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青髪の君の花嫁探し  作者: ゴスマ
第5章 パゲの街
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第1話 ドタン捜索

パゲの街は何の変哲も無い宿場町。


北部の資源を王都に運ぶ要地では有ったが、平地に乏しく人口は決して多くは無い。


街に入るまでのルナーダは、馬車の助手席で延々とサエが話す取り留めも無い話を聞き続ける羽目に陥り、正直ウンザリしていた。


水から揚げた笊の中で跳ね回る小魚の様に、ひっきりなしに動く口元は淡い桃色の透明唇も、そこから覗く白い歯も、ちょろちょろ見える小さなピンクの舌先も何時間見ていても飽きの来ない美しさを備えてはいたのだが、如何せん話に内容が無さ過ぎた。


(宿場町というだけあって宿の数はそこそこあるな...)


適当に相槌を打ちながらルナーダは街の様子を観察する。


連なる宿屋は大きな荷馬車専用の区画に飼い葉と水桶を並べており、客引きが盛んだ。


「よっそこの巨乳のねーちゃん、うちは風呂が大きいからゆっくりできるよっ!」


客引きの声にピクリと反応したルナーダが大きな声で尋ねた。


「風呂?窯に板を沈めて入るやつか?」


 すると客引きの男は呆れた様子で言った。


「何言ってるんだいこの子供は。ここは温泉が出るんだ、そんな野蛮な風呂なんか何処も置いてないよっ」


「よし分かった、ここにしよう。」


雇い主の一存で宿は表通りに面した『亀や』という暖簾のかかった比較的大きめの宿となる。


宛がわれた部屋は大部屋だったが更衣室は女性専用のものが別にあり、寝巻に着替えたファーマはタオルとルナーダの手を握ると立ち上がった。


「さあ、ここのお風呂は大きい見たいですから、行きますよ?」


「ふぁっ?何言ってんだファーマ!」


「そうですよ、何言ってるんですかファーマちゃん。」


「こんな機会しか一緒に入れないのですから、久しぶりにいいじゃないですか?小さい頃は毎日お風呂に入れてあげたのに..育てた恩も忘れたのですか?」


 これにはサエが驚いた。


「えっ?二人ってどういう関係?ちょっとこんがらがってきた~」


「どうもこうも有るか!そんな昔の話を持ち出しやがってっ!親戚の集まる宴会で自分の記憶にない幼少期の笑い話を持ちだされて、居心地の悪さを噛みしめている少年の気分だっ!」


「まあ、ルナーダ君少年だからね..」


 サエの言葉で辺りは一瞬静寂となる。


「それよりファーマちゃん、ルナーダ君はもう女湯に連れてっちゃダメな年だよ?えっ貴方が男湯に?ぜっ、絶対にだめだよ!」


 揉めたが当然ファーマはサエに連行され女湯へ。


 自由になったルナーダ少年は一人ゆっくりと温泉を満喫した。


 ■


 翌朝、ルナーダは宿で奉仕する少年を見かける。


 色白な金髪で小太り、ドタンだ。


「よう、頑張ってるな?働かざる者食うべからずだ、よもや無料で泊まれると思ったか?」


「何もしてねえお前に言われく無いわっ!」


「俺の事はルナーダの兄貴と呼べ!そろそろ出発だから遅れるなよ。」


 しかし出発の時刻になってもドタンは姿を見せなかった。


「あのやろう~労働が辛くて逃げたな?」


「まあ、ルナーダ君と一緒に居てもこき使われるだけだし、逃げたかもね~」


 そう言ってサエはひらりと馬車の御者台に上った。


「仕方がないファーマ、魔法でちょちょいと連れ戻せ。」


「流石に無理です、何処に居るか分からないですから。」


「ちっあんな世間知らずで生意気なガキ一人で生きていける訳がない。」


 ルナーダはサエを御者台から引きずり降ろすと一行は徒歩で聞き込みを開始した。


 あちこち調べていると金髪の少年に店先の饅頭を盗まれたという店に行きつく。


「あーあ、がっかりだ、盗みなんて見損なったぜ。」


「彼お金なんて持って無かったですからね..」


「金が無いから盗む、実に短絡的で自分勝手だ、貴族の気品も誇りも無い。」


「ドタン君、きっとお腹が空いたのよ。」


「ならば働けば良い。」


 その言葉にカチンと来た表情でサエが言い返す。


「ルナーダ君、あのね。幾らなんでも何の後ろ盾もない子供に仕事なんて見つからないから。もし見つかっても一日中働いてごはん一食分にも成らないような仕事なんだよ?子供が食べて行くって、君が思っているより何倍も大変な事なんだから!」


サエは寂しそうだ。


そんな彼女を見て、ルナーダは強く言えなかった。


「だが盗みはいかん、仕事が駄目なら事情を話して飯を分けて貰う努力をすべきだ。」


「そんな...ルナーダ君のお家は裕福みたいだけど、何も持って生まれなかった人は一生這いあがれずに、お腹を空かせて死んでいく事だってあるのに...食べる物が無いって本当に辛いんだよ?それがずうーと続くかも知れないって思うだけで心が潰れちゃうくらい辛いんだよ?君には分かんないんだよね?だって、経験した事無いでしょう?」

 

 ファーマがそっとサエの肩に手を置いてやさしく摩ったのでサエはそれ以上何も言わなかった。


「しかしなあサエ、例えば貧民同士で食料を奪い合えばどうなる?分かるな?だから盗みは禁止されるのだ、許せば国が成り立たなくなるからだ。」


 ルナーダの正論はサエの心には届かない。


 消えたドタンの足取りを追ってドンドン郊外へ足を延ばした一行は、それらしき少年が男達に連れ去られたという情報を得た。


「あそこのお屋敷の前で子供が座り込んでいたら、中から強面の男達が出て来て中へ連れて行ってしまったんだよ。」


 近所にすむ女性はがさがさの手で恐ろしそうに門を指差した。


「あそこは何方のお屋敷ですか?」


「それがねえ、以前はさる高貴な方の物だったらしいんだけど、去年くらいから怪しい男達が住み着いちゃってねえ~」


「ファーマ、吹き飛ばせ。」


「仰せの儘に。」


「ちょっファーマちゃん!」


 止める間もなくファーマの閃光は門を直撃し、爆音に続き黒煙が空に立ち昇る。


「おっ、巣を突かれた蟻みたいだ。沢山出て来たぞ。」


 ルナーダが腹を抱えて笑うと、女性は恐ろしくなって逃げ出してしまった。


 破壊された門から出て来たのは幅広の曲刀で武装した見るからに怪しげな男達。


 素肌に直に毛皮のチョッキを着た物。大きく開けた袖なしの上着の下は褌一丁の者。どうみても南方の辺境に住む聞く蛮族の様な格好である。


「沼にしろ。」


「御意。」


 放たれた魔法は瞬く間に地面を泥沼と化し、怪しい男達は悲鳴を上げて沈み始めた。

 

「よし、軽く冷やせ。」


「御意。」


 沈降が収まったかと思うと、今度は沼一面に霜柱が立った。


「「「助けてくれ~」」」


 助けを求める声の脇をすまし顔で歩き抜けるルナーダの後に、主人そっくりなすまし顔をした狂乱の少女とおっかなびっくり顔の剣士サエが続く。


しかし彼らは直ぐに一面の白壁に突き当たった。


周囲をよくよく見わたせど、小さな門が一つしか見当たらない。


 仕方が無く小門を潜ると更に男達が居た。


「何者だっ!」


 あっという間に数十人の武装兵に囲まれたルナーダはそれでもすまし顔をくずさず言い放つ。


「おい、助けてやるからお前たちのボスを出せ。」


「何だと?おいお前ら誰か外の連中の様子を見て来い!」


 眼帯の男が指示すると、小門の外にでた武装兵の一人が驚きながら戻ってきた。


「魔法だっ!魔法使いがいるぞっ!」


「魔法使いだと..」


 武装兵達がどよめく中、眼帯の男が大声を張り上げた。


「おめーら!後ろの巨乳が魔法使いに違いねえ、捕まえてひん剥いてしまえっ!」


「おい、聞いたか?奴ら魔力が胸に詰まってる物だと思っているぞ?」


「むうっ不快。」


 唇を尖らせたファーマが極寒魔法を唱えると、忽ち辺りは白一色に染まり男達は動かなくなった。


「ちょっとファーマちゃん、さっきからやりすぎよっ!この人達が悪い人かどうかも確かめずに~」


「くくく、良いんだよ!こいつらからは悪の匂いがプンプンする。さあドタンを救出に行くぞ!」

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