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冗談じゃない!

       ●

 お前らはいいよな。毎日座ってればいいんだから。目的地に着くまで喋ってればいい。本を読んでればいい。スマホをいじっていればいい。ゲームをしていればいい。出された食事を食べ寝ていればいい。そしたらいつの間にか目的地について意外と楽しかっただの退屈だっただの空調がきつかっただの御託を並べていればいいんだから。


 こっちの身にもなれ。


 100人の命を預かりありえないほどの神経を使い気を使いそんなこともわからんのかというような質問に答え…愛想が悪ければクレームになり愛想がよければ忘れられ流される。


 向こうの100人のストレスを無くすため至れり尽くせりだがこちらはどうだ?こちらのストレスの緩和は何も計算されていない。必要最低限の睡眠の時間を確保すれば大丈夫だと思っている。


 冗談じゃない!


 寝れば全てが治るのか?寝れば全てが消えるのか?傲慢な人間の罵詈雑言に頭を下げ偏見だらけの人間に見下され自分の中のルールをたくさん持ってる人間から後で知らぬ間にクレームが入っている。


 寝る前に思い出し夢に出てきて起きた瞬間に思い出す。


 寝れば良いというこの流れ…寝ておけば寝させておけば良いというこの流れに不快感を感じる。死んでほしい。


       ●


 ある日ストレスが溜まり過ぎて自分が変なことを言い出した。


「この先は太陽の光が強く皆さんの目を悪くさせてしまうので目隠しをしてください」


 は?


 まず自分がそう思った。そしてそれと同時に「なんで!」「どうして?」「だったらサングラスとかでいいだろ!」と言う声が聞こえてきた。


「申し訳ございませんがお願いいたします」


 うるせえなばかと思いながら頭を下げた。


「…」


 結果誰も目隠しをしなかった。まぁそりゃそうだ…と思う反面言われた通りしろよ…と思った。


「はぁ…はは…あぁ…まぁ…」


 そうだ…だったらここにいる全員に一度でもいいから目隠しをさせてみようという気持ちがなぜか芽生えた。


      ●


 答えが明確でない状態での批判の声というのはどうにも皆の耳を傾ける。その声がでかければでかいほどその他大勢の人間は否定的になる。そうすると批判をしている人間に権力が乗る。そして自信をつけた人間が大胆にこちらにその意見を言いに来る。


 あぁ…このままじゃ負けるなぁ…と思って夜に主犯格の人間とその取り巻きを降ろした。全員降ろすのはあれなんで主にうるさい10人を降ろした。到着したと嘘をつき荷物を渡しそのまま走り去った。


 どうでもいいと思った。確実にクビになるがどうでもいい。次の就職先などどうでもいい。どうでもいいどうでもいい。働くことなどどうでもいい。


 なんだか自分の頭から脳みそがなくなったような理性がなくなったようなそんな感じがした。



 10人がいなくなると皆恐怖を感じ目隠しをするようになった。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 そして時が経つとまた皆がしなくなった。


 腹が立ったので奥の手を使った。


 最初から何も疑っていなかった人間を呼び「目が痛い」と言わせ皆に信憑性を持たせた。


       ●


 ようやく概ねの人間が目隠しをした。満足だった。なんだか勝利したような気分になり心がおどった。


「結果が出てんだよ!」


 そしたら乗客同士が騒ぎ出した。何やってんだバカと思いながら見ると今度は目隠しをするようになった多数派が少数派に詰め寄っていた。バカだなぁ何やってんだこいつらと思いながら聞いていると目隠しをしない人間が全員降りた。

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