ふふ やった… これで死ねる。
〇
ぼくのめのまえにはたくさんの死体があった。
短い銃ならすぐにあたまにつきつけられるけど
ながいのは
わからない
重たくて
銃口の所に頭を置いて寝そべった
ゆびをのばして
「おい!やめろ!」
ドが!
ぼくの頭はボールのようにけりとばされた。
ボール
ボール
ボール
ボール
「はあ、はあは、はははh、hhhっはあっはあっはhっはっははあhっはhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh」
転げまわる
ボールのように
仲間はそれを唾をのんでみている
〇
Dddddddddddddddddddddddddddddddd
銃声が外で響いている。
ぼくは首の皮をつまみながらその音を聞いている。
両手と両足に手錠をされて動きの制限に限界があった。
「ぐ!ぐぐっぐぐぐg」
自分で自分の首を絞めてみた。
怖くて途中でやめてしまった。
「くそ…ぅ……・・・・ぅ…うぅ・・・・・・う・・・・・」
ごっ!ゴ!ゴ!ゴ!
頭を床に打つとなぜか少し気が晴れた。
少し痛いけどこれで死ねるなら、いいかと思った。
「この馬鹿が!」
床に打ち付ける音を聞きつけて上官が入ってきて、ボコボコにされた。
そんなに殴るんならそのまま殺してくれないかと思った。
たくさん殺してるんだから殺せるだろう。とおもった。
柱に縛り付けられて首も固定された。
毎日上をみたり下をみたりした。
動いているものをただ何となく見た。
皆の憐れみが伝わってきた。
その憐れみを右ほほをぴくぴくしながら見た。
喋らなくなった。喋れなくなった。
自分で自分がおかしくなっていることはきちんとわかっていた。
でもまわりにどうおもわれるかとか、どうでもよくて
どうおもわれても、見くだされても、バカにされても、心に何も思わなくて、ひびかなくて
おおむねの時間を寝て過ごした。
バカになってるなと思った。
自分バカになってると
でも、考えてはいけなかった。
相手のことを
殺してしまった人間のご両親を友達を恋人を奥さんをお子さんをおじいちゃんをおばあちゃんをお兄さんを弟をお姉さんを妹を
考えてしまうと耐え切れなくなって舌を噛み切りたくなる。
でもこのまえぼくみたいにおかしくなったやつが舌を噛み切ってたけど死ねなくて喋れなくなってるだけで「むごむご」血だらけで言ってたと思いとどまった。
たべないからやせほそった
元気という言葉から一番遠いところにいる気がした。
でも死ねなかったなぜか生きていた。
さっさと死ねと思っているのに罰なのかなんなのか生かされている。
死にたいから眠るのに目を覚ます。
乾いた唇の皮を噛むことすらめんどくさいと感じてしまう。
あぁ…早く死にたい。
早く死ねますように。
そう思いながらいつものように眠りについた。
〇
「なぁ、おい…起きろ、起きろ!」
上官に顎を持たれ顔をあげさせられる。
「ぅ…ぁ…す、すまない…申し訳ないが、もう、ここへはお前を置いておけない…時間切れだ。医務室に行かせてやりたいが、医務室は重傷の兵士でパンパンだ。家に帰してやりたいが…人が足りな過ぎてそうにもいかない…試してみたが駄目だった…すまない…」
そう言いながら上官はうなだれた。そして眉間にしわを寄らせて
「申し訳ないが、お前には前線へ行ってもらう…」
ふふ
やった…
これで死ねる。
〇
ある日学校へ行くとクラスメイト達が何やら騒いでいた。
「あいつ…死んだらしぃ…」
いじめの標的となっていた彼が、死んだ。
撲殺されたのか自殺してしまったのかは不明だった。
「………」
彼をいじめていた集団が大きな笑い声と共に教室に入ってくる。そして教壇の前で両手を手をついて立ち止まった。
「おい!なあ!なあ!聞け!」
「あいつ死んだけど、俺らのせいじゃないから!」
「勝手に自分ちで死んだだけだから!」
「これから~教師とか、色々来るかもしんないけど、なんも喋んな!」
「あいつは俺たちのなかまだったけど、急に死んじまった」
「なんで死んだのかはわかんねえけど、家でなにかあったらしい」
「俺らはよくあそんでたけど、あいつの死とはかんけいしてねえ!」
「あいつが死んだりゆうはわかんねえけど、あいつをおいこんだ奴がいるんだとしたらゆるさねえし、ゆるせねえ!」
「だから何を聞かれてもわからねえで通せ」
「わかったな。よくわからねえこと喋った奴は殺す。おわり」
そう言って笑いながらカバンを自分の席に投げ席に着いた。
そして教室には彼らの妙に響く笑い声だけが響いた。
その後たくさんの教師たちがクラスに入ってきて色々なことを聞かれたが、僕らは何も答えなかった。
何か知ってることを書いてくれとプリントを配られた。無記名だったが僕らは何も書けなかった。一挙手一投足を彼らに見られている気がしたから。
教師たちの隣には警察が何人かいて、死んでしまった彼のご両親もいた。二人とも目をはらしてこちらを睨んでいた。
この中に犯人がいる。
その犯人を、この中にいる全員が知っている。
僕らも、教師も、警察も、ご両親も、
この中で髪の色が妙に派手な、勇逸落ち着きのない彼らが犯人だ。
でも、その証拠を、誰も持っていない。
いじめられている人間を写真で、動画で納めるほどの残忍さは誰も持っていなくて
勇逸持ってる彼らの携帯からはそれらはすでに削除されていて
もうこの世になくて、この世になくて
証拠は、僕らの言葉とプリントへの記入。
見た、聞いた、していた。…と、思う…。
だけどそんな証拠は
してない、知らない、覚えてない、それは証拠にはならない、ふざけんな
そんな言葉で終わってしまう。
「皆がそう言ってるんだ!」
「だったらもっと核心をついた証拠を持ってこい!俺は皆にはめられた!」
彼らの携帯を没収して、削除された動画を復元させる方法は、誰にもない。
人権が、プライバシーが彼らにあって、それらを犯すことは許されない…
そんな言葉が彼らを守った。
あんなにひどいことをしても彼らはそういうものに守られた。
彼の無視を皆に命じ、彼を孤立させ、彼を3人で囲んで棒状の物で勢いよく鈍い音をさせながら叩いて、動画を撮って命令して、髪を燃やし、服を脱がし、彼を自殺に追い込み、疲弊した彼は自ら死を選んだ。
彼らはこの世の一番醜い手口で彼を殺した。
そんな彼らは法によって守られた。
逆に標的にされた彼は、法によって、教師によって、僕らによって、何も守られずに自殺した。
死んでようやく問題になって、人が動いた。
死んでようやく人が動いた。
死ななきゃ動かなかった。
殴られている彼に、手を差し伸べる者はいなかった。孤立した彼に、僕らは手を差し伸べなかった。首を絞められている彼を、僕らは見ないふりをした。僕は彼に言葉を掛けず、巻き込まれないよう遠巻きからただ眺めていた。
僕らは、人が死んでから動き出したんだ。
「なんてことをしていたんだろう…」




