第十六話 音のない時間
朝。
目を覚ます。
七時三十八分。
カーテンを開ける。
花を見る。
今日は元気そうだった。
「おはよう。」
水を替える。
朝食を作る。
トーストを焼く。
卵を焼く。
紅茶を淹れる。
食べる。
片付ける。
家を出る。
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駅へ向かう。
いつもの道。
パン屋の前を通る。
今日は店の外に小さな黒板が出ていた。
手書きの文字で、新しいパンの名前が書いてある。
少し見る。
それから歩く。
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駅。
電車に乗る。
今日は座れた。
窓の外を見る。
電車が走る。
流れていく景色を眺めているうちに、駅に着く。
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事務所。
「おはようございます!」
「おはよう。」
マネージャーが資料を机に置く。
「今日の収録、予定通りで大丈夫です!」
「そうだね。」
「配信の方は、昨日送った内容でお願いします!」
「分かった。」
資料を見る。
今日の配信予定。
それから、いくつかの確認事項。
一つずつ確認する。
「あ、そういえばお昼どうします?」
「まだ決めてない。」
「じゃあ私、コンビニ行くんで何か買ってきましょうか?」
「アイス。」
「お昼ですよ?」
「アイス。」
「……分かりました!」
午前中に収録をする。
昼食を食べる。
午後は別の打ち合わせ。
予定していたことが終わる。
夕方になる。
帰る。
――――――――――――――――――――
夜。
夕食を食べる。
花を見る。
水を替える。
配信の準備をする。
――――――――――――――――――――
「こんばんは。」
『こんばんはー』
『待ってた』
『こんばんは!』
『今日もかわいい』
コメントが流れていく。
「こんばんは。」
『今日は何してた?』
「仕事。」
『いつも通りだ』
「うん。」
『収録あった?』
「あった。」
『何の収録?』
「秘密。」
『気になる』
『また秘密w』
「そのうち。」
『帰りは?』
「公園に行った。」
『珍しい』
「そう?」
『何してたの?』
「座ってた。」
『それだけ?』
「うん。」
『暇すぎるw』
『それはもう散歩では?』
「散歩はしてない。」
『じゃあ何しに行ったのw』
少し考える。
「静かだったから。」
『なるほど』
『たまには何もしないのもいいよね』
「うん。」
『何か考えてた?』
少し考える。
「何も。」
『それはそれでいいな』
「うん。」
『今日なんか機嫌よくない?』
「そう?」
『なんとなく』
私は少し笑う。
「そうかも。」
コメントがまた流れていく。
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配信が終わる。
パソコンを閉じる。
部屋が静かになる。
冷蔵庫の音がする。
時計の音がする。
外を車が通る。
私は椅子に座ったまま、それを聞いている。
さっきの公園を思い出す。
何もしていなかった。
でも、悪くなかった。
窓の外を見る。
夜だった。
「明日も行こうかな。」
少しだけ考える。
「……明日じゃなくてもいいか。」
立ち上がる。
電気を消す。
花だけが、暗い部屋の中に残った。




