53 時空に関する論戦
同時刻。場所は変わって。
ケミホ中学校、理学研究部のプレハブ部室である。
シュレナ一人だ。眼鏡、制服姿。下は紺色のズボン、上は半袖の白ブラウス。
冷房のない暑さのため、扇風機の風で涼みながら、あぐらで床に座り込んでいる。
だが、窓は細くあけているのみだ。一応、秘密の作戦会議中だからである。
(ヤベーな、ムカついた勢いで、つい、本当のこと言っちゃったよ)
スマホに片耳を当てたまま、シュレナは、かたずをのんでロタの反応をうかがう。
文化祭のロボット出展不許可の理不尽さをロタへ訴えたのに、対策を練ってくれるどころか、受け身の対応。しまいには、あきらめろと言わんばかりの態度。
しびれを切らし、とうとう、真実を告げてしまった。すなわち、「ロタとイリカが未来からのタイムトラベラーである件」を、とっくにシュレナが見抜いていることである。
「それ、本気で言ってますか?」
電話越しの、ロタの返答。シュレナは、
「本気ですけど?」
「根拠は?」
「ほら、その話し方ですよ。私に敬語を使うこと」
「は?」
(とぼけちゃって。白々しい。今、論破してやるから!)
シュレナは短く深呼吸すると、
「本当は、ロタさんより私の方が年上なんでしょ?」
「ええと、なんでそうなるの?」
「今言ったじゃん。ロタさんが未来人だからだよ。そっちの世界では、私はすごいおばあちゃんか、既にこの世にいないから」
「むう」
ロタのうなり声。
(ほーら、口ごもった!)
シュレナは自信を深めて、
「そもそも、イリちゃんの完成度からして、あり得ないですよね。あんな、人と自由に会話できるロボットなんて、今の文明で造れるわけないんだから」
「なぜ、そう言い切れるのかな」
「中学生だからって、見くびらないでくださいね。
私、現時点での最新ロボットは、博覧会の企業ブースや大学で見学してますから。ネットでも本でもね」
ロタの声に笑いが混じり、
「だとしても、未来から来たっていうのは飛躍し過ぎでしょ」
「今の科学技術で造れない物が、現に目の前にあるのなら、消去法で未来から来たと考えるのが妥当ですよね」
「ああー、そういうロジックなのね。なるほどなあ」
ロタの声は、まだ笑っていた。だが、シュレナには、余裕を装ったハッタリとしか思えなかった。
ロタのため息も聞こえたが、恐らくこれも演技だろう。
「じゃあさ、もし、そうだと仮定してだよ?」
と、ロタはゆっくり前置きし、
「それで、私にどうしろと言うんですか。歴史を改変してほしいわけ?」
「えっ。いや、まあ、そこまでは……」
今度はシュレナが口ごもる。ロタは、
「最も確実な方法は、そもそも、俺たちとシュレナさんの最初の出会い自体を、なかったことに……」
「そういう話じゃないだろっ!」
シュレナの中で、プツンと何かが切れてしまった。




