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青髪の君の花嫁探し  作者: ゴスマ
第8章 市井(しせい)の花嫁
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第3話 市井の花嫁

最終仕合は王宮の厨房だった。


隣室で審査を待つ王の横には強制的に連行されたルナーダが居る。


不機嫌そうな顔で腕組みをし、黙りこくって天井を睨みつけていた。


「ガキンちょ、どんな料理が出て来るか楽しみだな?」


「ふんっ今回ばかりはサエが勝つことは無い。なにせアイツの出来る料理と言えばポーチドエッグくらいだからな。」



果たして運ばれて来た料理はポーチドエッグであった。


もう一方は美味しそうなポトス。この地方の伝統的な煮込み料理である。


「さあ、頂こう」


「食べるまでもない、ポトスの勝ちだ。」


 王はゆで卵を一口スプーンで掬い、次にポトスを美味そうに平らげた。


「実に旨いポトスだ、さて二人を呼んで来てくれ。」


 ポトスを作ったのは裕福な商家の娘だった。美しい娘で眼差しが機知に満ちている。


「さて、お二方、これから勝者が決まるわけだがその前に女王となった暁に何を目指すのかを聞いておきたい。」


 商家の娘は凛とした声で答える。


「私はこの国をもっと豊かにしたいと思います。」


「ほう~、どうやって?」


「現在東西の貿易に掛けられている税金を半分にして流通を増やします、量が倍になれば税収は変わりません。一方で物資が豊かになり王国は活発化します。」


「素晴らしい考えだ、貴方には才があるようだ、では次の人。」


 呼ばれたサエはオドオドしながら、ちらっちらっルナーダの方を見る。


「あっあのォ~、恐れながら私が勝つ事は無いと...」


「うむ、もしもの話で大丈夫だ、怒らないから言ってごらん、もし勝ったらどうする?」


「本当に、もしもの話で大丈夫です?怒ったりしません?」


「うむ、二言は無い。」


 サエは目を閉じ真っ赤な顔で叫んだ。


「私、好きな人が居るのでその人と結婚したいです。」


 ぶっと噴き出したルナーダ。


「誰だ!そんなの許さん!」


「えっ?」


 サエは呆気に取られた。


「ルナーダ君、酷いっ!」


 青髪の君も冠を外して汗を拭く。


「ああ、我が身内ながら全く酷い話だ。だが、これで決まった。」


 そういって王は手に取った王冠をルナーダの頭にすぽっと被せる。


「「えええええー!」」


 サエと商家の娘が絶叫する。


 青髪の王は落ち着いて言う。


「君のポトスは絶品だった。サマンサさん、君には商務大臣の席を準備しよう。残念ながら王の心は掴めなかった様だが何分偏屈な兄でな、気にしなくて良い。」


 サマンサは非常に混乱した。


「ななな、何ですって?このガキンちょが王ですって?!」


 青髪の君は短い髪をサッかき上げた。その姿は美しく妖艶だ。


「そうよ、そして我が最愛の兄をガキンちょ呼ばわりする事は許しませんよ?勿論私は除きますが。」



ファーマが杖をサッと振るとルナーダの金髪が見事な青髪に変わる。


「青髪?? ままま、まさか陛下のお子ですか?!」


 サエがオタオタ尋ねると、青髪の君はやさしく繰り返した。


「私は最愛の兄と言ったのです。

呪者に近い血統を持つ者の血液を特殊な瓶の中でよく乾燥させ、とある聖水を加えた後に3日間安置する。その秘薬で兄の呪いは解け、あと1か月もすれば秘薬の効果で元通りの体に戻るでしょう。」


 サマンサが口をパクパクさせながらふと隣を見る。


サエは口を半開のまま白目を剥いていた。


(賢王は呪いで子供に変えられていたのか?皇妹様が影武者を務めた。だがなぜかこの白目の娘が王のハートを射止めた?)


 サマンサは息を整えると再び尋ねた


「つまり階下は王宮の奥にお住いの筈のフィオーネ様という事なのですね? 最後に一つだけ教えてください、なぜこのような回りくどい事を?」


フィオーネはここ暫くの重責から解き放たれた安堵感からか頬を高揚させながら楽しそうに喋った。


「うふふふ、だって兄上は恋愛に臆病だから。それに早く結婚して子供でも作って貰えばもう影武者に呼び出されて、自慢の髪を短く切られる事も無いでしょう?」


◇■


 1か月後、青髪の賢王と呼ばれたダナール13世と市政の娘から選ばれた花嫁との結婚式が王都にて盛大にとり行われる。


 王の傍には幼少期に親を亡くした王を育てあげた言われる狂乱の大魔術師ファーマが付き添い、親の居ない花嫁の傍らには見知らぬ少年が付き添った。


 護衛は厳しく、各国の来賓は花婿花嫁に直接祝辞を述べる事は許されていなかったが、奇抜な服装のココルとその付き添いの若いハンサムな男はそれを許される。


「よー、義弟きょうだい。随分乳のデカい嫁さんだなあ?俺の教育の賜物か?」


 男の服装も奇抜だったが、周囲は見て見ぬふりをした。だが王に対する口調には皆ビクリとする。


「これ、クシャトリア。親しき中にも礼儀を弁えろ。」


「そうですよ?我が不肖の弟子クシャトリア。貴方の所為であれ程従順だった我が王が下品になったですから。」


 だが、王は全く気にしない。


義兄あにき!、よく来てくれた。俺にも義理の弟が出来たんだ。後でゆっくり紹介させてくれ。」


 式も終わりに近づいた頃、戴冠した凛々しい王にファーマがそっと囁く。


「ところで陛下? いつサエに出自を教えてあげる御積りで?」


「ん?叔父の再婚相手の連れ子だった事か?それとも叔父は聖王国の落胤を庇って偽装結婚していた...なんて事を教えて、あいつが何か幸せになるのかね? 血統的には奴の方が現在の王女より正統に近いから命を狙われ、その所為で母親が殺されたなんて知ったら悲しむだけじゃ無いのか?」


 傍らのサエは放心したように目を見開いていて何も耳に入って来ない。頬がほんのり紅色で、幸せそうである。


「そうですね、態々過去を穿り返すのは止めましょう。お世継ぎがお生まれになって大きく成られた際に私からこっそり教えて差し上げますよ。」


「うむ、頼んだ。」


 その時教会の大鐘が荘厳な音が響き、白鳩が一斉に空に放たれた。


(終わり)

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