25 勝負は一瞬
「それでは参加者の皆々様は、所定の位置に着いてください」
黒髪オールバックで青い皮膚のバルザーが、黒の燕尾服の襟元をビシッと張って声を上げる。
そこはちょうど黒綱の中心で、綱から紐で繋がれた一本の旗が立っていた。
「アイツが審判か。何か変な小細工とかしなきゃいいけど」
「ガハハ。心配せんでも、勝っても負けてもそんな判定紛いの結果にはならんわ」
宝来尊の独り言を拾い上げ、ホシワリが大笑いしながら黒綱へと向かう。
「ミコトさま、見ていてください。ずっとお側に居られるよう、必ず勝利を収めてみせます」
シラネがスカートの裾をキュッと結ぶと、可愛らしい膝小僧が露わになった。そのまま自陣の中心部に進み出て、激しいオーラを纏いながら黒綱の横に屈み込む。
そうしてホシワリは最後尾、黒綱の端っこを腰の後ろを回してお腹の前でクルリとねじり込んだ。
気が付くと、アチラの魔王が凄い形相でシラネを凝視していた。屈み込む事によって、彼女の白い太ももまでもが露わになっている。
(アイツ、どっちの応援するんだろーな…)
宝来尊はポリポリと頬を掻きながら、思わず苦笑いを浮かべた。
「両陣営とも準備が整いましたので、これより勝負を始めさせて頂きます。合図と同時に開始してください。それでは、レディ…」
その時バルザーの足元から影がニュッと立ち上がり、右手を頭上に挙げて指鉄砲を形作る。
そうして一呼吸のあと、激しい破裂音が辺り一面に鳴り響いた。
シラネたち綱引きの両陣営が一斉に立ち上がる。
同時にホシワリの身体が三メートルを超える程にまで膨張し、まるで大きなカブを引き抜くように全力で引っこ抜いた。
「ふえ…っ⁉︎」
「ぐわああああ!」
次の瞬間、シラネを含めた相手陣営三十人が、フワッと空中に放り出される。
シラネは華麗に後方宙返りで着地を決めたが、相手はバラバラと山積みになり最後に緑肌の巨人に押し潰された。
「ガハハ、どうやら儂らの勝ちのようだの」
ホシワリが豪快な笑い声をあげ、バルザーは声も出せずに唖然となる。
「バルザー!」
その時バルコニーから、お腹の底まで響くような怒声が会場中に響き渡った。




