人は殺さないで!誰も傷つけないで!傷付かないで!
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「生まれてくる子には何一つ嫌なことなく育ってほしい」
「名前にはこんな素晴らしい意味があるの」
「生まれてくる日も縁起がいい日に生まれてきてほしいから、もし今日陣痛が来ても明日まで我慢しちゃうかも」
「あぁ…なんてかわいいんだろう、天使なんだろう」
「好きよ!愛してる!」
「え!もうハイハイできるの!すごいねえ!かしこいねえ!」
「え!もう言葉をおぼえたの!すごいねえ!かしこいねえ!」
「今日楽しかった?」
「明日は楽しみ?」
「良いことあったの?」
「よかったねえ!」
「ふふ、ママもあなたのこと大好きよ!」
「学校気を付けていってらっしゃい!」
「変な人についていってはダメよ!」
「おかえりなさい」
「どうしたのの?何か嫌な事でもあった?」
「大丈夫気にしないの!ママはあなたの味方よ!」
「元気出して…大丈夫だから」
「おかえりなさい!ふふ、よかったじゃない!よかった、よかった…」
「ぇ?ごめんなさい…なんで泣いてるのかしら?」
「おはよう!」
「いってらっしゃい!」
「おかえりなさい!ご飯できてるわよ!」
「ごはんさめるわよ!」
「おやすみなさい」
「ぇ…いつの間に私の背を…」
「ぇ…これが声変わり…」
「大丈夫よ!あなたが行きたい高校に行きなさい!」
「あなたが興味のあること、好きなことを学びなさい!」
「好きなことがあるって素晴らしいことよ!」
「ぇ…好きな人ができたの?」
「ぇ…もう付き合ってるの?え!」
「ぃ…家に連れてきてもいいのよ…一緒に食事でも…」
「こ…こんにちわ~」
「かわいいじゃ子じゃないの~」
「よかったよかった~ほらほら~もっと食べて~」
「大人になるってあっという間ね~」
「いつの間にか私も年を取ってる…」
「あなたが何を学びたいか、それがわかっているならその大学へ進みなさい」
「お金のことは気にしなくていいの。パパも私も働けばいいだけなんだから」
「何も気にしなくていいの!子供が親に気を使う必要はないわ」
「ありがとう、なんて…何年ぶりに聞いたかしら…」
「ぃ、ぃやだ…泣いてなんかないわよ!」
「ぱ、パートに行きたくなくて…泣いてるだけよ。たく」
「ご…合格?……ぇ、合格!合格!合格だって!合格…合格…っ…ぅん、よかった、よかったぁ…」
「ぇ…ぇぇ…まぁ…そうよね。遠いもんね…ひ、一人で暮らせるの?」
「料理できる?洗濯できる?お米炊ける?包丁持つときとかは…」
「う、うるさくないわよ!」
「さ、さみしくないわよ!」
「今日で最後なのね…帰ってきたくなったら帰ってきなさい。帰ってくるのに理由なんていらないからね…」
「ぃ、今までうるさく言ってごめんね」
「はぁ…永遠にずっと、一緒にいられればいいのに…」
「ふふ…重たいね…いかんね…」
「そうね…私達が足かせになっちゃ、いけないわ、ね…」
「ぇ…なんで戦争してるの?」
「あの子の大学とかは大丈夫なの?」
「なんで?何をしてるの?何を言ってるの?なんでニュースで噓を言うの?」
「何してるの?何人殺してるの?ぇ…本当にうちの国の人たちなの?」
「どうにかできないの?助けられないの?どうすることもできないの?」
「ぇ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「なんであなたが行かなきゃいけないの?なんで?なんで?」
「ダメ!行ってはダメ!人を殺してはいけない!人を傷つけてはいけない!」
「あなた!虫も殺せないじゃない!そんなあなたがなんで行くの?」
「人の気持ちを考えることができるのに!ご老人に席を譲ることができるのに!拾ったお金をそのまま交番に届けるあなたが!小さな子供に好かれるあなたが!動物に好かれるあなたが!全ての人に好かれるあなたが!思いやりのあるあなたが!」
「なんで行かなきゃいけないの!」
「行くくらいなら腕を切り落としなさい!」
「それで行かなくてすむなら!お願い!お願いだから!」
「人は殺さないで!誰も傷つけないで!傷付かないで!」
「経験?」
「そんな経験しなくていい!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「わかってる…しょうがないことなの…行かなければいけないの…」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「しょうがないことなわけないじゃない…行かなければいけない事じゃないじゃない…自国の偉い人が勝手にやって、あなたが戦えばいいじゃない。なにもされてないのに怒り狂った演技をして、歴史に名を残そうと、自分のために、昔から抱いていた勝手で醜い野心を実現するために、妥協という言葉を覚えず醜く上ばかりを見て、満たされているのに満たされず、いつまでも怒りを抱え、満足を負けだと思い、人にそれをっ強要し!意のままに操り!人を殺させ!」
「なんと醜いことを!なんと忌まわしいことを!」
「………・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ぇ…痩せた?痩せてないわよ!ばかねぇ…さ!今日はたくさんおいしいものを食べるわよ!おいしいもの食べて…たべて…ぅん…ね…」
「ねぇ…む、無理なのはわかってるんだけど…やっぱり行かなければいけないの?行きたくないなら行かなくてもいいんじゃない?ぃ、ぃ、今、このナイフで傷付けたら行けなくならない?フォークで、す、少し痛いけど、っさ、刺したら、行かなくならない?・・・・・・な、何言ってんだかねぇ…私…わ、私は…私はね…私……っ……」
「ごめん、っ、ごめんなさい!なんで涙が…嫌で、嫌で嫌で嫌で、あなたに行ってほしくない。傷付いてほしくない。何一つ嫌なことなく生きてほしい。嫌な経験をしてほしくない。痛い思いをしてほしくない。嫌な光景を見てほしくない。憎しみの連鎖に苛まれている人たちの中に入ってほしくない。空を見てニヤニヤして、おいしいものを「おいしい!」と言いながら少しリズムに乗って食べて、友達との話を、彼女との話を、その時の光景を思い浮かべながら楽しそうに話してくれた。そんなあなたでいてほしい!」
「本当はどこにも行かないでほしい!一人暮らしもしてほしくなかった!寂しいから!大好きだから!愛おしいから!」
「何も悪いことをしてないのに…なんであなたが地獄に向かうの?」
「そんなことのために生まれてきたんじゃない!そんなことのために生んだんじゃない!」
「あなたも!みんなも!全員!幸せになるために生まれてきたの!」
「だから…だから…だから………」




