第11話:ヒロインVS悪役令嬢、ついに開幕--!!
「ふふっ、くじ引きでも一緒だなんてやっぱり君と僕は運命の赤い糸で結ばれてるねっ!」
「いざとなったら俺が守ってやるから安心しろよ!お前は応援だけしてくれれば良いからな!」
「お任せください。私と一緒になったからにはトップクラスの成績をお約束しますよ」
レヴェリアの目の前では、世にも恐ろしい運試し結果が繰り広げられていた。
全クラス合同魔法実技演習、B班、レヴェリア、ノエル、フェリクス、ドミニク、そしてーーエレイン。
「まぁ、優秀なみなさまとご一緒出来て嬉しくってよ♡」
(な、なんという結果だというの……!途中まで願ったり叶ったりの組み分けだったのに最後の最後でひっくり返ったわ!っていうか今の全部、本来はヒロインに向けて言うセリフじゃないっ!!)
「なんだ、君もいたんだ。Dクラスの君にはちょっと荷が重い編成かもね。けどあの手先の器用さがあれば、多分付いて来るくらいは出来るよ」
「おっレヴェリア!お前がいるとは心強いぜ!ただ、今日は物理禁止だからなー。まぁ無理せず逃げ足の速さ活かして生き残れよっ!」
「おや、あなたも同じチームですか。魔力が低いとされるDクラスでは、我々のルートはちょっと厳しいかもしれません。ただあなたの知恵があればきっと打開できるはずなので、足を引っ張らないよう頑張ってください」
「くっ!あんたたち、好き勝手言ってくれるじゃない!覚えておきなさいっ!『ときめき☆この男爵令嬢、ただものじゃない大作戦』で絶対スチル発生させてやるんだから!!」
しかし彼らの言い分はもっともであった。
この世界において魔力を持って生まれる者は限られており、さらに強い魔力を持っているのは主に王族や高位貴族にほとんど限られているからだ。
普通のDクラスの生徒は気持ち程度の魔力しか持ち合わせていないのがこの世界の理だ。
だからこそ孤児であったレヴェリアは裕福な男爵家の養子に選ばれたのだし、貴族学園にも入学することができたのだ。
好き勝手にものを言ってくる3人に噛みつくように言い返すヒロインだが、スチル発生以前に土台からしておかしいことに、未だ彼女は気づいていない。
そこへ、ふわりと芳醇で甘い、高級な薔薇の香水が漂ってきた。
「うふふ、この前階段から落ちてきた可愛い仔羊さんね」
レヴェリアは思わず勢いよく振り向いた。
そこには長く美しい黒髪を靡かせた、高貴な美女が立っていた。
(悪役令嬢エレインーー!)
彼女はエレインの意味深な笑みに冷や汗をかきながら、両手をぎゅっと握りしめた。
(私の見立て(前世で読んだ小説のお決まりの展開)によると、このエレインは私と同じ前世記憶あり……!
だからこそ性格が変わってエタラバはオープニングから原作と違う展開となり、魔力測定式では魔力制御魔石を使ってレヴェリアのクラス昇格チャンスを奪ったのよ!!
そしてきっとそれだけじゃない……!
ルシウスの『優秀な兄と比較されることによる第二王子コンプレックス』も、
ノエルの『男なのにと親に言われ封印していたファッションへの憧れのコンプレックス』も、
フェリクスの『優しすぎるがゆえに騎士としての適性に悩んでいたコンプレックス』も、
ドミニクの『賢すぎて大人から畏怖の目で見られていたコンプレックス』もとっくに攻略しているんだわ……!
そうでなければ彼らの今の性格と、エレインへの異様な愛情に説明がつかないもの!!)
レヴェリアはそこまで思案すると、ごくりと生唾を飲み込んだ。
(……これが転生記憶付き悪役令嬢(本物)!!彼女は原作通りだと最悪追放エンドになってしまうから多少の改変は理解できるとはいえ、逆ハー状態はさすがにやりすぎじゃない!?正ヒロインとして負けてられないわ……!エタラバの神シナリオを守れるのは私だけなんだから――!!)
彼女は覚悟を決めてエレインへ向き合った。
「はじめましてエレイン様、レヴェリア・ブランシェールと申します。本日はよろしくお願いいたします」
絶対に負けない。今日は私が全員の好感度を掻っ攫ってスチルを発生させてやるんだから……!!という強い意志を込めて、レヴェリアはエレインへ完璧なカーテシーを見せた。
その姿を見たエレインは扇で口元を隠しながら、目を細めた。
「うふふ、よろしくね。【愛らしいヒロイン】ちゃん?Aクラスの私たちについてこられるかしら?」
その決定的な言葉に、レヴェリアは顔を跳ね上げた。
それはまさに、エレインからの前世記憶持ちであることの自己申告であり、宣戦布告であった。
原作エタラバにおけるこの序盤の合同魔法実技演習は本来であればヒロインの魔法能力はまだ低く、攻略対象たちに助けてもらう愛らしいヒロインイベントとして設定されている。
そしてそこで本来手に入るスチルこそ、【みんなの宝物☆愛らしいヒロインの特等席】なのだーー。
しかし、攻略対象たちの矢印が完全にエレインに向いている今、ヒロインを助けてくれるものはおらず、付いていくのも難しい。
客観的に見てレヴェリアは詰んでいる。
(そう、あなたもそのつもりなのね……!)
レヴェリアはギラリと目を光らせるとさっと手を差し出した。
「ふふふ、大丈夫でしてよ。なんなら根性でカンストさせてますんで」
「まぁ。本当かしら……?その魔法、ぜひ見てみたいものだわ」
エレインはそう言いながらも、白魚のような手でレヴェリアの手を握り返した。
(今に見てなさい、目にもの見せてやるんだからっ!!)
一見すると絶世の美少女と、儚げな美女がほほ笑みながら手を握り合う美しき風景。
しかしその実、二人の間には見えない火花がバチバチと散っていたのだった。




