28 瞬殺発動
「何のつもりか知らんが、あまりに無防備!」
バルザーの足元から伸び上がった影の道化師が、先程の大きさを超えて三メートル程にまで達する。そのまま三叉槍を両手で構えて、宝来尊へと一直線に突進した。
しかしガギンと鈍い音が鳴り響くだけで、宝来尊の歩みを止める事さえ出来はしない。
「なるほど、思った以上に優秀な障壁のようだ」
その直後、瞬時に道化師の両手の武器が二本の巨大な曲刀に持ち変わり、嵐のような目にも止まらぬ連続斬りを繰り出した。
それでも宝来尊の歩みは止まらずに、とうとうバルザーの目の前にまでたどり着く。
「お…お前、一体何のつもりだ…?」
若干怯えたように、バルザーの声が強張った。
「アンタらさ、あんな子の母親を人質にとって無理矢理言う事を聞かすとか、そんな事して恥ずかしくないのか?」
「必要な、手段だ…っ!」
そんなバルザーの返答にガッカリしたように、宝来尊は大きな溜め息を吐く。
「なんて言うか、ただ愛でるだけなら他人の趣味嗜好をどうこう言うつもりは無かったんだけど、こんな事になるなら任せる訳にはいかないよね」
そのときシラネが、後方でハッと嬉しそうな表情を見せた。
「ちなみにアンタは、この星の壊し方って知ってるか?」
「は…はあ⁉︎ 何をいきなり訳の分からん事を…」
「拳ひとつで充分らしいぜ」
そこで宝来尊は、わざとらしくニヤリと笑って拳を握りしめる。
「という事は拳ひとつあれば、ここにいるアンタら全員、余裕で『瞬殺』って訳だ」
発動コマンドと同時に、宝来尊の視界の上隅に三分からのカウントダウンが動き始めた。
「な、何をふざけた事を…っ!」
馬鹿にしたような発言に、バルザーは宝来尊の胸ぐらを掴んで逆上する。しかしそんな事など全く意にも介さずに、宝来尊は相手の魔王城目掛けて右拳を軽く振り抜いた。
次の瞬間、凄まじい衝撃波が巻き起こり、そびえ立つ暗黒城の四階から上を一瞬で粉微塵に吹き飛ばす。
その有り得ない程の光景に、バサバサと金髪とマントを煽られながら、相手魔王はただ呆然とバルコニーに立ち尽くしていた。




