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第十八話 待っている時間

朝。


目を覚ます。


七時三十九分。


カーテンを開ける。


花を見る。


昨日より少しだけ傾いている。


「おはよう。」


水を替える。


朝食を作る。


トーストを焼く。


紅茶を淹れる。


食べる。


片付ける。


家を出る。


――――――――――――――――――――


いつもの道を歩く。


パン屋の前を通る。


店の前に、いつもより長い列ができていた。


入口の近くまで続いている。


少し見る。


今日は寄らない。


そのまま通り過ぎる。


――――――――――――――――――――


駅。


電車に乗る。


今日は座れた。


窓際の席。


外を見る。


駅に着くまで、ぼんやり景色を眺める。


――――――――――――――――――――


事務所。


「おはようございます!」


「おはよう。」


「昨日の曲、どうでした?」


「なんで知ってるの。」


「配信で言ってたじゃないですか!」


「ああ。」


「どうでした?」


「良かった。」


「でしょう?」


「うん。」


マネージャーが満足そうに笑う。


今日の予定を確認する。


午前中に打ち合わせ。


午後に収録。


夜は配信。


打ち合わせをする。


いくつか決める。


午後になる。


収録をする。


終わる。


「お疲れさまでした!」


「お疲れさま。」


事務所を出る。


――――――――――――――――――――


帰り道。


駅を出る。


喫茶店の前を通る。


今日は窓際の席が埋まっている。


店の中を見る。


一人、窓際の席で本を読んでいる。


少しだけ立ち止まる。


それから歩く。


公園には寄らない。


家へ帰る。


――――――――――――――――――――


夜。


家に帰る。


靴を脱ぐ。


鞄を置く。


夕食を食べる。


食器を片付ける。


花を見る。


朝よりも、少しだけ茎が下がっている。


花びらの端も、昨日より薄く見えた。


「まだ大丈夫。」


水を替える。


窓を少し開ける。


夜の空気が入ってくる。


時計を見る。


配信の時間が近い。


椅子に座る。


マイクを確認する。


画面をつける。


――――――――――――――――――――


「こんばんは。」


『こんばんはー』

『待ってた』

『こんばんは!』

『今日もかわいい』


コメントが流れる。


「こんばんは。」


『今日は何してた?』


「事務所。」


『収録?』


「うん。」


『何の?』


「秘密。」


『また秘密w』


「そのうち。」


『パン食べた?』


「食べてない。」


『最近パン屋行ってなくない?』


「そうだね。」


『明日は?』


少し考える。


「分からない。」


『全然決めてないw』


「うん。」


――――――――――――――――――――


配信が終わる。


パソコンを閉じる。


部屋が静かになる。


冷蔵庫の音がする。


時計の音がする。


スマートフォンを見る。


昨日教えてもらった曲が表示されている。


再生する。


今日は一度だけ。


音が終わる。


スマートフォンを机に置く。


窓の外を見る。


暗い空に、いくつか明かりが見える。


明日の予定を確認する。


午前に打ち合わせ。


午後にレッスン。


夜に配信。


その下に、何も書かれていない時間が少しある。


画面を閉じる。


「……明日はパン屋、空いてるかな。」


そう呟いてから、布団に入る。


明日の朝になれば分かる。


そう思いながら、目を閉じた。

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