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青髪の君の花嫁探し  作者: ゴスマ
第7章 ビックエルフの森
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第1話 エルム

やっとポルの村を出発した一行は、馬上である。


黒毛、赤毛、灰色斑に栗毛の馬達は仲良く並んで進む。


「俺サエの後ろが良かったなぁ~」


「駄目よドタン君、一人で馬に乗る事も重要な鍛錬だからね!」


 甘ったれをしかりつけるとサエはチラリと馬上のルナーダを見た。


 昨日、王との会話の一部始終を後で知ったルナーダの怒りようと言えば半端が無かったからである。


 §


『ななななな、なんだと~!花嫁を決める大会だと~~、許さん、許さん、絶対に許さんぞー!』


『そんな事言ったって、王様命令だから仕方がないじゃない...』


『じゃあ何か?お前は王命なら死ぬのか?好きでも無い王と結婚して死ぬまで添い遂げるのか?』


『やだなあ~私なんか優勝する訳無いじゃない、それに幾ら王様の命令でも好きでも無い人と結構んするのは厭かなあ~、だって私は貴族でもなんでもない自由な冒険者なんだから~』


 サエは否定したが昨日のルナーダは何時に無くしつこかった。


『じゃあ、あの青髪の事が気に入ったのか?だから参加するのか?』


『やだなあ~、すっごい美形だったけど、そういう気持ちは一切起こらなかったから~』


 §


「はぁ~」


(ルナーダ君、何であんなに怒ってくれたんだろう...若しかしてルナーダ君、私の事...駄目よサエ、彼はまだ10歳かそこら、行っても12歳だわ...)


「ねえ、ルナーダ君?そう言えば聞いて居なかったんだけど、今幾つなの?」


「煩い、32歳だ!」


「ぶっ、はいはい12歳ね、でも偉そうな口ぶりだけは32歳で合ってるかも、ふふふふ」


「ふんっ!」


(やっぱ12歳か~、7歳は年の差有りすぎだよね~)


 ブルブルと馬の様なしぐさで妄想を吹き飛ばしたサエは元気な声で言った。


「さあ!目指すは北の祠!」


 そこに行けば今回の依頼は終わり、一つの冒険が幕を閉じる。


 ◇


 北の祠は、山頂に年中雪化粧が掛かる霊峰の麓にあった。


 そこに辿り着く為にはまず深い森を抜けなくてはならず、馬に乗ったままでは到達が難しい。


 何故ならその森は徒歩でさえも進むのが容易ではないからだ。


更にそこは案内人が居なくては帰って来れない。それ程に迷い易い森だった。


「という訳で馬はこの宿に置いて行く、ここはビックエルフの森専門の案内役がいる唯一の宿だからここで案内人を雇う訳である。」


「なんだか言い訳がましい説明だね~ 質問して良い? 案内人はこの子しか居ないの?」


 ぐいっと近づいたサエの顔にルナーダは避ける様に後ずさりをした。


「...男衆は皆出っ張らっていて忙しいのだ...」


「ふう~ん、じゃあ女の子はこの子だ~け?」


「こいつは未だ16だが、村に残っている女の子の中では一番年長で信頼できるからだ!決してこれ以上パーティーに幼女枠など要らぬとか俺が巨乳好きとかそういう理由では無い!」


 サエの目は明らかに怪しむような目つきでルナーダを見た後、エルムの方へ向き直る。


 美少女だ。


 胸囲こそサエに劣らぬが、サエをすらりとさせたような体形に、目じりがすこし下がり目の愛嬌のある顔つき。


「ふう~ん、エルムちゃんだっけ?まっ宜しく、私はサエ、こっちがファーマちゃんとドタン君」


 細目でルナーダを見たサエは、エルムに近づくと耳元で囁く。


「そこで偉そうに喋っていた雇い主のルナーダ君だけどね、本当は洗濯板見たいな真っ平な胸のお婆さんに頬すりするのが夢だって言うとっても残念な子なの。ちょっと変わって居るから気を付けてね?」




 森を歩くにはそれ相応の格好が有る。


 まず肌を露出させるのは上策では無いし、帽子もあった方が良いだろう。


 靴は柔軟で歩きやすく、かつ丈夫な物が求められ、雨露を弾くように油を塗り込まれた物等は重宝する。


 そして何より、出没する魔物の鋭い牙から身を守らなくてはならなかった。


「という訳でサエ、お前のその罪深き胸元は封印する。そもそも、お前は剣士だろう? 普段から急所を隠さないでどうする。ここは鍛冶屋が居る最後の集落だから、ここでお前の胸当てを作って貰うぞ?」


 新調する鎧は胸元を覆う1枚物の鉄の板。


それを加工して前面に、背面は丈夫な革のバンドを肩や背中に通して留めるごくありふれた胸当てであった。


 大体の寸法を測って叩いて伸ばす、時々鍛冶屋が宿まで来て試着してまた治すを繰り返す。


「ずいぶんデカい乳じゃのう、わしゃ~鍋を二つ同時に打っとる気分になるわい。」


 ぼやく鍛冶屋が装備を仕上げる迄の1週間の間、彼らはこの集落で滞在する事になる。


その間に靴や服を新調した。


 予定より早く5日後に胸当てが出来上がると、試着したサエは剣を抜くと掛け声と共に素振りした。


「えい、やあっ!」


 だが素人目にも脇が甘く力がまるで入っていないのである。


「ごめんね~折角作って貰ったんだけど、胸当てがあると剣が上手く振るえなくて...誰かにあげて良い?」


「何処にそんな二連大鍋を受け取る奴がいるんだ? 両手で使いづらければ片手剣を持て、森ではその方が役に立つ。」


 ルナーダの勧めで刃渡り40cm程度の片手剣を装備したサエは長剣を背中に背負い腰に短剣を差した二刀流となる。


片手では長剣を扱う力が無いから置いて行けというルナーダの命令にも、これは自分が冒険者になって初めて買った剣だからと頑なに固辞する為、雇い主は匙を投げて出発を宣言した。


先導はエルム。サエが続き、ファーマ、ドタン、最後尾はルナーダという順序である。


「ねえエルムちゃん、ビックエルフの森って本当にエルフがいるの?」


「居るよっ!私は未だ会った事がないけど、お祖母ちゃんは何回も遊んだことがあるって言ってたから。」


「名前通り本当に大きい?」


「えっ? うふふふ、それは会ってみてのお楽しみって事でどうかしら~」


夢のある前衛の会話と比べると後列のそれは酷かった。


「なあルナーダ。」


「ルナーダの兄貴だって何回言ったら分かるんだ...」


「エルムちゃんとサエ、結婚するならどっちがいい?」


「...そういうのはな、結婚に何を求めるかによって答えが変わって来るんだ。

いいか?料理上手を求めるなら、キャンプが得意な森の案内人であるエルムだろうし、

守って貰うなら胸が邪魔で満足に剣も振れないへぼ剣士よりも野獣をも追い返すエルムだろうし、やすらぎを求めるなら始終喋り倒す奴より控えめなエルム...」


「なんだよそれ、じゃあルナーダはエルムちゃんで、おれはサエな?」


会話は否応なしにファーマの耳にも入って来る。


「ぐっ..だがサエには一つだけエルムに勝るものがある。」


「何だよそれ、取って付けた見たいに。」


「胸囲だ...」


「ルナーダ様?」


 振り返ったファーマの表情は普段の妖精のような形からはそうぞうも付かない程に変化していた。


「ひいっ!鬼っ!」


 驚いたドタンが叫んで転んだ。


直ぐに前衛のサエが戻ってきた。


「ゴブリン?どこ?まさかオーガ?!」


「なんでも無いのよサエちゃん、お馬鹿な男子は放っておいて私達で先を急ぎましょう?」


 転んだドタンに手が差し伸べられた、ルナーダだ。


「迂闊だった、ファーマは耳が良いんだ(年の割に..)」


「女ってあんな怖い顔出来るんだな?普段が綺麗だからホラーだったぜ。」


 手を握り返すとドタンは、背伸びをした。そしてルナーダの目を真っすぐに見る。


「兄貴、いつも手を差し伸べてくれてサンキューな。でもサエに関して俺達正々堂々勝負しようぜ?」


 驚いた顔のルナーダは直ぐに何時ものすまし顔に戻る。


「ああ、どっちが勝っても、たとえ両方が負けても誰にも恨みっこなしだ!」

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