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第六話 いってらっしゃい

朝。


玄関で靴を履く。


鍵を持つ。


財布。


スマートフォン。


「……よし。」


ドアを開ける。


隣の部屋の扉も、ちょうど開いた。


「あ、おはようございます。」


同じアパートに住む女性だった。


年上だけど、名前は知らない。


「おはよう。」


「今日は早いですね。」


「少しだけ。」


女性はゴミ袋を持っていた。


私は階段を降りる。


「いってらっしゃい。」


後ろから声がした。


少しだけ振り返る。


「いってきます。」


――――――――――――――――――――


駅まで歩く。


いつものコンビニ。


自動ドアが開く。


「おはようございます。」


店員さんが笑う。


「おはようございます。」


温かい緑茶を一本。


レジへ持っていく。


「今日は涼しいですね。」


「そうですね。」


レシートを受け取る。


財布へ入れる。


店を出る。


――――――――――――――――――――


昼。


事務所。


「お疲れさまです!」


マネージャーが走ってくる。


「今日、差し入れいただいたんですよ!」


机の上には箱が一つ。


クッキーだった。


「食べます?」


「いただきます。」


一枚。


さく。


「美味しい。」


「ですよね!」


マネージャーは嬉しそうだった。


それを見て、私も少し笑った。


――――――――――――――――――――


夜。


配信。


「こんばんは。」


『こんばんは!』

『今日は何してた?』


「クッキー食べた。」


『かわいいw』

『配信者の日常すぎる』

『何味?』


「バター。」


『いいなー』

『お腹すいた』


コメント欄がゆっくり流れていく。


『今日仕事で疲れた』


私は少しだけ画面を見る。


「お疲れさま。」


『ありがとう』

『救われる』

『また明日頑張る』


「うん。」


それ以上は言わなかった。


――――――――――――――――――――


配信が終わる。


パソコンを閉じる。


静かになった部屋で、水を飲む。


窓の外を見る。


廊下の明かりが少しだけ差し込んでいた。


隣の部屋から、小さく食器の音が聞こえる。


朝、挨拶した人だろう。


「今日は何を食べるんだろう。」


少しだけ考えて、窓を閉めた。


歯を磨く。


布団へ入る。


明日の目覚ましを合わせる。


七時。


「おやすみ。」


今日も一日が終わった。

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