第62話 想定外
またまた遅くなってすみません!
8月からは更新頻度が上がると思いますので、見捨てないでください。
今後ともよろしくお願いします。
〜158日目〜
王城に閉じ込められて丸1日。
その間に俺はシャルルから城の構造について教えられていた。
バシャル・ラーマーン王の身柄が移されていないなら、彼がいる場所はおそらく最上階の部屋。
そこにいくまでのルートを頭に叩き込む。
「さすがに覚えましたよね?」
「ああ、ばっちりだ。決行はいつに?」
「グレンズお兄様が私の屋敷に兵を差し向けたときを狙います。それでも城の守護兵は多数。見つかった場合は戦闘になりますけど ⋯⋯ そういえばあなたの実力をお聞きしていませんでしたね」
「かなり強いと思うよ。なんならステータスを教えてもいいけど」
「教えてもらいたいところですが ⋯⋯ 招かざる客が来たようですのであとにしましょうか」
同時に扉に目を向けると、タイミングよくノックされた。
「どうぞ」
シャルルが促すと、「失礼する」とでっぷりした頭が禿げ上がった中年男性が入ってきた。
「あら、そのダルマのようなお姿はダラマカス伯爵ではありませんか」
「お久しゅうございます、シャルル様」
シャルルの口の悪さは無視し、ダラマカス伯爵は顔いっぱいにかいた汗をハンカチで拭きながら、
「我が娘がご迷惑をおかけしていると聞いております。たいへん申し訳ありません」
「ハクハはどこぞの親に似ず、忠義厚くよく尽くしてくれていますよ」
「そう仰ってくださると胸のつかえも取れるというものです」
毒たっぷりの言い方にもダマラカス伯爵はいっさい気にした様子もない。
というか、この父親からハクハみたいな美少女が生まれるんだから不思議だ。機会があるなら、母親にぜひ会ってみたい。
「それであなたが私を訪ねてきた本当の理由はなんですか? ハクハのことだけで来たわけではないんでしょう」
「もちろんでございます」
ダマラカス伯爵は一度身なりをきっちりと整え直すと、シャルルに対して満面の笑みを見せると、
「シャルル・ラーマーン様、この度はおめでとうございます」
「なにがですか、いきなり?」
「不肖ダマラカス。クレンズ様から命を承り、シャルル様のご結婚相手を決めてまいりました」
「結婚!?」
「左様でございます。伍の国の王女の縁談ともありましてこのダマラカス。相手選びには慎重に慎重を期しましたよ」
「ま、待ちなさい! お父様は私の気性を知ったときに無理に結婚する必要はないと言ってくれました。あなた方はいくらお倒れになったと言えども国王のお考えを否定なさるおつもりですか?」
「──おや、自慢の諜報網を駆使し知ったからこそグレンズ様の呼び出しに応じたと思っていたのですが ⋯⋯ シャルル様はご存知なかったのですか?」
「なにを、でしょうか?」
嫌な予感がする。
「前国王陛下バシャル・ラーマーン様は先日崩御されました」
「え?」
「あなたのお父様はもうこの世にいないんですよ。それにですね、これはバシャル・ラーマーン様のご遺言でもあるのです」
〜159日目〜
昨日はあれから父が亡くなったことと、その父が男嫌いのシャルルに結婚してほしいと遺言を残したと聞きショックを受けた王女様に代わり、俺がダマラカス伯爵と会話を交わした。
時折俺の胸や足を助平そうな目で見てきたが、我慢に我慢を重ねて情報を収集。
おかげでわかったことは──
バシャル・ラーマーンは2日前に息を引き取り、その亡骸はいま最上階の部屋に保管されているとのこと。
毒を盛った犯人クレンズを処刑してから大々的に国葬と王位継承式をするらしい。
このことを知っているのはグレンズ陣営のトップクラスのみで、自分もその1人だとダマラカス伯爵は自慢げに言ってきた。
さらにグレンズが王の地位に就いたとき飛躍的に昇進することまでが約束されているらしい。
はっきり言って高待遇すぎる。
ダマラカス伯爵はクレンを裏切って、グレンズにいったい何をもたらしたのか?
そこを追求したかったものの、「愛人になるなら今のうちだよ」とアプローチが始まったので話はそこまでとなった。
で、現在。
「なあ。グレンズたちはクレンを捕まえに行ったらしいぞ。俺たちはこれからどうするんだ?」
いまだショックから立ち直れていないシャルルに問いかける。
「 ⋯⋯ お父様がいてこその計画だったのに、その前提が覆ったわ。これでクレンズお兄様も捕らえられると私たちに打つ手がなくなる」
「だったらクレンたちに逃げるよう伝えたほうがいいんじゃないのか?」
「昨日の時点で屋敷を離れるよう言ってあるわ。あとはグレンズお兄様が見つけるのが先か、私が落ち合う場所に行くのが先かの問題よ」
「そうなると俺たちも早く城から出たほうがいいんだよな」
「簡単に言わないで。いくら兵が減ったと言っても2人だけじゃどうすることもでき
シャルルが言い終える前に、俺は隼丸を取り出し外から施錠された扉を真っ二つに斬り裂いた。
「クレンの側には皐月と卯月もいるから、ちょっと心配だったんだ」
「え、ちょ、あれ? いま、あなた、なにしたんです? いつの間にか刀も持ってるし ⋯⋯ 」
「行こう」
もたついているシャルルの手を取って部屋を出ると、扉を斬った音を聞きつけた兵たちが集まってきているのが見えた。
「あんなに大勢! どうす
「邪魔」
隼丸を横薙ぎに一閃。
光が飛んでいき、兵たちを一蹴した。
もちろん手加減したんで殺していない。
「な、なんですかいまの!?」
「軽く斬撃を飛ばしただけだよ」
簡単に説明して俺は足を進める。
と、シャルルが急にブレーキをかけた。
「ちょっと待ってください!」
「詳しい説明なら城を出てからでいいだろう」
「ではなくて! あなたが強いのはよくわかりました。だからこそお願いしたいことがあるんです。私をお父様の部屋まで連れて行ってくれませんか?」
亡くなった父親に会いたい。
家族に蔑ろにされていた俺にはいまいち理解できない気持ち ⋯⋯ 前までは。
この世界に来て家族の暖かさに大切さを知った今ではシャルルの気持ちがよくわかる。
「いいよ」
「ありがとうございます!」
かくして俺たちは頭に叩き込んだ最上階までのルートを走り抜け、バシャル王の自室へと辿り着いた。
途中の道のりに本来立ってるべき見張りの兵士たちの姿はなかった。
「お父様?」
扉ごしにシャルルが呼びかけるもののやはり返事はない。
「失礼します」
シャルルが扉に手をかけ
「あ、鍵が ⋯⋯ 」
「任せろ」
隼丸を振るって扉を斬り裂く。
シャルルが中央にあるベッドに飛び込むように駆け寄っていった。
そこに横たわる男性の顔を見て、触って
「っ! う、お、お父様 ⋯⋯ お父様!」
冷たくなった父に抱きついて慟哭した。
俺はゆっくりとシャルルに近づくと、彼女の肩に手を置き、
「悲しいのはわかるけど ⋯⋯ 」
「わかってます。牢に入れられたあの子たちも助けないといけませんし」
シャルルは立ち上がるともう一度だけ父の顔を見てから部屋を出て行った。
すぐにあとをついていこうとした俺だが、ふと思い立ってベッドに戻る。
「隼丸。これは蛇神の呪いとは無関係か?」
『魂は昇天した気配があるな。呪いとは関係ないだろう。ただな、1つ気になることが ⋯⋯ 』
なんだ?
『普通死んだら魂は神のもと壱の国に行くシステムなんだが、こいつの魂は伍の国から出ていこうとしていない』
未練があって浮遊霊みたいなものか?
『かもしれんし、もしくは ⋯⋯ 』
隼丸はそこで言葉を濁し、
『相棒。そいつの体を連れていけ。気になることがある』
わかった。
俺はバシャル・ラーマーンの亡骸をポケットに収納してからシャルルに合流。
その後は地下牢に入れられていた彼女の護衛を助け出し、群がる兵士たちをいなし、堂々と正面から城を出て行った。




