第55話 聖女のスキル
次の更新は水曜を予定しています!
誰も姿を見たことがない伝説のアサシンが今ここにいた。
顔は黒いフードですっぽりと隠していてわからないが、体格はかなり大きい。熊種獣人のデュランディムさんと同じぐらいだ。
性別は声から男性だとわかった。
「な、るほど。娘さんを取り返しにきたんですね、シャドウ・リーさん」
「そうだ」
「おやぁ、返事をしてしまいましたね。スキル蛇食い」
ムァイケルの手から小さな蛇が飛び出し、シャドウに ⋯⋯ 寄生する前に霧散した。
「まさか、偽名!?」
「どこの暗殺者が本名で仕事をするんだ。当たり前のことだろう。それよりも答えろ。ミハイルになにをした?」
「ちょっと魂を抜いて、私に忠実なお人形さんにしただけですよ」
「 ⋯⋯ ミハイルは死んだということか?」
「違う!」
叫んだのは俺。
「魂さえ取り返せば元に戻るんだ!」
「 ⋯⋯ ではミハイルの魂はどこにある?」
「Aと呼ばれる奴のとこにあるらしい」
「最近よく聞く名だな。確か壱の国だったはず。ならば、お前に用はもうない」
シャドウがなにかしらのスキルを使ったのだろう。ムァイケルの体が縦に真っ二つに割れた。
同時に操り人形となっていたオッドアイの少女も動きを止める。
強い。
加護持ちでもないのに、この強さは異常だ。
シャドウがこちらを向く。
殺気を隠そうともしない。
射抜くような視線をぶつけてくる。
「聖女ナイチンゲール」
「は、はひ!」
恐怖のあまり声が裏返っていた。
「お前の抹殺依頼も来ている。本来ならばここで済ませてしまってもいいのだが ⋯⋯ 」
シャドウの目がオッドアイの少女──ミハイルに向けられると殺気が消え、代わりに優しさを醸し出した。
「今はあの子のほうが優先だ。邪魔をしないのなら今は生かしておいてやる。お前もだ」
俺は素直に道を開けた。
シャドウはオッドアイの少女──ミハイルを抱き上げると、俺たちに見向きもせずに影の中へと消えていった。
「ふぅぅ、怖かったです」
腰が抜けたかのようにペタンと座り込むフラヴィオを横目に俺はムァイケルへと近付く。
「創生魔法『フレア』」
2つに別れたムァイケルを焼く。
なんとなく生き返りそうな雰囲気があった。
いや、実際放っておけば生き返ったのかもしれない。
それを示すかのようにムァイケルは燃やされながらニヤリと笑った。
「油断してくれれば後ろから襲えたんですけどねー。まあ、今日のところはこの辺で退散します。次回はどこの私と出会うのか楽しみにし」
ムァイケルが燃え尽きた。
〜147日目〜
聖女誘拐事件から王城襲撃事件に変わった一日も終わりを告げた。
これからは事後処理になるんだが、まずはジョイをどうにかしないと。
スキル蛇食いを使ったムァイケルは死んだが、そのスキルはジョイを蝕んだままだった。
「フラヴィオ、お願いできるか」
聖女ナイチンゲール。
どんな病気でも怪我でも瞬く間に治す加護持ち。
そう聞いていたからこそ俺はここに来た。
なのに──
「できません。できないんです!」
「なぜだ? なにか条件があるのか?」
「違うんです。私のスキルは元々治癒用のものじゃなくて ⋯⋯ 」
口を紡いでしまう。
そうこうしているうちにもジョイや桜雪たちが呪いに侵されていく。
俺はスキル観察を使った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
フラヴィオ・ナイチンガール
光の女神の信者
Lv:27
HP193/193
MP521/521
攻撃63
防御121
魔力629
魔防442
速度300
幸運11
加護スキル
異世界言語
強制催眠
交信
一般スキル
治癒魔法Lv48・火魔法Lv23・水魔法Lv14・雷魔法Lv11・光魔法Lv39
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
加護スキルに回復系がなかった。
この強制催眠ってなんだ?
長押しすると
強制催眠
『強制的に暗示をかけることができる』
説明文を読んだ瞬間、俺はフラヴィオに詰め寄っていた。
「お前、今まで治療してきた人に怪我や病気が治ったと思い込ませていたのか!」
「 ⋯⋯ ⋯⋯ ⋯⋯ (こくっ)」
フラヴィオは無言のまま頷いた。
「なんでそんなことを
「仕方なかったんです!」
フラヴィオの声に俺の言葉は掻き消された。
「最初は重症だった人の痛みを少しでも和らげれればと思ってやったんです! でも、それを見ていた人が奇跡だとか聖女だとか言い出して、人がいっぱい集まってきて、気がつけばいまさら違うとは言えないことになってたんですよ! そのあとはミトラに捕まって、スキルの説明もしたのに使えと強制されて ⋯⋯ 」
「ミトラにスキルは使えなかったのか?」
「強制催眠には私が催眠術を使うことを知らないことという条件があるんです」
うなだれるフラヴィオ。
その姿を見て、これ以上責める気にはならなかった。
それよりも大事なのはスキル蛇食いをどうやって消すかだ。
「けどさ」とクレンが会話に加わった。
「人伝てに聞いた話では、一度死者を蘇らせたんじゃなかったっけ? 強制催眠はそこまでできるのか?」
できる ⋯⋯ わけがない!
死者は意識がないんだから騙せる騙されないという問題じゃない。
「本当なのか、フラヴィオ?」
「 ⋯⋯ 私の加護スキルに交信というものがあります。これは光の女神様を呼び出すスキルなんです」
「蘇生は光の女神が?」
「はい。でも、ことわりを乱すことはこれっきりだと言われ、それ以降スキル交信を使っても繋がらないんです」
一筋の光明が見えた気がした。
光の女神と交信することができれば桜雪たちを元に戻せるかもしれない。
「フラヴィオ、今すぐ交信してくれ」
「で、ですが拒否されると思いますよ」
「いいから!」
「 ⋯⋯ わかりました」
渋々といった感じだったけどフラヴィオはスキル交信を使用してくれた。
「光の女神様。光の女神様。私の声が聞こえていますか? どうかお返事ください」
呼びかけてしばらく待つらしい。
なんかUFOを呼び出してる気分だ。
30分待ったけど反応はなかった。
「フラヴィオもう一度頼む」
「何回やっても一緒だと思いますが ⋯⋯ 光の女神様、ここに顕現くださいませ。光の女神様」
拒否。
無視。
何回呼びかけても光の女神は応えてくれなかった。
時間だけが無情にも過ぎていく。
諦めて他の方法を探したほうが早いかも。
そう思ったとき、久しぶりに聞く相棒の声が脳裏に響いた。
『かっかかか! よく寝たぜ。俺様完全ふっっっかつ!』
隼丸!
いいときに起きてくれた。
実は──
『なにも言わなくてもわかってるぜ。眠りながらも相棒の声は聞こえてたんだ。光の女神なら一発で現れる魔法の言葉を知ってるぜ』
さすが隼丸!
『けどな、相棒。呼び出すのは夜中。どこかの離れにしな。意味はわかるな?』
おい ⋯⋯ もしかして俺に襲えと?
『その通りだ相棒。これから先のことを考えれば、光の女神のスキルは重宝する。持っていて損はないぜ』
⋯⋯ ⋯⋯ ⋯⋯
『夜中まで時間はまだある。よーく考えればいい。ただ1ついいことを教えておいてやるよ』
なんだ?
『光の女神はよだれが出るほどナイスバディないい女だぜ、かっかかか!』
長らくお待たせしました?
次回はハッスルタイムあります!




