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45 告げられてしまった一言

 それから、およそ二十分後。

 シュレナは、道の端の岩に腰かけて、スマホ画面を眺めている。草や砂利の多い道だ。

 一人である。既に、イリカとロタは帰った。今日は車で来たそうで、付近の駐車場の方へと立ち去っていったのだ。


 辺りには屋台の明かり、人のざわめき。

 先ほど、三人で立ち話をした場所は、ひとけの少ない球場裏であった。

 が、別れてからは、もう少しにぎやかなメイン会場へ移動した。公園と神社の境目辺り。

(七時からの花火打ち上げに、ちょうど間に合って、よかったなあ)

 毎年、夜七時から数分、花火が上がるのだ。

 今、シュレナが見ている写真には、背景の空に、花火も写っている。遠いため、ピンポン球くらいの小ささだが。 

 スマホには、シュレナ、イリカ、ロタの三名の笑顔。別れ際に撮った写真である。


 頭の上の方からスマホをかざし、シュレナが「自撮り」をした物。そのあと、ロタのスマホでも撮影した。

 シュレナは、白い浴衣。一面に、イチゴのイラスト。帯は黄色で、白抜きの水玉模様。

 スマホを高く持ち上げたため、左腕の袖がめくれ、わきの下が写ってしまっていた。ほとんど、中の白シャツと、夜の闇で隠れてはいるが。

(わっ、恥ずい。まあ誰にも見せないから、いいか。ロタさんが撮った方では手を下ろしてたし)

 眼鏡越しの瞳は、街灯が映り込み、

(いい感じにキラキラしてるなあ)

 目は満足。


 シュレナ側から見て、右隣はイリカだ。

 中腰だが、それでも頭の上部は写真から欠けてしまっている。大柄だからである。

 イリカの浴衣は、濃い青。模様は、白抜きのアジサイ。腰には、薄ピンクの帯。

(かろうじて人間に見えなくもないかなあ)

 長身の女性が厚着のドレスで仮装している、などと称すれば、ギリギリごまかせるかもしれぬ。だが、巨大人形のようにも見える。

(イリちゃんが人間社会に溶け込むには、外見上、まだまだ改良の余地ありかなあ)

 そうは思いつつも、

(笑顔は、私より美人かも)

 人造の顔なのだから言わば当然ではあるものの、女子としてちょっと悔しいのも確かだ。

 イリカの襟元には、シュレナがプレゼントしたホタルロボットが、光るブローチのようにくっついている。

 更に右には、シャツとジーンズ姿のロタがほほえんでいた。


 写真画面を閉じ、スマホから顔を上げる。お祭りの人波が楽しげだ。せっかくだから、自分も混ざって遊んでいこうかと思わなくもないけれど、

(なーんか気が抜けちゃったよなあ)

 というのが本音だ。胸がいっぱいで、目の前の祭りに今さら集中できない。それほど濃密なひとときであった。

 また、

「女子中学生と大人の男が密かに会うのは健全なこととは言えないし、これからはもう、余り会えないよ。ごめん」

 さっき、別れる前に、ロタから告げられた言葉。これもズシンと胸にこたえていた。

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