第3話 ノームの砦
拘束されたサエを上から覗き込んだそれは奇妙な小人だった。
「助けて!」
「#$‘(&!」
言葉が通じない。
危機を感じたサエは更に大声で叫んだ。
「助けて!!」
すると年老いて杖をついたノームが輿に乗ってやって来ると、片言で喋ったではないか。
「お前、血、取る、我ら、強い、なる」
「わ、わたしの血なんて取っても良い事なんか無いよ~」
「血、レア。」
「そんな事無いって~!」
どおおーん!
仰向けに寝転がった脳天の方角から爆音が響き、サエは思わず首を竦めた。小人達がワイワイ騒いでいる。どうやら何者かと戦っている様だ。
「サエ、今助けるぞ!」
「ファーマちゃん!来てくれたのね!」
そう叫んだが頭も固定されていて見えるのは天井のみ。戦闘の音だけを頼りに仲間の救出を待つ。やがて周囲が静かになると、エルムがサエの拘束を解いた。サエは当たりを見渡して改めて驚く。
「凄いですね、これ、皆ファーマちゃんがやっつけたんだよね?」
「そう、私も2~3人倒したかな...それより、何かされなかった?」
「血を、すこし取られた見たい。」
それを聞いたファーマは一瞬眉を潜めた。
「そうか、だがその程度で良かった。他にも攫われた者が居ないか手分けして探しましょう。」
サエ達と別れたファーマが生き残りのノーム達を駆逐しながら砦を練り歩くと、牢屋らしい区画に出る・
「ふう~、一体こんな所で何をなさっているのですか?」
「見れば分かるだろう、掴まったんだ。」
ルナーダは至極不機嫌に答えた。
「こんな小さな者達に捕まるとは、なんと情けない...幼少の頃より鍛えて来た甲斐の無い...」
「おまっ、ドタンだって一緒に捕まったんだ。俺が弱い訳じゃ無くて、小さくても数が纏まれば侮れないんだよっ!」
「はいはい、この黒歴史は内緒にしておいてあげますから早く二人とも牢屋から出て下さいな。」
そう言って牢の鍵を壊すとファーマはとっとと奥に行ってしまった。
牢から出たルナーダとドタンは砦の中で捜索を続けるサエと再会する。
「おお!無事だったか?!」
「小人に変な事されなかったか?!」
「もう~、二人とも変な想像しないでよ、大丈夫何もされなかったから。」
恥ずかしそうに身を捩るサエの姿に二人はほっと安堵する。
そこへエルムが走り込んできた。
「見て!捕まえたの!きっとこれ王様よっ!」
それは他とは明らかに異なる服装をしていた。絹の赤い服に黄色いマントを羽織った30cm程の小人は額に金の飾りまで纏っている。
「“&‘(’!”!」
「何言っているのか分からん、ん?瓶を持っているな?ちょっと見せろ。」
ルナーダは小人の王から大事そうに抱えていた透明な小瓶をはぎ取った。中にはロゼ色の液体が入っている。
「何か大事な物らしいが後でファーマに調べさせよう、サエ、これを持っておけ。」
そうこうする内にファーマとも無事再会することが出来た。
この砦の内部に、他に捕らわれていた者は居なかった。しかし、もう夜も更けていたのでファーマは、キャンプ地には戻らす交代で見張りを立てて砦で一夜を明かす事を提案した。
「えっ?こんな死体だらけの所で寝るんですか?」
「それなら風で吹き飛ばしましょう~、ナイナイプンテー!」
突如室内に暴風が荒れ狂い、竜巻が床に散乱したノーム兵達の死体を運び去ってしまった。
「でも血の匂いは残っているんですけど...」
ブツブツ言いながらも眠りについたエルムとサエ。
翌朝、砦の外にでると改めてファーマの攻撃の凄まじさに驚いた。
砦の入り口側は広範囲に太い樹木がバラバラに破壊されており、竜巻に巻き込まれた死体の山がぽつぽつと小山を点在させている。
「悲惨な光景だ。しかしサエ喜べ、奴らの目的は分かったぞ。なっファーマ!」
「はい、ルナーダ様、このノームの王が持っていたのは一種の強化薬と思われます。」
「強化薬?私、血を取られたけど何か関係があるんですか?」
「ありますよ、人間の血を媒介にして作った秘薬で奴らは尋常ならざる力を手に入れようとしたのです。」
ドタンがごくりと生唾を飲んだ。
「なあ、それ、俺達が飲んだらどうなるんだ?」
「さあ?何が起こるかは保証できません、もしかすると力が多少強くなるかも知れませんが。」
「よしっじゃあ飲むっ!」
そういってドタンはファーマの手から小瓶を奪うとこわごわと少しだけ舐めた。
「ぐ...うえええええ~」
「おいっ!ドタンしっかりしろ!」
喉を抑えて苦しみだしたドタンの背中をルナーダは心配そうに摩ってやる。
「まっ不味い...」
「てめえ!心配してやったのに、何だそりゃ!」
「ああ、わりいわりい、余りにも喉がイガイガする苦さだったから、つい。」
「結局何も起きませんでしたね?」
エルムも心配そうに覗き込んだ。
「うーん、ノームの薬だから、効果はノームにしか出ないかも?」
「所で...」
「なんだ、サエ?」
「今度はまた違う小人達が沢山でてきたけど、どうしましょう?」
砦は迷彩服を着た4頭身の小人達に包囲されていた。




