第2話 疑惑の判定
コロシアム。大昔には実際に殺し合いがショーとして行われた場所であるが、現在はオペラが開かれる場所で庶民には縁が薄い。
観客席は2千人程度が座れる。しかし見物は先着順だったのでその十倍は居ようかという群衆がコロシアムの外で場外放送に耳を傾けた。
ルナーダとドタンもその中に居る。
『第二種目からは参加人数がぐっと減って10名になります。』
「おいおい、絞り過ぎだろう?」
『中央の壇上に準備された区切られたスペースをいち早く、より綺麗に掃除できるかどうかというのが採点のポイントになる競技ですね。』
「まあ、落ちたな。」
「ああ、サエが荷物を綺麗に纏めている所なんて見た事ない、詰め込み専門だ。」
「帰ったら残念会でも開いてやるか...」
仕合は一時間も経たずに終わった。
結果は後日お触れを出すという。
人ごみの為随分時間がたってから宿にもどるとサエが先に戻っていた。
「よくあれだけの人ごみの中俺達より早く戻ってこれたな?」
「ファーマちゃんに送って貰ったの。」
王都に戻って以来、ファーマは王宮で王の傍に付いている。
「それより見て!」
サエは得意そうに立派な竹編のバスケットに入った掃除道具一式を取り出した。
「競技に使った掃除道具全部貰えたのよ!これだけ揃えたら結構するわ!」
「そうか、良かったな。もし次の育児に参加できたら世話した子供を貰えたかもしれんが、まあ気を落とすな?」
「そうだぜ、サエ、道具貰えて良かったな? 明日からは孤児院に行くのか?」
「それがねドタン君、孤児が増えちゃって場所が無いからアパート借りる事になりそうなの。」
ドタンはぎこちなくサエを見た。
「そっそうか?じゃあ俺と同じだな...何なら一緒に暮らさないか?」
「「えっ?」」
サエとルナーダの声がハモッたが、サエのは少しだけ嬉しそうな「えっ?」、ルナーダのは道端で踏みたく無い物を踏んでしまった時の声だ。
「何言ってるんだ?駄目に決まっているだろう?」
「だって、俺住むとこねーし、それか兄貴の所で住まわせてくれるのか?」
「勿論その積りだ、部屋は沢山空いているからな、だが家賃代わりに働いては貰うぞ?」
「「えっ?」」
今度はドタンとサエがハモる。
「兄貴ィ~、俺の事ちゃんと考えてくれてたんだな~、感動した!」
「えっと...ルナーダ君家にお部屋が沢山空いているなら...わっ私にも貸して欲しいかも...格安で...」
「何?うーん、それはファーマに相談してみるが...」
だが翌日サエがルナーダ邸に引っ越す事は無かった。
なぜなら、またもや試験に受かってしまったからである。
■◇
3回戦の当日、ルナーダはファーマに食ってかかった。
「いや、おかしいだろう、絶対判断基準がおかしくないか?」
「採点基準は公開されていませんが、それがもしサエちゃんに有利な基準だったとしても私にはどうしようも有りません。」
「それじゃ、最初から大会なぞ開かなければ良いだろう?!」
「もう~ルナーダ様、文句があるなら直接言って下さい。本件に関して私に言われても困ります。」
「王にか?今の俺が文句など言える筈も無かろう?」
ファーマはじっとりした上目づかいでルナーダを見た。
「分かった分かった、何も言うな、手紙を書くから持って行ってくれるか?」
ファーマは仰々しく礼をする。
「はい、ルナーダ様、仰せの儘に。」
3回戦の会場はとある貴族の屋敷。
隣室で審査を待つ王は手紙を読んで一笑にふした。
「ガキんちょが偉そうに指図するでないと言っておけ」
「青髪の君、なぜそうもしてお嫁さんを探すのですか?」
「国を預かる私に向かって口答えは許さん。それから...最終試験にはガキも連れて来い、いいな?」
屋敷に集められたのは3歳~5歳の近隣貴族の御子息達総勢20人。
「お前達3人には今日一日この子供達の面倒を見て貰う。」
選手の一人は蕾の様に大きく膨らんだスカートの貴婦人。
恐らくは深窓の御令嬢であろう。
もう一人は流行の短スカートをはいた赤髪の若い女性で、身に着けている装飾品から裕福な家の出の様だ。
更に二人とも容姿に関しては文句の付けようが無い。
「では、頑張ってくれたまえ。」
王はそれだけ告げて行ってしまった。
夕方、へとへとになったサエが何時もより暗い顔つきで戻って来る。
「お帰り、サエ」
「どうだった?」
ルナーダ達が声を掛けると、サエは狼狽えた目を潤ませる。
「どうしよう...受かっちゃった...」




