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悪逆の女帝 “スクラップミストレス”  作者: 黒一黒
第1章 悟りを開いた者たち
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 言葉はまるで宣誓のように厳かな響きをしていた。


 道祖みちのやから溢れる気迫も相まって、結紀ゆうきは緊張に喉を鳴らして唾を飲み込んだ。


 自身に向けられる張り詰めた視線に、その反応は正しいと鷹揚に頷いてみせる姿は、教師というよりも、唯一カミの教えを説く宣教師のようで……。


 満足そうに口元を緩めた道祖は、上機嫌で舌を回し始める。


「しかしまぁ、これだけではイメージも湧かんだろう。

 もっと具体的に説明するとだな……つまり法身ほっしん人工精霊タルパとは、人からしょうじながら人の枠を外れ、人ならざる身でありながら人と同格である。

 六根ろっこん六境ろっきょう六識ろくしき、結びて十八界を内包する物質体であり精神体。

 悟りの、その先(・・・)――真理そのものだ」


 大仰に語り終えた道祖は満足げに鼻を鳴らして三人の様子を見守った。


 彼女の予想では、三者三様で存分に感心して、目を輝かせているところだった。

 しかし、感じ入ったように何度も頷いて返してくるのは結紀のみで、後の二人はと言えば、ココはつまらなそうに半眼で欠伸を噛み殺し、ユクに至ってはその顔から一語も理解が及ばなかったことが如実であると察せるほどの間抜け面だった。


「…………要は自意識を持っていて、物質に直接干渉でき、強力なカルマを抱える人工精霊タルパだ……」


 泣く泣くというのがしっくりくるほど、あからさまに肩を落とす道祖に、結紀は慰めに言葉をかけるべきかと狼狽えたが、持ち上げた手を中十半端に彷徨わせただけで声は出なかった。


 しかし、そんな悲劇の生みの親は、その原因が自分にあるなんて欠片も考えていないらしく、晴れ晴れとした声で道祖の悲哀を打ち砕いた。


「なぁ~んだ。それならユーキの人工精霊タルパだって法身じゃん。なんか、もっとこう……出てきたら世界しゅ~りょ~みたいなのかと思った。それってそんなに凄いの?」


 しれっとした顔でそう宣ったユクに、反射的に叱り飛ばしたくなる衝動をなんとか抑え、道祖は顔をしかめながら呻いた。


「お前は……いったい講義で何を聞いてるんだ? 言ってはなんだが、人工精霊タルパくらいについては、学園に入って最初に全員が説明を受けているはずなんだが?」

「えぇ~? でもアタシ、そんなの知らなくても検査テストの成績、結構いいよ? 特にカルマの稀少性と強度が高いって出てるんだ~」


 へへっ、と自慢げに笑って見せるユクに、道祖の眉が一層激しく痙攣する。先ほどの一撃も、すでに忘れてしまったかのように、まるで堪えた様子がない。


 この島にいながら、どうすればこんな能天気娘が生まれるというのか。


 ――いや、それは喜ばしいことなんだが……。


 だからといって、頭の中に春の陽気を詰め込んだようなこの小娘をこのまま放置することはできない。そんなことは、一教育者として許せるものではない。


 ――その頭に知識の種を植えつけてやる……!


 決意も新たに、道祖は組んでいた手を腰に当て、真剣な面持ちでユクにずいっと顔を寄せた。


「いいか、柚木崎ゆきさき?」

「苗字嫌いだから名前で呼んで」


「…………いいか、ユク?」

「うん。何?」


 妙なところでこだわりを見せるユクに、頭痛と顔面の痙攣がぶり返しそうになるのを気合で押し止め、道祖は改めて口を開いた。


人工精霊タルパと業は密接関係しているが、必ずしも比例するわけではない。確かに位の高い人工精霊タルパは強力な業を抱えているものだが、業の強度が高くとも人工精霊タルパの位が低いということは往々にしてある」

「ふ~ん……でも、業って人工精霊タルパから出てるもんなんでしょ? 業が強ければ、その元になってる人工精霊タルパだって強いものなんじゃないの?」


 もはや、怒りを通り越して憐みが湧き上がってきた。ただし、それはユクに向けられたものではなく、全く機能していないように感じられる学園の機能に対してだが。


 学園長室に戻ったら絶対にカリキュラムの見直しをしようと心に誓い、今はとりあえず目の前の赤点予備軍をなんとしても救い上げるべく言葉を続けた。


「いいや、違う。お前は根っこの部分から間違っている。そもそも業は人工精霊タルパから生まれるものではない。

 いいか? カルマの根源とはすなわち――Manasマナスだ」



      ☆      ☆      ☆


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イラストなんかも載せてますので、

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