27 暗殺者②
「あーシラネ、もしかしてこの子が、前に言ってた友達か?」
「なあ…っ⁉︎」
そのとき振り返った宝来尊の何でもない様子に、カゲノは素っ頓狂な声をあげた。
「あ、はいそうです、ミコトさま。こちらが人狼族のカゲノでございます」
「そうか…」
シラネの返答に、宝来尊はゆっくりと頷く。
そしてそのまま、カゲノの姿に首を傾げた。
(何でこの子、体育着なんだ?)
目の前にいる少女は、赤い長袖ジャージに同じく赤い膝上丈の半パンという、いわゆる体操服を着用している。
(あーでも、強引な手段で引き抜かれた理由が、ちょっと分かったかも…)
その見るからに元気少女という姿に、宝来尊は思わず苦笑いを浮かべた。
「ちょ、ちょっと待つんだゾ! アタシは確かにその男を斬った筈…?」
そのとき我に返ったカゲノの青い瞳が、一杯にまで丸く見開かれる。
「カゲノ、貴女の実力を低く見積もる訳ではありませんが、この程度でミコトさまの生命に届くなどと思わない事です」
「な…⁉︎」
そう言って微笑むシラネの笑顔は、カゲノの一切の戦意を喪失させるのに充分であった。
〜〜〜
「流石は、腐っても魔王という事ですか」
バルザーが、あざけるように高らかに笑う。
「ミコトさまへの無礼な物言いは…」
「おっとシラネさま、ご友人のお母上の事が気になるなら、あまり大きな動きは見せない事です」
シラネの双眸に鋭さが増した瞬間、バルザーが大袈裟な仕草でその動きを制した。
「な…貴方、それでも一軍を率いる将ですか⁉︎」
横に立つカゲノの事を庇いながら、シラネが声を張り上げる。
「おーい小僧、そろそろコイツら、ぶっ飛ばしてもいいかー?」
その時ホシワリが、多数の魔族に囲まれた状態のまま、何とも間の抜けた緩い声を出した。
「あー悪いホシワリ。流石にムカついたから、ここは俺にやらせてくれ」
宝来尊はホシワリに軽く笑顔で応えると、そのまま無造作にバルザーへ向けて歩いていく。
「へいへい」
その様子を見届けて、ホシワリは何処か満足そうに微笑んだ。




