幕間 この世界の仕組み(第二章終了時点)
前の幕間で数字を並べたので、今度はその数字がどう動いているかを説明します。全部、第二章までに本文に出た範囲です。
◆ 窓
この世界の人間は誰でも、口に出すか頭で念じるかで自分の「窓」を開けます。出るのは名前、レベル、HPとMP、筋力・体力・敏捷・魔力、所持SP、ギフト、スキル。魔物を倒せば【〇〇を討伐しました】【経験値 +〇〇】が出て、レベルが上がれば【レベルアップ】が出ます。
ただし窓は、自分のことしか言いません。相手のレベルは出ないし、倒した魔物のレベルも出ない。次のレベルまであと経験値がいくつ要るのかも出ない。自分の「今」だけです。他人の窓を見る方法は、後で書く「鑑定」しかありません。
教会は、この窓を「神が用意した階段」だと教えています。
◆ レベルとSP
魔物を倒すと経験値が入り、溜まるとレベルが上がります。レベルが一つ上がるとSPが入ります。普通の人間は一つ。ギフトによってはそれ以上のこともあります。
スキルは、Lv3くらいまでは使っていればたまに勝手に上がります。その先はSPを払わないと上がりません。
払う額は、段が上がるごとに倍になります。Lv1から2に1、2から3に2、3から4に4、4から5に8、5から6に16、6から7に32、7から8に64。この倍々は教会が子どもに教える常識で、実際に確かめられているのはLv7までです。Lv10を「極」と呼び、階段は十段で届くのは神だけ、というのが教会の教えです。届いた人間は記録にいません。
レンだけは、この額がどの段でも1です。本人は第十五話までそれが普通だと思っていました。
◆ ギフト
生まれつき一つ持っているもので、窓の一行に出ます。火・水・風・土・雷の適性はこの枠で、適性がないと魔法は覚えられません。ギルドの水晶にはレベルとギフトだけが映るので、登録すればギフトは教会に知られます。言わない人も多いし、隠しギフトの噂もあります。
レンの窓には、この一行に横線が一本引いてあるだけです。教会はこれを「神が階段を用意し忘れた者」と呼び、祝福という名目で塔に呼びます。
◆ レベルとスキル、どっちがどれだけ効くのか
バルガスやヴェルナーが言う「器」はレベルで上がる筋力や敏捷のこと、「技」は剣術や斧術の段のことです。
第十五話で、Lv6・剣術Lv5のレンがLv52・剣術Lv5の監察官ヴェルナーに勝ちました。「さすがに無理があるのでは」と思った方もいると思うので、この世界の強さの決まり方を説明します。
この世界では、レベルとスキルのレベルは別々に効きます。
まずレベル。上がると筋力・敏捷・HPが伸びます。目安はレベル一つにつき筋力と敏捷が一ずつ。
Lv6のレンは筋力14、敏捷16。Lv52のヴェルナーは筋力60、敏捷62。だいたい四倍です。
この四倍はそのまま出ます。四倍の筋力で斬られれば受けても腕ごと持っていかれるし、四倍の速さで来られれば見えていても避けられません。
次にスキルのレベル。剣術Lv5とか弓術Lv5とかのことです。
こっちを上げても、筋力や敏捷は一切変わりません。変わるのは、体がどれだけ剣を知っているかです。
剣術が一段上がると、まず「読み」が変わります。相手が剣を振り始めた瞬間に、その剣がどこに来るか体が知っている。見てから考えるのではなく、見た時点でもう答えが出ている。だから反応に使える時間が倍になり、相手の剣は半分の速さで来るように見えます。ユーリの剣術Lv8が「速いのではなく、レンが動く場所に先に着いている」と書かれていたのは、これです。
同時に「無駄」が消えます。剣術の低い剣は、振り始めてから届くまでに寄り道をしています。肩が上がる、腰が遅れる、剣先が回る。一段上がるとその寄り道が半分になり、同じ筋力・同じ敏捷のまま、剣が半分の時間で届く。つまり自分の剣は倍の速さで入ります。
相手が半分に見えて、自分は倍で入る。合わせて四倍。
剣術の一段は、レベル差からくる四倍の差を一つ消す、ということです。
これを第十五話に当てはめます。
最初、二人は同じ剣術Lv5でした。スキルが同じなら、残るのはレベル差だけ。四倍差がそのまま来て、一撃でHP64が38、二撃目で14。ヴェルナーの「同じ剣術Lv5でも、器が違う」というのは、レベルが違うという意味です。
そこでレンは、残っていたSP1で剣術をLv6に上げました。
レンの剣は、敏捷16の倍で32。
ヴェルナーの剣は、敏捷62の半分で31。
32対31。一だけレンが速い。
「振り下ろされる剣が遅く見えた」のは、この一の差です。
ヴェルナーが剣術Lv5から6に上げるのに必要なSPは16。レンは1でした。
この主人公が強いのは、レベルが高いからでも才能があるからでもなく、この「1」だけです。今もレベルは9のまま。Lv100を超える相手には、剣術の段差で埋めるしかありません。
◆ 鑑定
他人の窓を見る唯一の方法で、上限はLv3です。
Lv1:相手のステータスが見える(レベル、次のレベルまでの残り経験値、HP、MP、筋力、体力、敏捷、魔力)。自分にも使える。
Lv2:所持SPとスキル。
Lv3(最大):ギフト。
自分の窓には残り経験値が出ません。なので鑑定を持たない冒険者は、あと何匹倒せばレベルが上がるのか自分では分からないままです。
鑑定を持っているのは教会の人間だけで、教会の外で覚えた人間は記録にいません。だからギルドは水晶を使います。
◆ 教会とギルドと遺構
階梯教会はこの王国の国教で、どの街にも塔があります。司祭が塔を預かり、王都から監察官が回り、聖騎士団がその上にいて、頂点が七聖。七聖は七つの席のうち六つが埋まっていて、第一の席だけは「神が自分で選ぶ席」として三百年空いたままです。名前と顔と年は知られていますが、スキルとレベルは誰も知りません。
教会からギルドに出る依頼を「神命依頼」といい、指名されると断れません。断れば背教者の烙印です。
冒険者ギルドはFからAまでのランクがあり、首に下げるプレートで分かります。ギルドの水晶はレベルとギフトしか映さず、その記録は毎日教会に送られています。
遺構は神代の遺跡で、地下に何層もあり、下ほど魔物が強く魔石が大きい。教会が管理していて、Bランク以上の許可持ちしか入れません。七聖は二十層より下に行くと噂されています。第二十五話でレンたちが落ちた遺構は、門の紋章が削られていた、地図にない方の遺構です。




