第59話 睦月懐妊
夏風邪はこじらせると長引きますね ⋯⋯
皆さんも体調には気をつけてください。
次回は水曜日に更新予定です。
よろしくお願いします。
〜153日目〜
全員が女性化したことにより、クレン一行だとバレることなく、伍の国で2番目に大きい都市『パランジャ』に到着することができた。
「散れ」
デューイの一言で私兵300名が動き出す。
ある者は商人に化けてパランジャへ。
ある者はテントを張って野宿を。
ある者は先行隊として先に進んだ。
「一緒には行かないのかニャ?」
「パランジャから先は王直轄地になりますので、兵を連れていくには許可が必要になるんですよ。けれども指名手配されているクレン様に許可が下りるわけがないので、バラバラに行動して王都で集結します」
「ふーんニャ」
わかったかのように頷く睦月だけど、あの顔はきっとわかっていない。
「睦月様たちはもちろんクレン様とともにパランジャでお休みください」
「そうするニャ。いこ、ご主人様。デートするニャ!」
「デートって子供たちは?」
振り返ると如月弥生皐月の3人はにこやかな顔で、卯月だけはムスゥとしていたけど、
「行ってらっしゃい」
「ママをよろしくね、パパ」
「そろそろ妹が欲しいと思ってたんだ」
「 ⋯⋯ バイバイ」
それでも俺たちを送り出してくれた。
「というわけニャ! 行くニャよ」
睦月に手を取られ街の中へと入る。
さすが伍の国で王都に次ぐ大都市。
敷地は広く、いろんな建物がある。なによりも活気がすごかった。
「ご主人様、あれ食べたいニャ!」
屋台で売ってあった串に刺さった焼き魚を購入。2人で半分こした。
「ご主人様、あそこはなんニャ?」
「わからないから入ってみるか」
芝居小屋だった。
この国の王バシャル・ラーマーンを主人公にした英雄譚。
一介の冒険者だったバシャルが国王に上り詰めるまでのストーリーだったのだが、これがなかなか面白くて、演出も凝っていたため夢中になってしまった。
特にバシャルが聖槍を岩から引き抜くシーンはいくつもの魔法を掛け合わせているのか見応えがあった。
睦月には退屈だったみたいで途中から寝息が聞こえてきたけど ⋯⋯ 。
「にゃあー。ああいうのは苦手ニャよ。次はどうしようかニャ」
「んー、そうだ。むーちゃんに服を買ってやろうか?」
「ほんとニャか!」
そういうわけで近くの服屋に。
正直言っておしゃれのことは何1つわからないので、睦月ファッションショーのお客さんになっていただけ。
それでも着替えるたびにポーズを取る睦月はとても楽しそうだった。
「これにするニャ!」
睦月が選んだのはヘソ出しTシャツもどきに、短パンだった。
活発な彼女にぴったりの服装だ。
「ん、あれは!」
睦月がお会計をしている間に面白いのを発見。
彼女にバレないように購入しておく。
服屋から出てくると雨が降っていた。
通り雨っぽいのでしばらく待てば止むはず。
「どこかで雨宿りしようか?」
「なら、あそこがいいニャ」
「あれって!」
一時休憩ありの連れ込み宿ですやん!
ちょ、睦月さん。
まだ昼間なんですけど?
「むーはご主人様がいきなりいなくなって寂しかったニャよ。心に穴がぽっかり開いたニャよ。ご主人様は寂しくなかったのかニャ?」
「そりゃ ⋯⋯ って、こんなところで弄らないでくれますか」
「じゃ、どこだったらいいのかニャ?」
答えず睦月を伴って連れ込み宿にチェックイン。
部屋に入った瞬間、襲いかか ⋯⋯ ろうとして逆に襲われた。
あっという間に服を脱がされ、上半身はナメナメ。下半身はさわさわさわさわ、とソフトタッチで攻められる。
「ニャハハハ。ご主人様はやっぱりすぐに元気になるニャね!」
ナメナメ攻撃が下半身にやってきた。
「んニャ? いまビクンってしたニャ。先が弱いんニャね。これはどうニャか?」
「それやば──うっ!」
「んにゃ !!!!」
「ご、ごめん。大丈夫だった?」
「 ⋯⋯ ん(ごくっ)。平気ニャよ」
でも、と睦月はベッドに上がりこむと四つん這いになり、
「こっちにも欲しいニャよ」
「もちろん!」
「にゃ、きたにゃあ〜! ご主人様大好きニャ! もっといっぱいしてニャ! むーをご主人様でいっぱいにしてニャ〜!」
思う存分ハッスルしちゃった。
「なあ、むー」
「なんニャ?」
「これ着てみて」
内緒で買った品物を睦月に渡す。
「ニャニャニャ! ご主人様は変態さんだにゃ〜。こんなの着てほしいのかニャ。しょうがないニャね〜」
ニヤニヤしながら睦月は奥に行ってゴソゴソとお着替え。
「どうニャ? 似合うかニャ?」
出てきた睦月は。
この世界になぜ存在しているのか謎だけど。
完全なる俺の趣味である
真っ白なスクール水着を着ていた。
「む、むむむむ睦月!」
俺はすかさずスタート台に立ち欲望という名の海に飛び込んだ。
目の前に2匹のクラゲを発見。
揉むべし揉むべし!
「ニャン! ニャアアーン」
おっと、クラゲの一部が突出してきたぞ。
試しに舐めてみようか。
「ニャッ! そこ、ニャ!」
堤防が決壊してきた。
蓋をしないと。
「いい、ニャよ。きてニャ──ニャ! ニャニャン! っ! さっきより大きいし激しいニャ!
あん、気持ちいいニャよ。ん。あ。やばいニャ。むーもそろそろ、あん。い、ニャーーーーーーー!」
この日、睦月は5人目を授かりました。
〜154日目〜
妊娠した睦月はさすがに連れていけないので、如月と弥生とともにパランジャでお留守番となった。
「早く帰ってきてニャよ〜」
「ママはあたしたちに」
「任せてね!」
3人に見送られ、俺たちは王都に向かう。
パランジャから王都までは舗装された道が続いているらしい。
そこを歩いていると前方から馬に乗った兵士たちが駆けてきた。
反射的にクレンが俺に背中に隠れる。
その仕草を怪しまれたのか兵士の1人が俺の側までやってきた。
「そこの者!」
「なんでしょうか、兵士様?」
デューイが俺に引っ付きクレンを見えないようにした。
兵士は俺たちを一瞥しただけで、懐から一枚の紙を取り出した。
クレンの顔が描かれた指名手配書だ。
「こいつを見なかったか?」
「いえ、見てませんね」
デューイが答える。
「そうか。もしも見かけたらすぐに我々グレンズ兵団に連絡すること。いいな」
兵士は去っていった。
直後──
「くくく。バレなくてよかったな、クレンズ・ラーマーン」
「誰だ!?」
「あたしだ、クレンズ・ラーマーン」
街道から離れた草むらの中から1人の少女が姿を現した。
年の頃は15、6歳といったところか。白虎と同じ全身真っ白の獣人は、その美貌に似合わないニヒルな笑いを浮かべると、
「しかし、女装とは思い切ったな。よく似合ってるぞ、クレンズ・ラーマーン」
「無理やりされたんだよ。それよりもフルネーム呼びはいい加減やめろハクハ」
知り合いっぽいな。
俺の視線に気づいたのか、
「隼人、紹介しておく。こいつはハクア・ダラマカス。俺の婚約者だ」
「くくく。よろしくな」
「あ、ああ、よろしく ⋯⋯ ってダラマカスってお前を裏切った奴じゃ!?」
「裏切ったのは父たちだ。あたしだけはクレンに愛という名の忠誠を誓っているからな。クレンがあたしを裏切らない限り裏切ることはないさくくく」
なんだろう。
顔は綺麗なのに、すごく怖い。
寒気がする。
クレンを見ると、彼も若干引き気味だった。
「そ、それでハクハ。お前は確かいまシャルルの元に身を寄せていたはず。それがどうしてここに?」
「そのシャルル・ラーマーンがクレン。あんたを呼んでるのさ。あたしはその使者さ」




