↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
10/99

第九話 薬草採取

朝の鐘で目が覚めた。

体を起こすと、どこも痛くなかった。

「ステータス」

HP:52/52。

一晩で全快。ゲームの宿屋そのままだ。

(これ、前の世界にも欲しかったな)

倉庫の朝は腰から始まった。今は、どこから始めればいいのか分からないくらい軽い。

一階の食堂で、飯付きの朝飯を食った。黒パンと豆のスープと、干した肉。うまい。昨日より確実にうまい。

食い終わって外に出ると、ミアがもうギルドの前に立っていた。

「遅い」

「鐘は聞いた」

「鐘が鳴ってから起きるのが遅いって言ってんの」

反論できなかった。


薬草の群生地は、街を出て森の縁を北に半刻ほど歩いたところにあった。

昨日の狼の場所とは反対側。ミアが言うには、こっちは魔物が少ない。

「これよ。葉の裏が白いやつ。根は残して、上だけ摘む」

ミアが一本引き抜いて見せた。

「十束で銅貨十枚。一束は、だいたいこの手のひら一杯分」

「分かった」

しゃがんで、葉の裏を確かめて、摘んだ。

次。裏を見る。白い。摘む。

次。違う。飛ばす。次。摘む。

気づいたら、手が勝手に動いていた。

棚から商品を探して、確認して、カゴに入れる。それを九時間やり続けた三年間が、指先に残っている。

「……ちょっと待って」

ミアが、自分の手を止めて俺を見た。

「あんた、それ何束目?」

「四つ目」

「私、まだ二つよ」

「そうなの?」

「そうなのって……」

ミアは呆れた顔で、それからちょっと悔しそうに、自分の分を摘み直した。

「あんた、採取向いてる」

「前の仕事が似たようなやつだった」

「どんな仕事?」

「棚から物を探して、カゴに入れる仕事」

「……それは冒険者じゃないわね」

「冒険者じゃない」

十束は、半刻もかからずに終わった。


草の上に座って、水を飲んだ。

ミアが、水袋を置いて、こっちを向いた。

「じゃ、約束」

「約束?」

「ステータス。見せるって言ったでしょ」

そうだった。

「見せ方、分からないんだけど」

「窓を開いて、相手に見せたいと思えばいい。それだけ」

言われた通りにした。

半透明の窓が出て、ミアの方に向くように念じた。窓が、ふわりと向きを変えた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【ステータス】

名前:レン

Lv:3

HP:52/52 MP:22/22

筋力:11 体力:12 敏捷:13 魔力:10

所持SP:0

ギフト:―

スキル:剣術 Lv3 身体強化 Lv1

━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ミアは、しばらく黙って窓を見ていた。

長い。

「……本当に、空欄なんだ」

「だから言った」

「言ったね。ごめんなさい」

謝りながら、ミアの目はまだ窓から離れなかった。

ギフトの欄と、スキルの欄を、何度も往復している。

「ねえ。あんた、剣術いつLv3にしたの?」

「昨日。狼のあと」

「Lv2にしたのは?」

「ゴブリンのあと」

「……」

ミアは、指を折って何かを数え始めた。

途中で止めて、また数えて、また止めた。

「合わない」

「何が?」

「……いや。私の数え方が間違ってるのかも」

ミアは首を振って、窓から目を離した。

「たまにいるって聞いたことがある。水晶に映らないギフト。教会が『隠しギフト』って呼んでるやつ」

「隠しギフト」

「本人にも見えないから、本人も知らない。そういうの」

(いや、女神ははっきりハズレって言ってたけどな)

そう思ったが、言わなかった。女神の話をしたら、話がもっとややこしくなる。

「そういうことにしとく。だから、ギルドではその話しないで。ドルクみたいなのに絡まれる」

「分かった」

「私が弓術Lv3にしたのは、Lv8のときよ。一応、言っとく」

(Lv8で3か。ペース、遅くないか?)

思ったが、それも言わなかった。

人それぞれだ。ステータスに振る人だっている。剣聖だってそうだった。

「行こ。ゴブリン」

ミアが立ち上がった。

森の縁に沿って南に戻る。昨日、俺が転がった丘の方角だ。

丘の裏に回ったところで、ミアが手を上げた。

止まれ、の合図。

草の向こうに、緑色の背中が見えた。

一つ。二つ。三つ。

四つ。五つ。

「……五匹、いた」

ミアが小声で言った。

「依頼、ちょうどね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。