↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/19

第十六話 音のない時間

朝。


目を覚ます。


七時三十八分。


カーテンを開ける。


花を見る。


今日は元気そうだった。


「おはよう。」


水を替える。


朝食を作る。


トーストを焼く。


卵を焼く。


紅茶を淹れる。


食べる。


片付ける。


家を出る。


――――――――――――――――――――


駅へ向かう。


いつもの道。


パン屋の前を通る。


今日は店の外に小さな黒板が出ていた。


手書きの文字で、新しいパンの名前が書いてある。


少し見る。


それから歩く。


――――――――――――――――――――


駅。


電車に乗る。


今日は座れた。


窓の外を見る。


電車が走る。


流れていく景色を眺めているうちに、駅に着く。


――――――――――――――――――――


事務所。


「おはようございます!」


「おはよう。」


マネージャーが資料を机に置く。


「今日の収録、予定通りで大丈夫です!」


「そうだね。」


「配信の方は、昨日送った内容でお願いします!」


「分かった。」


資料を見る。


今日の配信予定。


それから、いくつかの確認事項。


一つずつ確認する。


「あ、そういえばお昼どうします?」


「まだ決めてない。」


「じゃあ私、コンビニ行くんで何か買ってきましょうか?」


「アイス。」


「お昼ですよ?」


「アイス。」


「……分かりました!」


午前中に収録をする。


昼食を食べる。


午後は別の打ち合わせ。


予定していたことが終わる。


夕方になる。


帰る。


――――――――――――――――――――


夜。


夕食を食べる。


花を見る。


水を替える。


配信の準備をする。


――――――――――――――――――――


「こんばんは。」


『こんばんはー』

『待ってた』

『こんばんは!』

『今日もかわいい』


コメントが流れていく。


「こんばんは。」


『今日は何してた?』


「仕事。」


『いつも通りだ』


「うん。」


『収録あった?』


「あった。」


『何の収録?』


「秘密。」


『気になる』

『また秘密w』


「そのうち。」


『帰りは?』


「公園に行った。」


『珍しい』


「そう?」


『何してたの?』


「座ってた。」


『それだけ?』


「うん。」


『暇すぎるw』

『それはもう散歩では?』


「散歩はしてない。」


『じゃあ何しに行ったのw』


少し考える。


「静かだったから。」


『なるほど』

『たまには何もしないのもいいよね』


「うん。」


『何か考えてた?』


少し考える。


「何も。」


『それはそれでいいな』


「うん。」


『今日なんか機嫌よくない?』


「そう?」


『なんとなく』


私は少し笑う。


「そうかも。」


コメントがまた流れていく。


――――――――――――――――――――


配信が終わる。


パソコンを閉じる。


部屋が静かになる。


冷蔵庫の音がする。


時計の音がする。


外を車が通る。


私は椅子に座ったまま、それを聞いている。


さっきの公園を思い出す。


何もしていなかった。


でも、悪くなかった。


窓の外を見る。


夜だった。


「明日も行こうかな。」


少しだけ考える。


「……明日じゃなくてもいいか。」


立ち上がる。


電気を消す。


花だけが、暗い部屋の中に残った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。