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第45話:彼女の知られざる設定と明かされない正体

「あなた、この馬鹿……っ!!心配させないでよね!!」

「レヴェリア様!!よくぞご無事で……っ!!ええ、ええ、私信じておりました!貴女さまは決してこの様な場所で朽ちる方ではないことを……!」

「女神ーー!!マジで無事で何よりっす!!はー、安心したら眠くなってきた。フェリクスさん抑えるのに死ぬほど力使ってクタクタっす」

「はぁ……心臓止まるかと思ったよ……。君も一人の人間なんだから、あんまり無茶しないで……」


地上に上がったレヴェリアとルシウスは、あまりに大規模な救出作戦が行われていたことに驚愕していた。

遺跡の周囲は地面ごと抉りとられたかのような惨状、数百人規模の捜索隊が完璧な統率の下で動いていた。

ぽかんと放心しているところに駆けつけたのが、彼らの友人だった。

ルシウスも同様にAクラスのメンバーに激励の言葉をかけられ、ロイに強く抱きしめられている。


このとき、歓喜に沸く喧騒を割って、静かに歩み寄ってくる一人の影があった。

エレインだ。


「この度は、私を庇ってくださりありがとうございました」


深々としたお辞儀。

彼女は自身のせいでルシウスとレヴェリアを命の危機遭わせたことにずっと苛まれていたのだ。

彼女はレヴェリアに抱きつくような仕草で近くに寄ると、周りに聞こえない絶妙な音量で囁いた。


「借りを作るのは好きではないから、一つだけ情報を教えて差し上げる。貴女、『小(・)説(・)』は(・)読(・)ん(・)で(・)い(・)な(・)い(・)の(・)で(・)し(・)ょ(・)う(・)?」

「?!」


(……!!まさか、あの乙女ゲームの『後日談』として発売されたスピンオフ小説のこと!?)


エレインが自分と同じ転生者であることは知っていた。だが、よりにもよって彼女の口から出たのは、レヴェリアにとって最大の盲点だった。


「私があげるヒントは一つ。貴女に纏わる裏設定」


確信に満ちたエレインの言葉。

強張るレヴェリアの反応に満足したように、エレインは妖しく目を細めた。


「あなたの本当の名前はーー」

「レヴェリア!!」


その時絶妙なタイミングで現れたのはクロードだった。

彼はエレインを一瞥すると冷たく微笑み、すぐさまレヴェリアを抱きしめた。


「ああ、無事で良かった!貴女に何かあったら私は生きてはいけません……っ!」


彼はぎゅうぎゅうと愛娘を抱きしめた。


「お、お父様……!大袈裟ですよ!あなたに鍛えられた私は無敵なので、あれくらいのダンジョンへっちゃらです!」

「危機管理能力を鍛え直す必要がありそうですね。明日から家庭教師を付けます」

「えええっ!?死線から生還したばかりの娘になんて非情な宣告を!?さっきの感動の再会はどこへ行ったのよ!」


涙ながらの抱擁から一転、即座に下されたスパルタ宣言にレヴェリアは盛大に抗議の声を上げた。しかしレイヴンは「貴女の安全には代えられません」と微笑んだまま、全く譲る気配を見せない。

傍から見れば、少し過保護な父親とそれに振り回される娘の、ごくありふれた微笑ましい親子の情景そのものだった。


その様子を遠くから眺めていたのは、ディートリッヒである。


(クロード・ブランシェール。彼女の義理の父親であり、一代で莫大な財を成した名誉男爵。その事業内容は金融、海運をはじめとして実に手広い。やり手の実業家と言える)


眼前で展開される異様な光景。ただの平民の実業家であれば、どれほど莫大な富を積んだとて、急場に用意できるのは傭兵や冒険者の類までだろう。

しかし、遺跡の周囲を完全に制圧し、一糸乱れぬ動きで迅速に立ち働いているあの兵たちは、どう見ても厳しい訓練を受けた正規の部隊だ。


(しかし、ノルドレインの聖騎士を借り受けるとは一体どういう繋がりだ?)


彼はレヴェリアを祖国に連れ帰ることを決めた際、身辺調査として彼女の出自や家族で在るブランシェール家のことを調べていた。

しかし悉く、巧妙な情報操作の壁に阻まれ、核心には辿り着けなかった。表向きの経歴は完璧に整えられているのに、ある一定の時期から過去の記録が不自然なほどに綺麗に拭い去られているのだ。

ちなみにノエルも同様の調査をし、同じ結果を得ている。


(一介の商人が、一国の皇子である俺の情報網を完全に欺き、これほど見事に痕跡を消し去れるはずがない。あの男、やはりただの平民上がりではないな……)


彼女を己の手中に収めるためには、ルシウスたち同級生だけでなく、この得体の知れない養父という最大の障壁をも越えなければならないらしい。

困難極まる道のり。しかし、それで諦めるほど彼の思いは軽くはなかった。

ディートリッヒは氷のように冷たい瞳の奥に底知れぬ執着の炎を燻(くすぶ)らせ、和やかに笑い合う親子の姿をただ静かに見据え続けていた。

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