて、弓を背負ったまま登った。俺の背の三倍ほどの高さに岩の張り出しがあって、そこに膝を突く。
「ここから杖まで届くわ。でも、オークが前にいる間は長と杖が隠れてる」
「来させる」
谷の道を、奥へ向かって歩いた。
火の周りで、オークが立ち上がった。
人の形で、人より頭一つ大きい。肌は灰色で、腰に獣の皮を巻いて、手には柄の長い斧。十八匹が一斉に俺を見て、その奥の岩の上で、一回り大きいのがゆっくりと立った。
長は斧を持っていなかった。岩の横に、斧が立て掛けてある。刃だけで俺の胴ほどあった。
長が、吠えた。
咆哮ではない。足は止まらなかった。代わりに十八匹が、同じ瞬間に同じ向きへ走り出した。統率という字が、窓の中で意味を持った。
俺は背を向けて、谷の口へ走った。
追ってくる。十八匹が、谷の道の広い所から狭い所へ、俺を追って来る。道が狭まるにつれて、十八匹の列が長く伸びた。先頭が三匹、その後ろに三匹、その後ろにまた三匹。
谷の口で振り返った。
先頭の三匹が来た。斧が三本、同時に振り上がる。受けない。一番右のオークの、斧を振り上げた脇の下へ踏み込んで、刃を入れた。オークが倒れて、二匹目の斧が俺のいた場所に落ちる。落ちた斧の柄を踏んで、二匹目の首を払った。
三匹目の斧が横から来た。見えていた。しゃがんで、頭の上を斧が通る。立ち上がりざまに、腹へ刃を入れた。
三匹が倒れて、その後ろの三匹が来る。
倒れた三匹は、砂にならなかった。
倒れたまま、動いている。腹を斬った一匹が、腹を押さえて立ち上がろうとしている。傷が、閉じていく。
「レン! 杖よ! 杖が治してる!」
上から、ミアの声が降ってきた。
「射れるか!」
「オークの壁で隠れてる! 治す時だけ前に出てくる!」
次の三匹が来た。同じように捌いた。右の脇、落ちた斧の柄、頭の上。倒れた六匹のうち、最初の三匹がもう立ち上がりかけている。治った分だけ、倒した数が減っていく。
狼の主と同じだった。頭を落とすまで、減らない。
ただ、頭は二つある。
「ミア、杖が前に出る時、壁は」
「壁は長の方に張ってる! 杖は、治してる間は自分に何も張ってない!」
治している間。
「治させる」
七匹目を斬った。わざと浅く、腿を裂いた。倒れたオークが腿を押さえて呻いて、谷の奥から、杖を持った灰色の影が一歩前に出た。手が、倒れたオークの方に伸びている。
矢の音は、聞こえなかった。
杖の影が、仰け反った。矢が首に立っている。影は杖を取り落として、両手で首を掴んで、それから膝を突いた。もう一本の矢が、その頭に刺さった。
影が崩れて、砂になった。
【オークマジシャンを討伐しました】
【経験値 +400】
立ち上がりかけていたオークの傷が、閉じるのをやめた。腿を裂かれた一匹が、裂かれたまま砂になった。腹を斬られた一匹も、脇を刺された一匹も、順に砂に変わっていく。
谷の奥で、長が吠えた。
統率の声だった。残りのオークが、三匹ずつではなく、全部が同時に谷の口へ押し寄せてきた。狭い道で押し合って、先頭が後ろに押されて斧を振れない。
「来るわ、全部! 長も降りた!」
押されて転んだ先頭のオークを斬った。その後ろのオークが、仲間の体を踏み越えて斧を振り下ろす。しゃがんで、腹へ刃。三匹目の斧が、右の肩を掠めた。
HP81/99。
掠めただけで十八減った。剛力の一だった。
上から矢が降り続けている。押し合っているオークの列に、矢が一本ずつ刺さって、刺さった所から列が崩れる。列が崩れると、一匹ずつになる。一匹ずつなら、十五層のオークは、俺の刀で間に合った。
八匹。九匹。十匹。
十一匹目が倒れた時、谷の道の向こうが開けた。
残っていた七匹が、左右の壁に寄って道を空けていた。空いた道の真ん中を、長が歩いてくる。
斧を肩に担いでいる。刃だけで俺の胴ほどある斧を、片手で。
オークジェネラル。鑑定の窓を、もう一度開いた。HP1,100のまま、一つも減っていない。
「レン! 一対一よ! 七匹は動かないわ!」
「分かってる」
分かっている。長が自分で来たなら、他の七匹は手を出さない。統率の三は、そういう事だ。
長が足を止めた。谷の口から、斧の間合いの外。俺を見下ろして、口の端を上げた。笑ったのだと、少し遅れて分かった。
斧が、動いた。
担いでいた斧が、片手のまま横に振られた。間合いの外だと思っていた。思っていた間合いの外から、斧の刃が来た。剛力の三は、斧を長くする。
跳んだ。後ろへ。刃が外套の胸を掠めて、谷の壁に当たる。壁が、割れた。岩の破片が降ってきて、肩と頭を打つ。
HP64/99。
当たっていない。壁の破片だけでこれだ。
長が歩いてくる。斧を担ぎ直して、一歩、二歩。俺は下がらなかった。下がれば、斧が壁を割った時と同じ事が、また起きる。
熊の時に見た物を、思い出した。
岩の板の隙間。脚を上げた時だけ開く所。斧も同じだ。振り下ろすには、振り上げる。振り上げた時、斧は長の頭の上にある。頭の上にある間は、刃は俺に届かない。
長が、斧を振り上げた。
両手だった。両手で頭の上まで持ち上げて、刃が星の光を返す。その一瞬が、俺に残された隙間だった。
踏み込んだ。
斧の下へ。長の懐へ。斧が落ちてくるより先に、持ち上げた両腕の、脇の下。皮の鎧が無い所。そこへ刃を入れて、引いた。
長の腕から、力が抜けた。
斧は落ちてきた。俺のいた場所に。俺は、もうそこにいなかった。斧が谷の道を割って、地面に食い込む。長がそれを抜こうとして、片腕しか動かない事に気づいて、俺を見た。
笑っていなかった。
首へ、刀を入れた。
長は膝を突いて、斧の柄を握ったまま、砂になった。斧は砂にならなかった。谷の道に刃を食い込ませたまま、立っていた。
【オークジェネラルを討伐しました】
【経験値 +1,200】
壁に寄っていた七匹が、動いた。
逃げた。谷の奥へ、火の方へ、斧を捨てて走っていく。追わなかった。追う力も、残っていなかった。
谷の奥で、岩が光った。長が立っていた岩の足元に、台が現れている。
「……終わったわね」
上から、ミアが降りてきた。弓を背負って、矢筒を見て、顔をしかめる。
「残り六本。三束持ってきて、六本」
「拾えるか」
「谷の奥は、まだ七匹いるわ。拾いに行くのは、来た時にする」
長の砂の後に、拳二つ分の魔石が残っていた。キメラの物と同じ大きさだ。それと、斧。斧は持てなかった。二人がかりで引いても、地面から抜けなかった。
「置いていくしかないわね」
「帳面に書いておくか。谷の道に、抜けない斧がある」
ミアは笑って、腰の紐に九つ目の結び目を作った。
「外の五日目の昼。十二日と言って、五日で戻れるわ」
二人で台に乗った。足の下が揺れて、次の瞬間には、北の門の柵の内側に立っていた。
空があった。
穴の底の空ではなく、外の空だ。日が傾いて、雲が赤い。穴の中では一度も見なかった色だった。
門の番が、俺たちの札を確かめて、帳面を開いた。
「空欄、二名。十二日の申告で、五日目の戻り」
番は帳面の俺たちの行に、戻り、と書いた。
「早いな。申告の半分も使ってねえ」
「帳面に、多めにって書いてあった」
「それでいい」
管理局の受付は、あの若い女だった。
長の魔石と、キメラの魔石を台に置いた。女は一つ目を見て、帳面に十五層の主、と書き、二つ目を見て、手を止めた。
「……これは、十五層の主の物ではありませんね」
「十三層で出た。キメラだ」
女の筆が、帳面の上で止まったまま動かなかった。
「十三層に、ですか」
「十三層のゴブリンがいなくなって、スライムだけになってた。十二層で会った組が、下で何か歩いてると言ってた」
「……記録室の帳面に、書いていただけますか。十三層の綴じに、新しい紙を足します。局の判は、お二人が戻られたので押しません」
女は台の下から小さい革の袋を出して、台の上に置いた。中で硬い音がした。
「それと、歩き回る物を倒された組には、局から報奨が出ます。金貨二枚です」
「倒した分か」
「倒した分です。書いていただく方は、お願いですので」
記録室で、ミアが書いた。十三層。空欄の組。昼夜の数と、スライムの床と、壊れた巣と、ゴブリンがいなかった事と、キメラ。頭が三つで、尾が蛇で、矢は尾と目に通った事。倒しても台は出なかった事。
最後に、十五層の谷の道に抜けない斧が立っている事を足して、紙を綴じた。
「書けたわ。読む組がいればいいけど」
「俺たちは読んだ。次の組も読むだろ」
「読まなかったら、判を押される方よ」
ミアは帳面を棚に戻して、袋の金貨を一度だけ数えた。二枚。谷の道で折れた矢の分には、十分すぎた。
買取の台で、キメラの魔石は赤い石の時より長く奥で待たされた。青い石も一緒に出した。戻ってきた袋は、持ち上げると肩に食い込んだ。
三つ樽亭の食堂で、マルタは俺たちの顔を見て、それから首の札を見て、鍋の蓋を置いた。
「五日で戻ったかい。十五層まで行ったね」
「行った。帳面の通りだった。……十三層以外は」
「十三層で何があった」
「歩き回ってる奴が出た。二十層より下の話だと、あんたは言ったが」
マルタの杓子が、鍋の縁で止まった。
「……何が出た」
「キメラだ」
マルタは何も言わずに、杓子を鍋に戻した。それから、俺の肩と腕の布と、半分燃えた外套の裾を順に見た。
「二十層より下の話だよ。私が潜ってた頃はね。……生きて帰ったなら、それでいい。粥を食いな」
粥は、穴に入る前の朝より、少しだけ多かった。
部屋の窓から、像の頭が見えた。
ミアは腰の紐を外して、九つの結び目を一つずつ解いていった。解き終わると紐を丸めて、荷の一番上に置いた。
「次に潜る時、また結ぶわ」
俺は窓を開いた。Lv15。所持SP1。
穴の中では使わなかった。熊の時も、キメラの時も、使えば違ったかもしれない。それでも、一つ残っていると分かっているだけで、最後の一手が手の中にあった。
「使わなかったのね、それ」
「残しておいた。本当に危ない時に、一つあれば振れる」
「それも良いかもしれないわね」
ミアは寝台に横になって、天井を見た。
「二十層の主は、B。次はそこまで行くわよ。矢は五束持つ」
「食べ物は」
「十日分。申告は二十日」
俺は窓を閉じた。外の空が暗くなって、六時間では明けない夜が来る。
それだけの事が、少しだけ懐かしかった。
読んでくれてありがとうございます!
最近、読んでくださる方が増えてきて、ブックマークや評価を見るたびに驚いています。本当にありがとうございます。励みになっています。
十四層のミミック、十五層のオークの群れ、そして五日ぶりの地上。
ミアが「杖を先に」を選んで、矢が首に通った所で群れが崩れました。
十三層のキメラの事は、二人が自分で帳面に書いてきました。管理局からは報奨の金貨二枚。
次は二十層の主、Bランクを目指します!




