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第12話:頑丈なヒロイン、メインタンクに就任する

キラリラリンッ!(強力な魔法を使う私)


「おおっなんだあの男爵令嬢はっ!すごい、すごすぎる!!」

「レヴェリア嬢、やるではないですか」

「えへへっそうでもないですよぉ~!」


しかし、強力な魔物の反撃が!


「きゃああっ!せっかく強大な魔法を使っていたのに、突然背後から魔物がぁっ!!」

「ーー任せろ」


シュババッ。

フェリクスの放った強力な風魔法が私を襲っていた魔物を仕留める。


「ありがとう!……きゃっ!」


ふわっ、と突然身体が浮かんだ。


「男爵令嬢がそんなに魔力使ってたら、魔力切れになっちゃうよ。おとなしく休んでいて」


なんとノエルが私を抱きかかえたのだ!

さらに真剣な目で私を見つめるドミニク。


「Dクラスだというのにすばらしい魔力量ですね。私の新しい観察対象は、君だーー」


キラキラ……バザァッ!!!(満面の薔薇のスチル演出)


【すごいけどちゃんと守られる☆愛らしい男爵令嬢(仮名)】スチルゲットーー!!




***




「ちょっと裁縫士!フォレストウルフそっちにいったよ!ぼーっとしないで!」

「きゃっ!」

「大丈夫かエレイン……!レヴェリア、早くさっきの火炎魔法で敵を薙ぎ払うんだっ!」

「エレイン様には指一本触れさせません。さあやりますよ、レヴェリア嬢!」


(はっ!何!今のは夢!?現実じゃなかったというのーー!?)


現実逃避からレヴェリアを引き戻したのは、群れを成したフォレストウルフの容赦ない攻撃と、攻略対象たちの遠慮ない口撃であった。

ノエル、フェリクス、ドミニクと並んでエレインを守るように魔物の群れの前に立たされた彼女は、カンストさせた魔法能力を使って、フォレストウルフを黙々と駆逐していたのだった。


(ちょ、ちょっと待って。『ときめき☆この男爵令嬢、ただものじゃない大作戦』したら普通に戦力カウントされて、すっかり『悪役令嬢を守る愉快な下僕たち』の仲間入りしちゃってるじゃないの!?!?)


レヴェリアとその仲間たちが必死に魔法を使う間、エレインは透き通る声で「みなさま、どうかお怪我なさらないで……」と言いながら祈るような姿勢で佇んでいる。なんなら日傘も差している。

その姿はまさに強い騎士たちに守られるか弱き姫。

圧倒的なヒロインムーブである。


(しまった!!戦えるところなんて見せるんじゃなかった!売り言葉に買い言葉でうっかりカンスト魔法見せつけちゃったわ!!ヒロイン指数がむしろ下がっちゃってるんじゃないのこれ!?)


後悔後に絶たず。

どや顔で上級火炎魔法を披露したレヴェリアは満場一致で『エレイン親衛隊』の火力枠として採用されてしまったのだ。


「ふぅーっこれでこのあたりの魔物は大体討伐できたな!」

「中級クラスの魔物しかいなかったし、余裕だったね」

「討伐時間も見事なものです」


汗を拭いて一息つく親衛隊たち。


「みなさま、素敵でしたわ」


そこに、キラキラと光を背負ったエレインが駆け寄った。

「ふ、当然だよ……」「お前の前で半端な真似できないからな」とあからさまにデレる男たち。

一番働いたはずなのに放置されるレヴェリア。


(この扱いの差はなんなのよぉぉぉーー!!!)


メラメラメラッ……!


彼女の闘志に火が付いた。


そう、彼女はれっきとした正ヒロイン。

普通にしていれば絶世の美少女であり、その肢体も極めて華奢。外見だけなら箸より重いものを持たない深窓の令嬢の風貌をしている、本来守られるべき存在なのだ。


(火力枠として扱われるなら、か弱さをアピールするしかない!万が一のダメージを負ってでも、身を呈してエレインを庇えば、男たちは血相を変えて私を抱き起こすはず!「レヴェリア、君ってやつは……っ!」って好感度が爆上がりして美麗スチル獲得間違いなしよ!!)


「グオオオオッ!!!」


その時、森の奥から討伐漏れの生き残りか、マウンテンゴリラのような上級魔獣が突如として現れ、エレインに向かって太い丸太を振り下ろそうとしたではないか。

フェリクスたちも対応が遅れる絶体絶命のピンチである。


「今よっ!!」


レヴェリアは驚異的な脚力でエレインの前に飛び出し、両手を広げて目をギュッと瞑った。


「エレイン様、危ないっ!か弱い私が盾になって守って見せるわーー!!」


(さあ来い!カンスト体力なら骨の一本くらいで済むはず!私の美しい散り際を見よ!!)


ドゴォォォォォンッ!!!!


凄まじい衝撃音が響き渡る。

しかし――レヴェリアの身体には一切の痛みがなかった。


恐る恐る目を開けると、レヴェリアの頭に直撃したはずの丸太が、彼女のカンストした無意識のオート防御魔法によって、まるで爪楊枝のように木端微塵に粉砕されていたのである。

魔獣は「ウホッ!?」と自分の手を見てドン引きしている。


(しまった、まさかオート防御魔法が発動しちゃうなんてっ!!)と心の中で地団太を踏むレヴェリア。

しかし、スチルへの執念が天元突破している彼女は、丸太を頭突きで粉砕した(ように見える)直後にもかかわらず、予定通りのか弱いヒロインの演技を強行した。


「うっ……ゴホッ……!エレイン様が……ご無事で……よかった……」


無傷でピンピンしているのに、わざとらしく胸を押さえてその場に倒れ込み、目を閉じるレヴェリア。


(さあ!フェリクス様!ノエル様!ドミニク様!私のこの痛ましい姿を抱き起しなさい!!)


しかし、彼女を待ち受けていたのは甘い声ではなく――


男たちの戦慄と熱狂の声だった。


「す、すげえええっ!!オーガゴリラのフルスイングを、ノーガードの頭で受け止めて無傷だと!?」

「信じられません……!あれほどの火力に加え、装甲まで規格外とは!」

「裁縫士、君は最高だ!これでエレインの護衛陣形は完璧になった!」


男たちが歓喜の声を上げる中、エレインもレヴェリアに駆け寄り、その両手をガシッと握った。


「レヴェリアさん、あなたって本当に頼りになるのね!これからは私の『最強の盾(メインタンク)』として、一番前で戦ってくださる?」

「…………えっ?」


目を開けたレヴェリアの目の前には、彼女の頑丈さを称賛する男たちと、満面の笑みで彼女を最前線の盾に任命するエレインの姿があった。


(ヒロインが悪役令嬢のパーティーのメインタンクに任命された―――!?!?どうしてこうなるのよォォォォ!!!)


圧倒的なヒロインとしての敗北を味わったレヴェリアは。

今日も肩から崩れ落ち、地面をたたいて悔しがるのであった。

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