54 大人社会へ子供が挑むためには
・とにかく冷静になろう
・(未来人の件はさておき)ロタさんの言い分も一理ある。年配の大人が「もうくつがえせない」と言うからには、正しいのだろう。社会のルール的には
・あした教頭先生と大げんかしたら、最悪、廃部にもなりかねない(本末転倒!)
・ロボット展示の代替案を提示すべきか
その日の夜。
帰宅し、夕食後、シュレナは自室にて机に向かい、以上のことをノートに書いていた。今後の対策を練っているのである。
夕方の部室では、あの後、更に二分程度、ロタとは電話で話したものの、もはや気まずいだけであった。
シュレナが怒鳴ってしまった結果、まともに会話する雰囲気は失われてしまったからだ。
けんか別れのように、
「怒鳴ってごめん。でも、ひどいよ、ロタさん。未来から来たんだから、もっと色々、やれることもあるでしょ?
何か、未来人ならではの知恵とか出してほしかったのにさ。がっかりですよ。期待した私がバカだったんだね!」
最後はこう言って、シュレナはスマホの通話を切った。ロタの口調は、ずっと穏やかだったが。
かくして、不愉快な二学期初日は、下校まで嫌な気分のままであった。
もっとも、収穫がないわけではなかった。
第一に、イリカとロタが未来からのタイムトラベラーであるという仮説は、ほぼ確定したことだ。
根拠は、今日、電話でそれを初めて告げた時の、ロタの反応である。
普通なら、いきなり「お前は未来から来たんだろう」と言われたら、「こいつバカか?」と大声で笑うか、困惑するはずだ。
ロタは、いずれでもなかった。やけに冷めた態度であり、既に自覚、心構えが出来ていた証拠だ。
(まあ、未来人っていっても、しょせんは自己保身が優先の、どこにでもいるおじいさんだったわけだけどね。つまらねえな。ああ幻滅した)
と、シュレナの評価は手厳しいが。
第二に、結果論とはいえ、今、状況を客観視できていることである。
(やっぱり、学校ともめるのは得策じゃないよなー。教師は権力持ってるし)
ノートを読み返し、シュレナはそう分析した。この辺の割り切りの良さは、理系の持ち味でもあるのだろう。
翌朝、七時半。
シュレナは登校し、荷物を教室に置いてから、職員室の奥へ。
教頭先生の席の前に立つ。
かたわらには、サミヤも立っている。改まった場だからか、白衣は脱いでおり、タイトスカートの簡易なスーツ風。
教頭は、小柄な男性。年齢のためか頭髪は薄いが、分け目はきれいに整えられており、清潔感はある。
夏なのでノーネクタイだが、ワイシャツと背広のズボンをきちんと着こなしている。
生徒の間では生真面目な先生という印象で、特に嫌われてもいないけれど、積極的にしゃべりたい相手でもない。シュレナも、一対一で話したことはない。
あいさつを交わした後、教頭が口を開く。




