第3話 後話
木窓を開けると夜風が頬に当たる。ルナーダは西の空を見上げた。
郊外の空はオレンジ色に火照っている。火災は夜になっても収まらなかった。
「宿の主人達も総出で消化活動に出掛けているらしいが、火の勢いが強くて消えないらしいんじゃ。」
先ほど晩飯に握り飯を貰いに行った際に、仲居の老婆がそう教えてくれた。
「申し訳ありません、咄嗟の事でつい魔力が籠り過ぎました...」
「まあ、誰も俺達の仕業だとは思うまいさ。」
「手前、この極悪人がっ!」
ドタンがルナーダを睨みつけると、同調するかのように足元に転がる大きな布袋が蠢いた。
「ふぐぅーふぐぅー!」
ルナーダは袋の裾を捲ると中の人物とアイコンタクトを取る。
「おい、喋る気になったか?さっきみたいに大声を出さなきゃ猿轡を外してやる。」
「ふぐぅーふぐぅー!」
「大声を出さないなら左右の瞼で2回瞬きをしろ、よしじゃあ外してやるから俺達の質問にのみ答えろ。」
袋から男の首から上が出され猿轡が外された
「手前このクソガキ共!ぶっ殺..」
後半は喉から生えたつららの所為で言い切る事が出来なかった。
縄で縛られた袋詰めの男は全身を剃り返して暴れるが、サエが腰に据わると、とたんに動けなくなる。
「おおっ、さすが一番のヘビー級だな。」
「傷つく言い方だね、手足縛られていて腰に乗られたらそうそう動けないだけだから...」
男が大人しくなったのでルナーダが指で合図すると、ファーマは男の口からつららを一瞬にして消し去った。
「かわいい顔して本当におっかない魔女だな...」
ドタンがそう呟き、ファーマに睨みつけられた。
「さあ、吐いて貰おうか?」
「ほんが、いほはけひゃいはほ。」
男の喉と舌は凍たさで痺れていた。
「くそっ!埒が明かん!」
翌朝、一行は街の助役を訪ねる。
大魔導士ファーマの名を聞いた助役は低頭平身で出迎えた。
「あのお、若しかして昨日の大火、何かご存じですか?」
突然、助役がけん制をかけてきた。
「郊外で火事があったそうですね?.そこは一体如何いった建物だったのでしょうか?」
「そうですか、ご存じでは無かったのですね?安心しました...実は..火を消し去った後で調べて分かったのですが倉庫の中から大量の武器が見つかり、どうやらあの建物はテロリスト達の隠れ家に使われていたようなのです。」
助役は昨日の大火がテロリストの存在を知った狂乱の魔女の仕置きで、その矛先が自分に向くことを恐れていた。
「黒幕は?」
「恐らく他国の手の者による資金援助があった物と。王国内の扇動が目的だった様です。」
「では貴方はこの事実を王都に知らせなさい、私たちは先を急ぎます。」
「ははー!」
大げさに低頭した助役は、伏せた顔に安堵の笑みを零した。




