第54話 アサシン
短くなってすみません!
次回は月曜日更新予定です!
「魂はさっき解放したはずじゃ?」
「お気に入りは別に保管するものでしょう」
俺の問いにムァイケルが律儀に答える。
「この7人の魂はあの方の元にありますので、いま取り戻すことは不可能ですよ。つまりはこの場を乗り切るには私を殺すか、パペットたちを壊してしまうかの2択となります」
隼丸さえ元気ならエルフ集団と同じ手が使えたものの ⋯⋯
ポケットから隼丸を抜く。
いつもと違って声は響いてこない。
まだ眠っているようだ。
「ムァイケル以外はできるだけ傷つけないようにやるしかないか」
操られているのは7人。
蛇神のところで出会ったエルフ集団より遥かに少ないのに、感じる脅威はこちらのほうが圧倒的に上だった。
「え!」
「どうしたフラヴィオ?」
「あの右端にいる猪種獣人なんですけど、私の記憶に間違いがなければ肆の国でも名うての槍使いです」
それに、とフラヴィオは猪種獣人の隣にいる人間を指差す。
「あの人も見たことがあります。どこかの国の剣術師範
「うちだよ」
クレンが割って入ってきた。
「伍の国の剣術師範にしてジョイの父親だ。少し前に突然姿を消したと思ったら、こんな場所で再会するとはな。彼ら以外もそれ相当に名が通った強者ばかり ⋯⋯ ん、1人見たことがないのがいるな」
クレンの目を追った先には、この場に似つかわしくない幼い少女がいた。
黒く長い髪は左右で二つに束ね。
他の6人が完全武装している中、たった1人だけボロ布を羽織り。
なによりも目を引いたのは赤と黒の色違いの瞳。
「おや、おやおやおや。この子が気になりますか? 豊月様にならお売りしてもいいんですが、彼女は私がもっとも気に入ってるパペットなんでお高いですよ」
返事はしない。
反応すればスキル蛇食いの餌食になるからだ。
「やっぱり引っかかりませんね。それでは、始めましょう」
ムァイケルから魔力を感じると同時、7人の操り人形が動き出す。
「白虎は3人を守れ!」
「うん!」
俺に襲いかかってきたのは3人。
猪種獣人、伍の国の剣術師範、もう1人は大きな斧を持った大男。
残りの4人のうちエルフ2人は後方で魔法を唱え始めている。
白虎に迫ったのは細い剣を持ったキザったらしい男とオッドアイの少女。
「創生魔法『ウオール』」
エルフ2人の周囲に壁を作り一時的に閉じ込める。
これで魔法による敵の援護射撃は防げた。
「おっと」
男の上からの斧による攻撃を隼丸で受け止める。続いて猪種獣人の突きをかわし、脇で槍を掴む。
動きが止まった俺を狙って剣術師範が懐に飛び込んできて横からの斬撃。
に合わせて顎めがけてカウンター気味の蹴りを食らわした。
剣術師範が吹っ飛ぶ。
ありゃりゃ、力入れすぎたかな?
とりあえず斧を押し返し大男を離れさせてから、脇に抱えたままの槍を粉砕。
同時、猪種獣人に少しだけ力を込めたデコピン一発。
ドゴン!、という音をたてて猪種獣人が壁にめり込んだ。
うーむ、手加減が難しい。
「創生魔法『パラライズ』」
打撃は危険なので大男は魔法で麻痺させることにした。
そうこうしているうちにエルフたちが壁を破壊。こちらに向かって攻撃を放ってくる。
「創生魔法『バリア』」
光の壁で魔法を完全シャットアウトしてから、
「創生魔法『スリーピング』」
エルフ2人を魔法で眠らせた。
正直余裕の相手だった。
なら脅威を感じたのは──
「白虎くん!」
フラヴィオの声に振り返ると、そこにはキザったらしい男と白虎が倒れていた。
オッドアイの少女が倒れたままの白虎に近づこうとする。
「創生魔法『フレア』」
火の玉を飛ばし威嚇。
少女が下がり、俺が白虎に駆け寄る。
息はしているが意識はない。
首筋に赤い跡があった。
漫画のように手刀一発で白虎を気絶させたというのか!
「隼人さん、気をつけてください。あの子、普通じゃないです!」
「だろうな」
他6人を倒したままでも最初に感じたときと変わらぬ脅威。
直感が告げる。
この子はやばいと。
「創生魔法『ウインドアロー』」
少女を取り囲むように風の矢を出現させ一斉射撃。
当たる寸前、少女が姿を消した。
「どこに消え──ぐはぁ」
背中に衝撃。
蹴られた!
いつの間にか背後に回り込まれていた。
回り込まれる?
その表現は正しくないようだ。
少女が再び目の前から消える。
影の中に沈み込むという方法で。
現れたのは俺の影から。
今度は避けることができた。
どうやら白虎に一撃を入れたのも、この戦法らしい。
「まさかシャドウ・リー?」
フラヴィオの呟きが聞こえてきた。
「誰だそれ?」
「伝説のアサシンです。誰も姿を見たことがなく、性別年齢全てが謎のままの殺し屋」
「それがこの子っていうのか?」
見た目は10歳にも満たない少女。
ただし、俺がくらった一撃はとてつもなく重かった。
防御の高い俺が飛ばされるほどだ。
伝説のアサシンと言われて納得できたかもしれない。
この言葉を聞くまでは──
「ようやく見つけた」
声はムァイケルの方からだった。
「なっ!」
見るとムァイケルの腹部から腕が生えていた。いや、背後から何者かに貫かれていた。
「だ、れですか、あ、なたは?」
「シャドウ・リー」




