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「傷付けられたから傷付けた」 「殴られたから殴った」

      〇


 僕はあれから8人の敵を殺した。


 戦略はほとんど同じ。


 毎回どこから入ってくるのかわからない情報を信じ、移動して敵を待ち伏せし、来た敵の車を一本道へと誘い出し、全方位を覆い蜂の巣にする。


 軍の車から焦って出てくる人間を、車の下に足だけ見えてる人間を、こちらにすべてをさらしているとも知らず車を盾にしている人間を、撃った。


 ダン!ダダダダ!


 その音と共に、狙いを定めていた個所からうっすらと血しぶきのようなものが見え、眉間にしわを寄せ苦しそうな顔をした人間が倒れた。隣の人間も、その隣の人間も倒れた。その倒れた人間をまた撃った。


今度は弾がなくなるまで、砂埃が舞って何も見えないのに撃った。


「………」


 おそらく死んだ人間を、撃った。無抵抗の人間を撃った。同じ言葉をしゃべる人間を撃った。見た目が何も変わらない人間を撃った。元気な人間を撃った。目が怯えた人間を、体を恐怖で震わせた人間を撃った。撃った撃った撃った。親がいる人間を、友達がいる人間を、死んだら涙を流す人がたくさんいる人間を…撃った。今、倒れている彼には親がいて、もしかしたら兄弟が奥さんが子供がいるかもしれない。帰りを手を拝んで待っている人間がいるかもしれない。彼は優しい人間だったのかもしれない。電車ではご老人に席を譲ることのできる好青年だったかもしれない。好きなことがあったかもしれない。好きな人がいたかもしれない。


「…なぃ…なぃ…なぃ…」 


 そんな人間を、殺していい、はずがない


 そんな人間を、僕は今、殺、している


 間違えているのに、その間違えを正すことができない。正解をわかっているのに、この間違っている現状の中ではそれは逆に間違えであって、間違えが正しいこの現状では、何も思わないこと、何も考えないこと、人を殺すこと…そんな意味の分からないことが正解のこの現状のなかで、一つ一つ間違った正解を、大きな、とても大きな間違いを犯しながら、歩んでいかなければならない。


「ぁ…はぁ…はぁ…ぁ…ぁぁ…」


 動いてもいないのに走った後のように息が上がっていた。


        〇


 ある日、あんなに軽くなっていた引き金が、また重くなった。


「っ…ぅっ…っぅ…っつ…」ダッ……………ダダッ…


 あぁ…まずい…どうやら僕は、考えすぎてしまったようだ…


 理性を失っていたのに、また理性を取り戻してしまったようだ…


「おい!」


 後ろから上官の声が聞こえる。


「撃て!」「はい!」


 わかっている…わかっている。撃たなければいけない。人を殺さなければいけない。相手は悪魔で僕らを、仲間をとんでもない数殺してきた。何人殺してきた。何百?何千?何万?


 ダダダダ!


 照準の中の人間から赤い血しぶきが舞う。


「はあ…はは…っし…」


 市民も殺された。許してはいけない。何の罪もない人間を殺して…ぼ、僕は、僕らは、あの人たちを守るために戦っているんだ。戦っているんだ。戦う、戦う。皆を守るために戦う。仲間を守るために戦う。自分の家族を、親を友人を親友を恋人を守るために戦う。その為に銃を持って、襲ってくる敵を、悪魔を殺す。悪魔は僕たちの町にミサイルを撃った。悪魔がその映像を見て笑っている動画を見た。悪魔は僕らの仲間を殺して、死体を切り刻んで笑っていた。アートのようにして笑っていた。僕たちが守らなければ占領されてしまう。殺らなきゃ殺られる。


 ダダダダダダダダ!


「…はあ、はあ…」


 僕らも、悪魔を倒した。何百、何千!何万!僕らは一撃で何十人と倒すミサイルを撃ち込み、ドローンで爆弾を落とした。他の国から供給される武器は僕らに勝利の糸口を開拓させた。僕らの黒く濁った目を、悩みを、迷いを粉砕させ、細く長くどこにつなげっているのかわからない糸に僕らはしがみついた。


僕らは悪魔を殺した。ドローンのカメラで、爆弾で死んでいく悪魔の映像を見て笑った。捕らえた悪魔の足を撃ち、転げまわる姿を見て笑った。悪魔が僕らを拷問している映像を見た。僕らも悪魔をとらえ手の指を、足の指を一本ずつ切断した。さすがに誰も笑っていなかったが(ざまあみろ)と思っていた。命乞いをする悪魔に逃げるチャンスを与え、醜く走る後ろ姿を撃った。その死体の耳に花を差し込み皆が笑った。そういう動画は僕らの隊ではなかったが、仲間のスマホに毎日のように送られてきていた。


 ダダダダダダダダだっだだだっダダダダダダだ


「ぼくらも…」


 同じことを


「している…」


 だっだあだっだdっだだだっだdddっだっだだ


「あいてを悪魔とののしれば殺すりゆうになった」


「あいての嫌なところをたくさんみて憎しみをつのらせた」


「あいてを悪魔とおもうことでぼくらのこういは正当化された」


「あいての悪口をいうことでなかまの士気がたかまり団結力があがった」


「ひとり殺すともうひとり殺せるようになった」


「ひとり殺すとぼくをみるなかまのめが優しくなった」


「仲間としてうけいれられ居心地がよくなった」


「憎しみはえいえんに溜めることができた」


「スマホをみるだけで外にでるだけで憎しみはむげんのようにころがっていた」


「破壊されたたてもの、よこたわっている死体、むげんにでてくる悲惨なえいぞう」


「それらの憎しみをこめて引き金をひいた」


 Ddddddddddddddddddddddddddd


「だから」


 同じことをした


Ddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddddd

「敵を悪魔と呼んで同じことを、した」


「悪魔、と言いながら、悪魔と同じ、ことをした」


「傷付けられたから傷付けた」


「殴られたから殴った」


 僕らは大人になっても小学生のたわごとのようなことを…


ddddd

d・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 なにしてるんだろう?


 なにしてたんだろう?


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 目の前の砂埃が消えていく。


「ぅ…ぇ……………………ぇ」


 ぼくのめのまえにはたくさんの死体があった。


「ぁぁ…ぁあ…あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

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