44 取扱説明、タイムリミット、浴衣女子二人
「本当にこれ、もらっちゃっていいの?」
「もちろん。イリちゃんのために作ったんだもん」
イリカに返事をするシュレナ。
「どうもありがとう。きれい。うれしいです」
イリカは、ホタルロボットのとまった右手を顔に近付け、うっとりした表情で眺めている。指や鼻の周りがオレンジの光でぼうっと浮かび上がる。
(イリちゃんには自我や感情はないらしいけど、喜んでるっぽいな)
シュレナも幸せだ。イリカの満ち足りた笑顔は、出会ってから初めて見る。
ロタも笑顔だが、ふと気がかりの態度で、
「製作費、すごいんじゃないのかい?」
シュレナは、
「昔っから科学が好きで、部品とか集めてたし、いただき物も多いんで大丈夫です」
実は、貴重なお年玉や小遣いの貯金から払った部分もあるのだが、黙っておいた。
「お二人に会わなければ、今回の発想すら浮かばなかったんですから。お金じゃ買えないですよ」
この言い足しは、心からの本音だ。
「そうか。いや、本当、ありがとうございます」
ロタは会釈してくる。
数秒の沈黙。
ホタルロボは、時々、思い出したように脚を動かし、イリカの右手をかすかに歩いている。
「電源は?」
幾つか、ロタの更なる質問。
「ソーラー式です」
一問ずつ、シュレナは答えてゆく。
「人工知能は入ってるんですか?」
「はい。非常に小さな、チップ状のものが」
「俺が触っても平気?」
「平気です」
「時々動いてるのは、そういうプログラムなんですか?」
「です。何かを目的に歩くわけでもなく」
その他、手入れの仕方なども、シュレナは教えた。
やがて。
「じゃあ、申し訳ないけれど、そろそろ時間だなあ」
ロタが切り出す。イリカも「だね」とうなずく。
「あっ、さ、最後に、写真撮りませんか?」
シュレナは、今日、家から考えていたもう一つの頼み事をする。
「三人で?」
と、ロタは目を見開いたものの、
「そうですね。撮ろう」
「喜んで」
イリカもほほえむ。
(うそっ。歴史改変になるから断られるかと思ったのに!)
半ば「ダメもと」のお願いだっただけに、うれしい誤算。イリカとロタを、未来からのタイムトラベラーだとシュレナは推測しているからだ。
「では、横に並ぼうか」
イリカが、シュレナの方へ身を乗り出す。
その積極性自体は有り難かったが、
「待って。あっち、あっちをバックにしよう!」
シュレナは、別の方角の夜空を指差す。
「どうして?」
「あのね……」
シュレナが、イリカに答えようとした、その時。
ドンッ!
まさに、そちらの方向から、大きな音が響き渡った。
皆、一斉に空を見上げる。
パラパラ、ドンッ、ドンッ、パラパラパラ……
遠くの空に、光が次々に破裂しては散ってゆく。
「ナイスタイミング!」
「花火だ!」
シュレナ、イリカ、浴衣の女の子二人が叫んだ。




