第十七話 知らない音
朝。
目を覚ます。
七時四十一分。
少し寝坊した。
カーテンを開ける。
花を見る。
昨日より、ほんの少しだけ茎が傾いている。
「おはよう。」
水を替える。
朝食を作る。
トーストを焼く。
紅茶を淹れる。
時計を見る。
いつもより三分遅い。
急いで食べる。
片付ける。
家を出る。
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いつもの道。
パン屋の前を通る。
昨日出ていた黒板は、もう片付けられていた。
店の前を通り過ぎる。
駅へ向かう。
――――――――――――――――――――
駅。
電車に乗る。
今日は座れない。
ドアの近くに立つ。
電車が動き出す。
隣に立っている人のスマートフォンから、小さな音が聞こえる。
音楽らしい。
何の曲かは分からない。
少しだけ聞く。
駅に着く。
降りる。
――――――――――――――――――――
事務所。
「おはようございます!」
「おはよう。」
「今日はちょっと早いですね!」
「そう?」
「いつもより二分くらい早いです!」
「よく見てるね。」
「毎日見てますから!」
「そうなんだ。」
マネージャーが笑う。
今日の予定を確認する。
午後に収録が一つ。
夜に配信。
そのほかはいつも通り。
午前中は資料を確認する。
昼食を食べる。
午後になる。
収録をする。
終わる。
「お疲れさまでした!」
「お疲れさま。」
事務所を出る。
――――――――――――――――――――
帰り道。
駅を出る。
今日は公園には寄らない。
少し歩く。
喫茶店の前を通る。
窓際の席が空いている。
少し見る。
そのまま通り過ぎる。
家へ帰る。
――――――――――――――――――――
夜。
夕食を食べる。
花を見る。
少し傾いている。
「大丈夫。」
水を替える。
配信の準備をする。
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「こんばんは。」
『こんばんはー』
『待ってた』
『今日もかわいい』
『こんばんは!』
コメントが流れる。
「こんばんは。」
『今日は何してた?』
「仕事。」
『いつも通り』
「うん。」
『今日なんか眠そう?』
「少しだけ。」
『寝坊した?』
「三分くらい。」
『微妙にリアルw』
「急いだ。」
『えらい』
『朝ごはん食べた?』
「食べた。」
『何食べた?』
「パン。」
『パン屋?』
「違う。」
『自分で焼いた?』
「うん。」
『ちゃんと生活してる』
「してるよ。」
少し笑う。
コメントが流れていく。
その中に、さっき電車で聞いた音楽についてのコメントがあった。
『最近この曲ずっと聴いてる』
私はそのコメントを見る。
「これ、知らない。」
『珍しい』
『知らない曲あるんだ』
「あるよ。」
『じゃあおすすめしとく』
『私も好き』
『この曲いいよ』
いくつかコメントが続く。
「あとで聞いてみる。」
『珍しく興味あるじゃん』
「そうかも。」
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配信が終わる。
パソコンを閉じる。
部屋が静かになる。
冷蔵庫の音がする。
時計の音がする。
私はスマートフォンを見る。
配信中に教えてもらった曲の名前を検索する。
再生する。
知らない音が部屋に流れる。
しばらく聞く。
一度止める。
もう一度再生する。
「……いいかも。」
音量を少しだけ上げる。
窓の外を見る。
夜になっていた。
もう一度、最初から再生する。




