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第三話 雨の日の予定

朝起きる。


カーテンを開ける。


曇り。


「……降るかな。」


スマホの天気予報は晴れだった。


でも、傘立てから一本だけ透明な傘を持つ。


折りたたみじゃない方。


なんとなく。


――――――――――――――――――――


駅まで歩く。


空はまだ明るい。


傘はいらなかった。


少しだけ荷物になったかな、と笑う。


――――――――――――――――――――


事務所へ着く。


「おはようございます!」


「おはよう。」


「今日は暑いですねぇ。」


「そうだね。」


「アイス食べたいです。」


「分かる。」


それだけで会話が終わる。


静かだけど、嫌な静けさじゃない。


こういう朝は好きだった。


――――――――――――――――――――


昼。


収録を終えて外へ出る。


「ご飯どうしよう。」


少し歩いて。


定食屋さんへ入る。


「いらっしゃいませ。」


窓際の席へ座る。


メニューを見る。


生姜焼き。


焼き魚。


唐揚げ。


「……焼き魚で。」


注文を済ませて、お茶を飲む。


店内には昼のニュースが流れていた。


誰も見ていないテレビ。


誰も聞いていないアナウンサー。


そんな空気が、少し心地よかった。


――――――――――――――――――――


店を出る。


ぽつ。


頬に冷たいものが当たる。


「あ。」


雨だ。


少しずつ。


少しずつ。


さっきまで晴れていた道が濡れていく。


透明な傘を開く。


「持ってきてよかった。」


それだけ。


――――――――――――――――――――


夕方。


配信まで少し時間がある。


コンビニへ寄る。


飲み物だけ買うつもりだった。


雑誌コーナーの前を通る。


表紙に猫。


立ち止まる。


「かわいい。」


少し迷う。


少しだけ。


結局、買わなかった。


今日は写真だけで満足だった。


――――――――――――――――――――


夜。


「こんばんは。」


『こんばんはー!』

『待ってた!』

『今日もきた!』


「ありがとう。」


『今日雨すごかった』


「あ、降ったね。」


『傘忘れてびしょびしょ』

『会社出た瞬間だった』

『最悪だった』


「風邪ひかないようにね。」


『優しい』

『ありがとう』


それだけでコメント欄は次の話題へ流れていく。


ゲーム。


晩ご飯。


新作のお菓子。


猫。


猫。


また猫。


今日は猫の日らしかった。


――――――――――――――――――――


配信が終わる。


「お疲れさまでした。」


マイクを切る。


部屋が静かになる。


窓の外では、まだ少しだけ雨が降っていた。


私はベランダへ出る。


街灯に照らされた雨を眺める。


嫌いじゃない。


雨の日は、外が静かだから。


――――――――――――――――――――


部屋へ戻る。


机の上には、朝持っていった透明な傘。


壁に掛けながら、小さく笑う。


「今日は役に立ったね。」


それだけ言って、電気を消した。

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