第十話 いつもの音
朝。
目が覚める。
時計を見る。
六時三十分。
少しだけ布団の中で伸びをする。
外から、小さな音が聞こえた。
かちゃん。
新聞受けだった。
私は起き上がる。
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玄関を開ける。
新聞を取る。
薄い紙が少し冷たい。
そのまま部屋へ戻る。
テーブルへ置く。
すぐには開かない。
お湯を沸かす。
マグカップを用意する。
紅茶を淹れる。
湯気が立つ。
一口。
少し熱い。
それから新聞を開いた。
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文字を目で追う。
新しいお店。
天気予報。
地域のお祭り。
一枚めくる。
広告が挟まっていた。
近所のスーパー。
パン屋。
家電量販店。
私は広告を戻す。
新聞をたたむ。
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昼前。
パン屋へ寄る。
扉を開ける。
「おはよう。」
「こんにちは。」
今日はクロワッサンが焼き上がったばかりだった。
「いい匂い。」
「今日はタイミングが良かったねぇ。」
私は笑う。
「そうですね。」
トレーへ載せる。
レジへ向かう。
袋を受け取る。
「またね。」
「また来ます。」
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店を出る。
紙袋から少しだけバターの香りがした。
歩く。
信号を渡る。
公園の横を通る。
ベンチに誰か座っていた。
帽子を深くかぶって、本を読んでいる。
私はそのまま歩いた。
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夜。
配信。
「こんばんは。」
『こんばんはー』
『今日は何した?』
「新聞読んだ。」
『珍しい』
『新聞読むんだ』
「読む日もある。」
『何か気になる記事あった?』
私は少し考える。
「お祭り。」
『行くの?』
「たぶん。」
『たぶん?』
「まだ今日じゃないから。」
『そっかw』
『確かに』
『未来の話だ』
私は少しだけ笑った。
「うん。」
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配信が終わる。
部屋は静かだった。
流し台のコップを洗う。
窓を開ける。
昼より少し涼しい風が入ってくる。
どこか遠くで、電車の音がした。
ごとん。
ごとん。
しばらく聞いている。
見えない。
でも聞こえる。
私は目を閉じる。
音だけが夜を通り過ぎていった。
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朝の新聞受け。
昼のパン屋。
夜の電車。
今日は、いろいろな音を聞いた日だった。
私は電気を消す。
静かになる。
その静けさも、今日だけの音だった。
「おやすみ。」




