29 第六感
「おー、これでウチの城より低くなって、ちょっとスッキリした」
宝来尊が右手を目の上にかざしながら、消し飛んだ暗黒城をマジマジと眺める。
「き、貴様……今、何をした…?」
その時バルザーが、わなわなと震えながら、必死に声を絞り出した。
「別に何も。ただパンチを素振りしただけ」
「そんなバカな……だが確かに、魔力は一切感じなかった…」
宝来尊の間抜けな返答に、バルザーは震える右手で額を覆いながら顔を伏せる。
「この男、危険だ……何としても、ここで…」
「今度は、狙撃か?」
アッケラカンとしたその声に、バルザーは思わず顔を上げて両目を見開いた。
「図星か…」
宝来尊は薄く笑うと、痛いくらいに殺気の突き刺さる、左手方向へと顔を向ける。視線の先1キロメートル辺りには、小高い丘陵地帯に森林エリアが広がっていた。
「あの森の中だな。正確に俺の頭を狙ってる」
視界上隅にあるカウントダウンは、既に五分からの表示に切り変わっている。
「バカな……この距離で気付くなど…」
「言っとくけど、撃つ瞬間も分かるからな。嘘だと思うならやってみな。ただし…」
言いながら宝来尊は、ギュッと拳を握りしめた。
「今度はアンタんとこの魔王に、キッチリと報復を受けて貰う」
そのひと言に先程の光景を思い出し、バルザーの首筋を冷たい汗が伝う。それから諦めたように、後方の部下に無言で指示を出した。
その指示に併せて、宝来尊も殺気の緊張感から解放される。内心で、安堵の溜め息を盛大に吐いた。
「分かってくれて嬉しいよ。…て事で、綱引きの勝利報酬の話をしよう」
そう言って宝来尊は、バルザーの肩をポンポンと叩いて嫌らしい笑みを浮かべた。
「そこのカゲノちゃんと、彼女のお母さんを貰う」
「ふ、巫山戯るなっ! 引き抜きは一人と昔から決まって…っ」
「その約定を最初に破ったのはどっちだよ? これで手打ちにするって言ってんだ。それともお互い、決着つくまで戦争するか?」
バルザーは唇を噛み締めながら、凄い剣幕で宝来尊を睨み付ける。しかしやがて両目を閉じると、諦めたように「勝手にしろ」と呟いた。
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カゲノ
職業 :影狼
体力 :150千
魔力 :100千
攻撃力:300千
敏捷性:500千
カゲノの母親
本人のたっての希望により、魔王城寮母に就任。




