↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/106

第百一話 見ればわかる

僕たちを乗せた馬車は軽やかに進み、目的の愛の戦士さんがいる村まで2日で到着した。

2日目のお昼前には着いていたので正確には1.5日である。

速い。のんびり行くんじゃなかったのだろうか。


「のんびりって言ってもあんまりゆっくり走らせるとかえって馬たちのストレスになるからな」


なるほど。生き物相手だと、やっぱり自動車とか機械とは違うなぁ。

僕も御者さんとか、乗馬とかしてみたいけどやっぱり難しそうだな。


「この馬たちは凄く頭がいいし、ナオっちのこと大好きだから、乗馬なら馬たちの方から合わせてくれて、すぐにある程度は乗れるようになると思うよ」

「でも、御者ってなると素直に言っちまうけど、ナオがヘタクソな指示しても馬が無理してでも従っちまいそうなんだよな」


それは良くないね。馬たちに無理をさせたくない。


「俺っちが御者の時に隣で一緒にやるかい? 少しずつ覚えていけばいいさ」

「あ、是非お願いします!」

「ずるい、ランス! ナオ様を独り占めする気でしょ!?」


それなりに狭い御者席に二人で並んで座るなら、相手はランスさんしかいない。

他の皆さんだと『生命』が発動してしまう。


「ロロは絶対に離れんにゃ」


なお、呪われた装備は外せない模様。

オレ、御者を覚えたらお膝に天使を載せてドライブするんだ……




そんなこんなで到着した愛の戦士さんの村。ラブビレッジ愛の村。

僕らはまず姐御さんの案内でアルトさんの家でもある牧場に向かう。

大きな村じゃないから馬車三台が気兼ねなく停まっていられる場所は限られてくるのだ。



「あれ、いらっしゃい、シーマさん。何か忘れものでもあっ…… うぇぇぇぇ!? なにがあったのぉ!?」

「ウッシッシ、噂は本当だったってワケだ。見違えただろ!」


出迎えてくれた女の子が変貌ぶりに気づき、驚いて大声を上げたのをとても嬉しそうに受け入れる姐御さん。

とても楽しそう。

あの女の子が噂のヒロイン、アルトさんかな?



「王都に戻る途中で知り合った奴らがベイガに会いたいって言うから案内してきたんだ」


姐御さんがこちらに話を振ってきたので軽く頭を下げてご挨拶。


「え!? エルフが3人も!? 残りもすっごい綺麗な人ばっかり!? もしかしてお姫様とか!? なになに、どうなってるのぉ!?」

「落ち着け、アルト。こいつらはずば抜けて綺麗なだけで普通の連中だ。一人以外」


あ、やっぱりこの子がアルトさんなのか。賑やかな子だなぁ。



「すみません、取り乱しちゃって。アルトです。何もない小さな村ですが、歓迎します」


少し落ち着いてから、改めてペコリと頭を下げご挨拶してくれるアルトさん。

なるほど、しっかりものでもある。


「そ、それで…… 皆さんはベイガを…… 迎えに来られたんですか……?」


ん? 迎えに? 何のこと?

恐る恐る、僕らの顔色をうかがうようにアルトさんが聞いてくる。…… なんか怖がられてる?



「あ、わかった。ごめんなさい、ナオ様。パパのせいだわ」


ビンスさんのせい? なにが?

疑問に思っているとリンスさんとランスさんが説明してくれた。


何十年かに一度くらいの割合で『与えられしもの』の噂が王都に届くことがあるらしい。

ビンスさんにとって『与えられしもの』とは大樹の使徒、つまり信仰する神様の使いのことだから、その手の噂が聞こえると使いを出して王都に招く。

そしてその招かれた噂の相手はこれまでのところ、全て『ものすごく才能がある人』か『与えられしものを騙る詐欺師』のどちらかだったそうだ。

『才能がある人』だった場合はそのままお城とかに仕えたり、ビンスさんの元で更にその才を磨いたりすることになる。

『詐欺師』の場合は噂になるくらいだから大抵悪どいことをしてきてるし、その場合はビンスさんにとっては神への冒涜に等しい行為だ。厳しい処罰を受けることになる。

結果として、どちらの場合でも王都に招かれた人はほとんど村には戻ってこないのだ。


「あれ、僕のときはビンスさんが直接来てましたよね?」

「ナオ君の場合は知人であるベトンの会頭から直接連絡を受けたからだろうね。即日、王都を飛び出たようだし」


ミリアさんの説明に納得。

あのベータ会頭から直接聞いた話なら、信頼性は噂話とは比べ物にならないよね。

王都からブキシトンまでビンスさんの全速力なら半日くらいって話だし。

まさに飛んできたんだろう。


「…… 僕のとき?」

「へへ、安心しなアルト。こいつらは別にお前の王子様を連れ去りに来たんじゃないよ。なんと、このナオも与えられしものなんだ! 同じ与えられしもの同士、話をしてみたいっていうから連れてきただけさ」

「べ、別に私の王子様なんかじゃ!! ……って、えぇー!! この子も与えられしものなんですか!?」


頬を真っ赤に染めて慌てたように否定するアルトさん。

王道ツンデレいただきました! ありがとうございます!


「そうさ、もう一つ噂になってた『王都の凄腕の治癒師』って話、あったろ? あれがこのナオなのさ。千切れた腕でも生えるってのもマジらしいぜ」

「えぇ~…… 本当ですか? 与えられしものなんて神話みたいな存在が、こんな近くに二人も?」

「信じられねぇのもわかる! でも見ろよ、アタイのこの髪! 肌! これもナオのオチカラってやつなんだぜ!」


そこから姐御さんが僕らのことをアルトさんに説明してくれた。隙あらばお肌の自慢を繰り広げてたけど。よほど気に入ってくれたらしいな、うむうむ。




「なんで治癒師様がお肌や髪を綺麗にできるんですか?」

「それ、アタイも聞いたんだけどよ。ナオの力で一番健康な状態にする、ってのが結果的に綺麗になるってことらしい」



いままで何度も聞いたことのあるやり取りをしているお二人に案内されるまま、愛の戦士さんの家に向かう。


「なぁなぁ、ナオっち。あの娘くらいならもしナオっちが触れたらどっちになる? 『生命』? 『太陽』?」

「うーん、『生命』でしょうね」

「ふーん、ナオっちの設定年齢以下なら『太陽』ってわけでもないのか」


道中、ランスさんがこっそり耳打ちしてきた。

14歳、一つ年下ならばっちり僕の『生命』の射程範囲内だ。

どこに分かれ目があるのか、は皆はまだ気づいていない。

唯一知っているミリアさんも黙っていてくれている。ありがたい。好き。





「ベイガー、ちょっと出てきなさーい!」


目的地らしき鍛冶屋さんの店先でアルトさんが叫ぶ。


「なんだよ! 俺は疲れてるんだ!」


店の奥から返事が聞こえてきた。


「アンタにお客様! めちゃめちゃ美人のお姉さま達よ!! 会わなきゃ絶対後悔するよ!」

「嘘つけ! この村にそんな美人はいねぇ! そんな見え透いた罠には引っかからねぇぞ!」


「おい、ベイガ! いいから早く出てこい!」

「ゲッ!? シーマ姉!? …… ほらみろ、美人のお姉さんじゃないじゃんか!!」


「ゲッ、っとはなんだ! 今すぐに出てくれば一発で許してやる!」

「一発は確定なんじゃん! 絶対出ていかねぇ!!」




…… 仲良しさんだな。


すったもんだの押し問答の末、根負けして渋々出てきた愛の戦士ことベイガさん。


「まったく、なんだってんだよ。俺は朝からしごかれて疲れてるのに……」



現れたのは、いかにもごく普通の村の少年といった男の子。

14歳ってことだから、僕より一つ年下か。

…… 僕より背は高いみたいだけど。むう。


「ランス」

「あぁ、間違いなさそうだな」

「使徒様……」


ベイガさんを見て、エルフ三人衆が反応している。

その理由は僕にもわかる。

彼は明らかに他の人と違う気配を放っている。

個人差なんてレベルじゃない。

生き物として、種族として、違うステージにいる。そんな印象だ。

なるほど、僕もエルフの方にはこう見えているのか。こりゃ、誤魔化せないな。

見たらわかる、ってここまでのことだとは思ってなかったよ。



「急に来てごめんね。貴方がベイガ君ね」


リンスさんが優しく話しかける。


「エ、エルフのお姉さん!? なんで!?」

「シーマさんから貴方のことを教えてもらって、どうしても会いたくなっちゃったの。迷惑だったかな?」

「とんでもないです! オレもお会いできて嬉しいッス!」


流石、リンスさん、あざとい。

男心をよく理解している。美人エルフのお姉さんにあんな風に言われて邪険にできる男がいようか。いや、いまい。


「村を魔物の脅威から救ったご活躍、お聞きしました。父なる大樹のお力を正しく活かしておられる貴方様はまさに大樹の使徒様でありましょう」

「エルフのお姉さんがもう一人!? 他にも綺麗なお姉様方!! おい、アルト! どうなってんだよこれ!?」

「言ったじゃない、綺麗なお姉さんがアンタに会いに来たって」

「本当だとは思わないじゃん! やっべ、オレ寝癖付いてない!?」


うーむ、賑やかだな。

そして、多分僕はベイガさんの視界にも入ってないね。視線が女性陣に釘付けなのがモロバレだ。

あんまりデレデレして大丈夫? アルトさんがちょっとジト目になってるよ?


「おい、ベイガ。本命のお客さんはこっちのナオだ! なんとナオもお前と同じ与えられしものなんだぞ!」


あ、見かねたシーマさんがこっちに話を振ってくれた。

ありがたいけどまだ心の準備が出来てないから、もうちょっと観察していたかった。


「え!? シーマ姉!? どうしたんだよ、めっちゃ綺麗になってるじゃん! 男でも出来た!?」

「へへへ、すげぇだろ。コレがナオのオチカラってやつよ!」


あ、ベイガさんがこっち見た。

めっちゃ目を見開いて驚いている。わかるわかる、びっくりだよね、ここまで違うなんて。


「お願いします!! オレにもう一度チャンスをください!!!」


まっしぐらに僕の目の前に駆け寄ってきたベイガさんが綺麗にスライディング土下座を決めた。

なんで、この世界の人は僕を見たら土下座したがるの?

お読み頂き、ありがとうございます。

評価、感想、ブックマークなど頂けるととても励みになります。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。