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第十一話 晴れた日の過ごし方

朝。


カーテンの隙間から光が入っていた。


目を開ける。


時計を見る。


八時十二分。


少し遅い。


「……まあ、いいか。」


今日は予定がなかった。


もう一度、布団へ入る。


――――――――――――――――――――


九時。


起きる。


顔を洗う。


冷蔵庫を開ける。


昨日買ったトマトがある。


卵もある。


パンもある。


しばらく眺める。


「パン。」


取り出す。


トースターへ入れる。


焼けるまで待つ。


その間に紅茶を淹れる。


――――――――――――――――――――


ぱちん。


トースターが鳴る。


パンを取り出す。


少し焦げていた。


「……。」


ナイフで焦げたところを薄く削る。


食べる。


普通に美味しい。


紅茶を飲む。


それから、もう一枚焼く。


今度は少し早めに取り出した。


「こっち。」


二枚目の方が好みだった。


――――――――――――――――――――


昼。


外へ出る。


天気が良い。


雲が少ない。


目的地はない。


駅とは反対方向へ歩く。


理由は特にない。


歩いていると、小さな公園があった。


ベンチがいくつか並んでいる。


一つ空いていた。


座る。


風が吹く。


木の葉が揺れる。


近くで子どもの声がする。


姿は見えない。


しばらく座っている。


何もしない。


――――――――――――――――――――


スマートフォンを見る。


通知がいくつか来ている。


仕事の連絡。


配信の予定。


返信が必要なものはなかった。


画面を閉じる。


空を見る。


「いい天気。」


独り言だった。


――――――――――――――――――――


しばらくして、犬が歩いてきた。


飼い主の後ろを、とことこ歩いている。


私の前を通り過ぎる。


犬が一度だけこちらを見る。


私も見る。


そのまま通り過ぎていった。


「こんにちは。」


小さく言う。


犬には聞こえていないかもしれない。


――――――――――――――――――――


公園を出る。


帰り道にコンビニへ寄る。


アイスを買う。


今日は少し暑い。


店を出てすぐ、袋を開ける。


一口。


冷たい。


二口。


美味しい。


三口目で少し溶けた。


「早い。」


誰に言うでもなく呟く。


歩きながら食べる。


――――――――――――――――――――


午後。


家へ帰る。


ゲームをする。


一時間。


二時間。


途中で負ける。


「今のは無理。」


もう一回。


今度は勝つ。


「よし。」


それだけで嬉しかった。


――――――――――――――――――――


夕方。


配信の準備をする。


マイクを置く。


少しだけ位置を直す。


椅子に座る。


時計を見る。


予定時刻の三分前。


まだ少し時間がある。


窓の外を見る。


空が赤くなっていた。


「綺麗。」


スマートフォンを取り出す。


写真を撮る。


一枚。


確認する。


少し暗い。


もう一枚。


今度はちょうどよかった。


保存する。


――――――――――――――――――――


配信。


「こんばんは。」


『こんばんはー』

『今日早い』


「そう?」


『いつも通りだよw』


「あ。」


少し笑う。


「そうだった。」


『今日は何してた?』


「公園に行った。」


『珍しい』


「アイスも食べた。」


『そっちの方が気になる』

「美味しかった。」

『何味?』


「バニラ。」


『王道』


「王道だった。」


コメントが流れる。


私はそれを眺める。


今日の話をする。


公園のこと。


犬のこと。


アイスのこと。


ゲームで負けたこと。


勝ったこと。


全部話す。


特別なことは何もない。


でも、話しているうちに少し楽しくなる。


――――――――――――――――――――


配信が終わる。


「お疲れさまでした。」


画面を閉じる。


部屋が静かになる。


冷蔵庫から水を出す。


飲む。


窓を開ける。


昼間より涼しい風が入ってきた。


私はベランダへ出る。


空を見る。


もう暗い。


星は少ししか見えない。


今日撮った写真を開く。


夕方の空。


同じ空なのに、もう違う。


私は少しだけ眺める。


それから写真を閉じる。


「今日は良かったな。」


そう言って、部屋へ戻った。


――――――――――――――――――――


特別なことは、何もなかった。


朝は少し寝坊した。


パンを二枚食べた。


公園へ行った。


犬を見た。


アイスを食べた。


ゲームをして、負けて、勝った。


配信をした。


夕方の空を写真に撮った。


それだけ。


布団へ入る。


目を閉じる。


明日は予定がある。


私はそれを知っている。


でも、今日は今日だった。


「おやすみ。」


部屋の明かりを消した。

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