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バカじゃないふりをして待った

       〇

「おめでとうございます!支持率78%です!」


「それでは中途半端だから発表の時は80%と発表してくれ」


「ぇ…」


「ん?」


「かしこまりました!」


       〇


「彼は私を辞職に追い込もうと裏で動いている…」


「…」


「邪魔だ…とても…」


「…」


 ただそう言っただけなのに次の週に彼の葬儀に私は並んでいた。


 それから私は何度も何度も知っている人間の死体に手を合わせた。


 下を見虚空を見つめることで周りは勝手に人情のある人間だと株を上げた。


 インタビューでは「悲しい」と言っておけば支持率も勝手に上がった。


 大統領に就任したての頃は全てのことを悪く書かれた。


 だが10年もそこに居座れば何もしていないのに称賛を浴び意味不明な熱心な支持者が勝手に支持者を増やした。


 演説の時は有能な人間が書いた有能な文章を大きな声で読み上げ市民はそれを神を見上げるような顔で見上げていた。


 支持率が20%が30%になり30%が40%に変わり始めたころ、突然様々な人間が手のひらを返してきた。


 突然大きな声で称賛してきたのである。


 そしてその称賛と共に批判は減り、様々なことがスムーズにいくようになった。


 前は批判を受けた政策を言葉を変えて今言うとなぜか称賛された。


 過去に言った発言がなぜか庶民の間で称賛を浴び1冊の本になった。



 おそらく見慣れたのだ。


       〇


 見慣れた人間が辞め見慣れぬ人間がその地位を譲り受けた。


 見慣れぬ人間がこの国について何かを言っている。


 ふん…お前に何がわかる。


 やはり前の人間の方がよかった。


 まだましだった。


 やはりほかの人間もそうみたいだ。


 自分の周りもあれはどうかと言っている。


 テレビでも政策の意味が分からないと言っている。


 他の議員達から大きな声を浴びせられている。



 笑 笑い (笑)


 大きく強いのにけなされている。


 ぼくらが手出しできない人間が攻撃されて弱っている。


 痛そうな顔がテレビを通して伝わってくる。


 痛そうな傷にテレビのキャスターが塩を塗る。


 ぼくらは塩になって痛みを更に強くする。


 その痛みは効いているのかテレビの前に座り確認する。


 笑 笑い (笑)


 クマが濃くなってる気がする。


 顔が疲れてる。やつれてる。


 大きくて強いはずなのに疲れてる、弱ってる。


 効いた!聞いた?聴いた!


 僕らの声を聞いて効いた!


 笑 笑い (笑)


     〇


 見慣れぬ人間がまた新たに発案している。


 また批判されている。


 周りの議員から大きな声を浴びせられ、テレビでは前代未聞という言葉が悪い意味で使われている。


 自分もとりあえず発案したものの意味や意図がわからないので批判する。


 ぼくらはテレビの前に座り確認する。


「あら、はは…」


 疲れた顔はそのまま…クマもそのまま…


 効いているのか聞いていないのか、わからない…


 はは…まぁ、そんなもんよね…


「…」


 大きく強いものはあれ以来、同じ転び方をしなかった。


 傷付いた姿をこちらに見せず、いつも少し疲れた顔と大きなクマで皆に認知されていった。


 大きく強いものは、よくわからない政策を難しい言葉を織り交ぜて大きな声で喋った。


 その政策はやはり的を射てないらしく、周りから批判の声がやむことはなかった。


 その批判の声を聞きつけテレビでは誇張して批判を強めた。


 テレビでわかりやすくその政策の意味などを説明していたがそれでもよくわからなかった。


 とんでもない金額と、新たな名詞、知ってはいるが意味を知っているかは定かでない言葉がたくさん出てきて、ぼくらは思考を辞め、要約して着色されて出される文字を、少し間をおいて「要は」「結果的に」「こうなります」という言葉を、バカじゃないふりをして待った。

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