第180話 初任務 その12 合流と反撃(ラジク視点)
今度は白い狼煙が上がった後のラジク視点によるお話です。
この回の開始時点で、レストミリア殿たちは移動を開始、メラリオのいる東門の戦いも決着がついてますが、ジグたちはまだ林を凍結させた辺りですね。
それとサブタイトルなのですが、たびたび同じ文言を用いていますがこちらは「初任務」というお話のなかの、更に細かいタイトル分けなのでお許しください(;´Д`A
作者の語彙が貧困で、なかなか良いものが思いつきませぬ。ごめんなさい…orz
ソドリオが白い狼煙を上げてからというもの、戦況は圧倒的にこちら側が不利になっていた。
「くっ、このままではいかん……!」
俺は街の城壁に群がる盗賊たちを阻み、北の森から押し寄せるモンスターやアンデッドを次々と斬り伏せ、しかし相手の物量にこれ以上は支えきれないと判断し、撤退を指示しようとしていたが、街の住人たちを逃がす時間をどうにか稼がなくてはならなかった。
「俺が殿を勤める。お前たちは急いで街の者たちを避難させろ!」
「しかしラジク殿、南の沼地にはアンデッド、東の森にも盗賊がいる今、西に逃げたところでドラグニアとの国境も近く、拓けた草原ではすぐに追いつかれますぞ!」
「ぬぅ…!」
『エル・エリア・ホーリー・ライト!』
もっともな部下の意見に俺はどうすべきか迷っていると、突然周囲が広範囲に渡って眩く照らされて、アンデッドが浄化されていきモンスターや盗賊たちの視界を奪った。
『エル・メニア・アクア・ハンズ!』
『エル・メニア・ロック・バレット!』
『オーロラ・ヒール!』
そして無数の水の手が敵を拘束し、大量の岩弾がそれらを襲い、あちこち負傷していた味方を一斉に癒し始めた。
「やぁラジク殿、どうにか間に合ったかな?」
「レストミリア殿! あぁ、素晴らしいタイミングだ、本当に助かったぞ!」
「アマリア様は負傷者の治療を!
ルミアは味方への支援魔法と援護攻撃を!
ヒスティリスと他の皆は私と一緒に、ラジク殿と共に敵を迎え撃つよ!」
「わかったわ!」
「了解です~」
「はいっ!」
振り向くとそこには南門の守りについていた騎士たちと、沼地に向かったうちの四人が戻ってきていて、敵を一気に押し返し、味方を癒し始めていた。
「沼地のアンデッドの方はどうしたのだ?」
「アンデッドだけなら神様が土地ごと浄化したよ。まったく、本当にとんでもないお嬢さんだったよ」
「そ、それは良かった…。して、姿の見えないジグとイリトゥエル殿は?」
「アンデッドは片付いたけれど、敵の首領が残っていたからね。ジグの提案もあったし、私たちは狼煙を見て二手に別れたのさ」
「うーむ、あの二人だけでか……」
俺たちは敵を迎え撃ちながら話していると、レストミリア殿が気掛かりなことを言った。
「ラジク殿の心配も分かるけど、あんな大量のアンデッドを使役できるような使い手や魔道具なら放置は出来ないし、かと言ってこっちに来なかったら、それはそれで危なかったんじゃないかい?」
「狼煙を上げたのは俺ではなく敵なのだが、結果的には良かったと言わざるを得んな。
しかし、二人が心配なのも俺としては仕方のないことなのだ。特にこの姿を見れば分かると思うが、敵が想像以上に強くてな…」
「たしかに盗賊を相手にラジク殿が、そんな状態になるとは思わなかったねぇ…」
ボロボロな俺の格好を見たレストミリア殿が頷く。
すると新手の出現に浮き足立っていた敵に向けて、更に幾つもの火球が降り注いでいく。
「何だぁ? こっちは随分と面倒くせえ事になってるなぁ」
「おお、メラリオも無事だったか。東門はどうした?」
「こっちほどの数じゃなかったからな。敵は全滅させたぜ」
そう話すメラリオは余裕だったと言わんばかりの態度だが、全身傷だらけでは苦戦し消耗した事実は隠しきれず、しかしそれは俺もなのであえて触れないでおく。
「よし、ではアマリア殿の治療を受けたら、こちらに合流してくれ」
「あぁ、了解だ」
そうして態勢を立て直した俺たちはしばらくの間、なおも押し寄せてくる敵を倒して街を守っていると、敵の中にいたソドリオが逃げていく姿を見つけた。
「四人の兄弟のうち次兄と末弟はすでに倒しているし、これだけ時間が経っても現れないということは長兄である首領も、ジグ達によって討ち取られたか撤退したか……いずれにせよ情報が欲しいな。
レストミリア殿、俺は敵の指揮官を捕らえに行くが、ここの指揮は任せても良いだろうか?」
「敵の攻勢も鈍ってきてるし私は構わないよ!」
「師匠!」
俺の問いにレストミリア殿が頷くと、ちょうどジグとイリトゥエル殿が戻ってきた。
「ラジク様、レストミリア様、ただいま戻りました」
「おぉ、無事で何よりだが……二人とも派手にやられたみたいだな?」
「はい…」
「かなり危なかったですね…」
今の俺の格好を見たジグならいつもは「師匠こそボロボロですね」などと言って笑うところだが、今回はそれも出来ないほどに苦戦したらしい。
「その辺りの話は後から聞こう。
とりあえず今は1つだけ……沼地には盗賊団の首領がいたか?」
「はい。実力的にも明らかに普通の盗賊とは違いましたし、闇属性も持っていたので間違いないと思います。
魔道具に関しては恐らく発動後の魔力供給を部下にやらせていたらしく、イリトゥエルの範囲魔法によってその部下もろとも破壊しましたが、後から奇襲を受けて戦闘になり、その……」
「ラジク様、ジグは途中から意識が朦朧としていたようですが、敵の首領と思われる人物はたしかに討ち取ったのを、私が確認いたしました」
ジグが口籠もったので何事かと思ったが、やはり首領相手にかなりの無茶をしたらしい。
イリトゥエル殿が代わりに答えたので、とりあえずの現状確認は出来たが、そうなると生き残りはソドリオ一人ということになる。
「そうか……今は敵の指揮官を捕らえなくてはならんのだが、二人は戦える状態にあるか?」
「僕は大丈夫です」
「ふむ……イリトゥエル殿の意見は?」
ジグが即答するが、イリトゥエル殿が浮かない顔をしていたので、俺は彼女の意見を聞いてみることにした。
「ジグは魔力切れを起こして一度倒れています。霊樹の薬によってある程度は回復しましたが、出来れば無理はしない方が…。
それと私に関しては深手を負いましたが、ジグの治療を受けてこちらもある程度は回復してます。
しかし前線で戦うとなると足を引っ張ってしまうかも知れません……」
イリトゥエル殿は申し訳なさそうにそう言うが、俺は神眼を持つレストミリア殿を見ると大きく頷いていたので、彼女の意見が冷静な判断であることを確認できた。
「ジグ、頑張るのはお前の良いところでもある。
しかし己の状態を正確に把握できなければ、自分だけでなく味方も窮地に追い込む事になる。
その点はイリトゥエル殿を見習って、もう少し冷静な判断を出来ねば困るな」
「ですが師匠…!」
「まぁ待て、何も大人しくしてろとは言わん。
お前は俺と共に盗賊の生き残りを捕らえに行ってもらうが、戦闘は俺に任せてお前は援護担当だ。それに従えるなら連れて行くが、どうする?」
「……わかりました。従います」
「よし、では行くとしよう。イリトゥエル殿はアマリア殿と共に負傷者の治療と、必要ならルミア殿の手伝いをしてやってくれ」
「かしこまりました。お二人の無事を祈っております」
「おっと待てよ、そういうことなら俺も行くぜ」
俺とジグが移動を開始しようとすると、アマリア殿の治療を受けたらしいメラリオが、そう言って近づいてきた。
「ほう、理由は?」
「ジグもそうだが、オッサンもそれなりに消耗してるだろ。それなら敵の相手も手が足りている今、俺がやるべき事はオッサンの手伝いだと思うんだが」
粗野な言動の割には案外よく見ているものだ。たしかに追撃するなら回復したメラリオがいてくれると助かる。
俺はレストミリア殿をチラッと見ると、こちらの心境を読んだらしくニヤリと笑っていた。
「そうだねぇ…敵の数もどんどん減ってるし、これ以上の増援が無ければ大丈夫だろうから、メラリオも連れて行くと良い。何かあれば狼煙を上げるからさ」
「すまない。ではメラリオにも頼もう」
「へへっ、そう来なくっちゃな」
「メラリオも来るとなると、いよいよ僕の仕事が敵を拘束するだけになりそうだなぁ……」
「時間が無い、行くぞ二人とも」
「おうよ!」 「はいっ」
こうして俺たちは、街の守りをレストミリア殿たちに任せて、北の森へと逃げていったソドリオを捕らえに向かった。
苦戦していたラジクの元に味方が続々と合流。
その後はしばらく戦闘が続き、やがてジグとイリトゥエルも戻ってきましたが、形勢不利とみたソドリオは一人で撤退を開始し、それを三人で追撃することになりました。
次回は久しぶりに、1話まるっとジグ視点に戻ると思います。




