第4話 ココルと青髪の君
宿に戻るとテイマーを囲んでの晩餐が始まった。
因みにワイバーンは騒ぎになるので森に置いて来てある。
「ほらルナーダ君、しかり食べないと大きくなれないよ?」
「サエ、もう俺の事は諦めてくれ...男として...あんな、あんな屈辱...」
「はいそこまで。ルナーダ様?ココルにはテイムの魔術を人に使わない様、厳し~く言っておいたから...」
「僕ココル様のお胸ですりすりする~、くくくく。」
生乾きの傷口を抉られたルナーダは黙って席を立ち部屋に籠ってしまった。
「ドタン君!」
「なんだよサエ!庇うのか?あれがアイツの本性なんだよっ!なんかアイツに甘く無いか?」
「ほれ、ドタン少年、この球をみろ?」
「ワンツーさんハイッ!お前は自分のした事を深く反省するっ!」
ガタンと椅子が倒れてドタンが這いつくばった。
「俺は...穴が有ったら隠れたい...傲慢で怠け者で無力だ...」
「もう~ココルさんっ!やるなら自分に掛けて下さい!」
□◆
翌朝目が覚めて外を見ると、宿の前にココルの使役獣達が集まっていた。
夜通し走って来たのか泥だらけの四足獣が混ざっている。
しかし、そこにあつまった皆が穏やかな目をしていて、只の魔獣で無いことも分かった。
「西の大森林から来たの?途中で間違って討伐されなくて良かったらね~」
隣でサエが感心した様に言った。
「大丈夫じゃ、ほれ、わらわの使役獣達には暗闇でも光る紋章を付けてある、もしこの紋章の魔獣を殺した奴は...」
「奴は?...」
「昔実際にいたのよね? 珍しい毛皮の子で虎の体と蛇の頭を持ったキメラだったかしら?大貴族の狩りに出くわして。その子言いつけ通りに抵抗しなかったから、殺されちゃったって話。」
「えっ?ファーマちゃん、その大貴族さんってどうなったの?」
答えはココルの口からポロリと出た。
「正体不明の魔獣軍団が城ごと破壊して一夜にして滅んでしまったんじゃよ、50年くらい前だったかの?」
「それくらい前だったかしら~?」
サエは頭痛がしてきたが、使役魔獣達のお陰で捜索は早かった。
数時間もしない内に5匹のグアウの幼生、それと農夫姿の偉丈夫を一人捕まえたのだ。
「グアウは合わせて6匹じゃな、儂の忠実な僕として立派に育ててやるぞ。」
「まじか?良かったなこいつら。」
「まあ、それがあの子との約束だからね、それよりっ!」
サエが指差す先にはふてぶてしい顔の農夫が一人、両肩を鳥の魔獣に鷲つかみされて動けずに蹲っていた。
「魔獣の子供なんて置き去りにして、あなた一体どういうつもりっ!」
無表情な男は一言も言葉を発しようとしない。
「まあまあ、ちょっとこれをみろ?ワンツーさんハイッ!お前は自分の秘密を話したくなる、更に話すと楽しくて仕方が無くなる!」
「わーははっは、俺はスパイだ、うほっほほほ、この国を困らせる為に魔獣を撒いた。いひひひひ愉快愉快、青髪の王が困った顔を見てみたい。うひひひひ。」
「なんだと~、どこの国の者だっ!」
「なんだこのチビ、うっはっはっは、息が出来ない。青髪の王が我が西方聖王国の申し出を拒むから..うへへへへ、止めてくれ、うほっほほ。」
笑うたび男の顔は赤から紫に変わって行く。
「チアノーゼじゃな、早く一番隠している事を言わないと笑いすぎて窒息死するぞ?」
「いひいひいひっ、王、王、青髪、暗殺、呪いのつ…ぼ…」
サエが真っ青に変わる。
「大変~!王様が危ないなんて、すぐ王都に戻って知らせなきゃっ!」
「その必要は無い。」
少し高い、とても良く通る声に驚いて振り向くと、いつの間にか豪奢な冠を被った青髪の美男子が立っていた。
◆□
「皆、今聞いた事は国家の大事にかかわる為他言無用で願う、所で...君か?お手柄の女剣士というのは?一度会って見たかった...」
その特徴的な青髪よりも、賢王と呼ばれるその眼差しの奥に巣食う迷宮の様な感覚に、サエは釘付けになった。
(私...この人に会ったことがある?いや、雲の上の人になんてあった事ある筈も無い、じゃあ誰?)
ギルド長でも無い、近所に住む兵長でもない、思いつく誰とも違う目だ。
「お手柄だなんて...偶々事件に巻き込まれただけでして、助かったのも運が良かったんです...」
「ふははは、謙虚で良いな!そう言うのは男を魅了する資質でもある、よし決めた!今度王都で儂の花嫁探しをする事になっておる、お前もその大会に参加しろ!」
サエの隣でココルが口をパクパク、声を失っていた。
青髪の君はいたづらそうにウインクをする。
「ココル、元気そうでなにより。この話はくれぐれも内密にな?」




