第61話 登城
かなり遅くなってしまってすみません。
次の更新は火曜予定です。
遅れないように気をつけます!
今回はハッスルタイムなしです ⋯⋯
〜156日目〜
目が覚めると同時、例によってスキル選択画面が出てきた。
蛇神との子供クルルカンが生まれるようだ。
スキルは再生Lv1を選択。
イメージは脱皮するごとに回復する蛇。
陸の国に帰ったら抱っこしてあげなくちゃ。
コンコン。
扉がノックされた。
「どうぞ」
デューイが対応。
そう言えばクレンの奴は隣の部屋から帰ってこなかったっけ。
一晩中お楽しみだったようだ。
扉が開かれ、メイドさんが入ってくる。
「失礼いたします。皆様、お食事の用意が整っておりますのでお部屋に案内いたします」
皐月と卯月は眠たいということで置いていくことにして、俺とデューイの2人だけでついていく。
食事の部屋に着くと、すでに屋敷の主人であるシャルルが席についていた。
「おはようございます。昨日はゆっくり休めましたか?」
「おかげさまで」
「あら、お兄様の姿が見えませんけど」
メイドの1人が近づき耳打ち。
「 ⋯⋯ ハクハさんともあろうものが」
仮面のせいで表情はわからないが呆れているっぽい。
「まあいいでしょう。デューイ、ここでの話はお兄様にきちんと伝えてください」
「かしこまりました」
「とりあえずは食事をしながらにしましょう」
シャルルが手を鳴らすと食事が運ばれてきた。
パンにスープ、サラダ。
王の娘にしては意外と質素なメニューだ。
それとも俺たちが歓迎されていないだけか?
気持ちが顔に出てしまったようで、
「叔父が王都に入る食材の流通をストップさせているんです。おかげでろくに食べ物が手に入りません」
シャルルがフォローをいれてきた。
しかし兵糧攻めときたか。
地方貴族をまとめ上げたりと、ポポス・ラーマーンはなかなかの人物かもしれない。
そう評すると、
「将軍としては父も高く評価していましたが、統治者としては決して認めることはありませんでした」
「それはなぜ?」
「叔父は自分や自分についてくれた貴族のことばかりで、領民のことは何1つ考えないんです。今回のことも砦ならともかく王都ですよ? 食べ物が手に入らず本当に困るのは何万といる領民だということをわかっていない。もしも父がこのまま目覚めず、叔父がグレンズお兄様を追放したとしても自国民を追い込んだ者を王と認める者は少ないでしょうね」
「 ⋯⋯ 言われてみればそうかもな」
「ただ気になることが ⋯⋯ 」
口元だけ開け、スープを一口啜ってからシャルルは続けた。
「王都に食糧難が広がり始める前、グレンズお兄様が食料を大量に買い込んでいたという情報がもたされていました。最初は籠城用かと思いましたが、最近その食料を領民に分け配りだしたんです。おかげでグレンズお兄様の評価はうなぎ登りですよ」
「グレンズとポポス叔父が裏で繋がっているかもと言いたいのか」
いつの間にか扉付近にクレンが立っていた。
俺たちに朝の挨拶をしながら席に着く。
メイドがクレンにコーヒーを持ってきた。
「苦い。砂糖をもう1つ」
「相変わらずのお子ちゃま舌ですね、お兄様は」
「うるさい。それよりもさっきの続きだが、グレンズが一早くポポス叔父のやることに気付いたという可能性もあると思うんだが」
「それも考えましたが、だったらなおのこと食料を配ることなく温存しませんか? ポポス叔父が包囲を完成させたら、それこそ食料を手に入れることが難しくなるでしょう。領民に配れば籠城が厳しくなります」
「 ⋯⋯ 2つの陣営が裏で繋がってるとなると厄介なことになるぞ」
「ええ。ですからお父様の回復が絶対に必要なのですよ」
ここまで聞いて俺の感想はうーん。て感じ。
基本難しい話は嫌いなんだよな。
こういうことはカブリラに任せてあったし ⋯⋯ ん?
あれ?
そういえばカブリラは──
「あーーーーーーーーーーーー!」
「な、なんですか!?」
「どうした隼人?」
「急に大きな声を出さないでください。びっくりしましたよ!」
三者三様の反応ののち俺に注目が集まったけどそれどころじゃなかった。
「忘れてた」
「なにをだ?」
「肆の国にカブリラを置いてきちゃった」
〜157日目〜
朝からカブリラを迎えに!
と思っていたのだが、意外にも早くバシャル・ラーマーン王に会える機会がやってきたため延期することに。
ごめんカブリラ。
もう少しだけ待っててくれ。
シャルルの護衛に混じって登城する。
途中領民が住んでいる通りを歩いたが、食糧不足はレストランや宿屋に大打撃を与えていた。一般人に関しては城からの補給もあり、生きていくことはできそうだ。
城に入ると兵士の数に驚く。
多い ⋯⋯ のではなく、思っていた以上に少ないのだ。
案内役の兵士に連れられ王の間へ。
「久しいなシャルル」
王座にはクレンとまったく同じ顔をした男が座っていた。
「お元気そうでなによりですわ、グレンズお兄様」
シャルルが両手でスカートを軽く上げお辞儀をする。
「早速ですが私を呼び出した理由をお聞かせください。なにしろ私はお兄様と違って忙しい身ですので」
その言い振りにグレンズの臣下たちがざわつくも、
「相変わらずだな」
当の本人であるグレンズは気にした様子もない。
「用はすぐに終わるさ。お前が素直になればの話だがな」
「私はいつでも素直ですよお兄様」
「そうか。なら聞くがクレンズを匿ってるいるな?」
「ええ」
シャルルは隠すこともなく頷く。
「匿っていますよ。どこでバレたんでしょうか?」
「お前の屋敷を見張らせている者から、昨日の晩見かけたという報告がきた」
昨日の晩ということはハクハの部屋に行ったときか!
「姿を見られないように、と言っておいたんですけど ⋯⋯ 困ったお兄様ですこと。それでグレンズお兄様は私にどうしろと言うんでしょうか?」
「簡単なことだ。クレンズを引き渡
「お断りします」
シャルルは即答し、
「必要であればお兄様の兵を差し向ければいいですわ。最低限の抵抗はさせてもらいますけど」
「 ⋯⋯ わかった。そうさせてもらおうか。とりあえずお前はここで拘束させてもらう」
グレンズが合図をすると武器を構えた兵士たちが雪崩れ込んできた。
シャルルを守るため護衛の少女たちが彼女を囲むが、
「どきなさい」
シャルル自ら囲みを割ってグレンズの前に出た。
「グレンズお兄様。私は抵抗しませんのでどうぞお好きなように」
護衛の少女から「そんな!」「シャルル様!?」と言った悲鳴に近い声が上がるものの、シャルルの意思は変わらない。
「何を企んでいる? そもそも今回の呼び出しに関しても素直にやってくるとは思っていなかったぞ」
「そこらへんはご自由にお考えください。私は牢屋に入れられるのでしょうか?」
「 ⋯⋯ 実の妹にそれは気が引ける。お前の部屋に閉じ込めることにしよう」
「お優しいことで。この子たちも一緒で?」
「それはだめだ。牢屋に入ってもらう」
「残念ですわ。でも1人だけお許しをもらえませんか? 私の身の回りのお世話をしてほしいのです」
「 ⋯⋯ 1人だけなら許そう」
「ありがとうございます──ハヤ」
一瞬誰のことかわからなかった。
ただ全員の視線が俺に集まったので、隼人でハヤと理解できた。
「あなたは私についてきなさい」
「わかりました、シャルル様」
こうして俺とシャルルはうまいこと王城に潜入することができたのであった。




