第53話 黒幕
1週間更新とんでしまいました!すみません!!
少し落ち着いたので、次回は金曜か土曜に更新できると思いますのでよろしくお願いします!
ボア王国が誇る剣聖が倒れ、王都の守護兵にハキュロ率いる魔術師軍団も拘束された今、ミトラを守る兵は少ないはず。
私は隼人さん、クレン、ジョイさん、そして護衛役として白虎くんの4人とともに王城に入っていた。
「な、何者だ! 誰ぞああああ!」
私腹を肥やしていた大臣をジョイさんが吹っ飛ばした。
どんどん突き進む。
思った通り兵の姿は少ない。
いや、時折大臣やら司教やらは見かけるものの兵はおかしいぐらいいなかった。
「あそこです!」
一際大きな扉をジョイさんが蹴破った。
中には床一面に赤い絨毯が敷き詰められいて、壁にもところどころ赤い染みが ⋯⋯ う、なにこの匂い?
生臭い。
それによくよく思い出してみれば、この部屋には白い絨毯が敷かれていたはず。
じゃ、この赤いのは──
「見るな」
クレンが私の前に立ち視界を塞いできた。
「トラウマになるぞ」
ああ、やっぱりそういうことか。
「大丈夫です。聖女の仕事をしているとひどい現場にはよく出会いますから」
クレンを押しのけ部屋をちゃんと見る。
部屋中に血が飛び散っている。
さっきは脳が拒否していたのか視界に入れないようにしていた兵士のバラバラになった亡骸があちらこちらに落ちていた。
ここでなにがあったんだろう?
答えを知っているのは1人しかいない。
「教主ミトラ。この惨劇の理由をお答えください」
王座に踏ん反り返っている丸々と太った男を睨みつける。
「ひっ。ひーひっひひひひ」
言葉の代わりに返ってきたのはヨダレを撒き散らしながらの不気味な嗤い声だった。
おかしい。
私の知っているミトラは裏で工作大好き。嫌味たっぷりな口調。仲間を仲間と思わない冷たい感情の持ち主で究極のカッコつけ。
間違ってもあんな風に醜く笑ったりはしなかった。
「ミトラ教主 ⋯⋯ ?」
名前を呼んでも反応しない。
「ミトラ教主!」
強く呼んでみる。
「ひっひっひっひひひ──ひ?」
嗤いが止まった。
私を見てくる。
目が合った。
「っ!」
息を呑む。
ミトラの目の中に瞳が4つあった。
それも忙しなくグルグルと動いている。
「私が作った人工モンスターミトラ。素晴らしい出来だとは思いませんか?」
どこからともなく声がした。
部屋を見回すけど誰もいない。
どこから?
そう思った私に──
「ミトラの影だ!」
クレンの声が飛ぶ。
「誰か知らないが出てこいよ」
「これはこれは失礼いたしました」
ミトラの影からゆっくりと浮かび上がってきたのは若い男性。
真っ黒に日焼けした細目のギャル男がいた。
「ムァイケル!」
その男を見て隼人さんが驚く。
「どうしてお前がここにいるんだ!?」
「おや、違う私とお知り合いでしょうか? すみませんが最近は同期していなくて ⋯⋯ しばしお待ちを」
言って男は天を見上げた。
「──ああ、なるほど。壱と参の国でお会いしたんですね」
男は隼人さんに対して一礼すると、
「初めましてお久しぶりです豊月様。あとの方は初めましてでよろしいですか? 私はムァイケル。以後お見知りおきを」
まるで仮面をつけているかのような笑顔。
逆にそれが怖い。
「あなたは、いったい、何者なの?」
「ミツトモ商会の番頭にして、あの方の忠実なる僕でございますよ」
「あの方?」
「Aか」
隼人さんがかぶせてきた。
「その通りでございます。先程の同期であの方から新しい指令が届きました」
細目がゆっくりと開かれていく。
その瞳は赤い紅い赫い!
「あなた方のスキルと魂を奪えと」
言うが早いかムァイケルがなにかを投げた。
「あぶねえ!」
私に迫る一撃をジョイさんが受け止めてくれた。
「やりますね。よろしければあなたのお名前を聞かせてもらってよろしいですか?」
「ふん。伍の国の近衛隊隊長ジョイだ」
「あなたがかの有名なジョイさんでしたか。では、もう一撃いきますので受けてくれますか?」
「望むところ
「返事をするな!」
隼人さんの叫びは遅かったようだ。
「スキル蛇食い」
ムァイケルから小さな蛇が飛び出しジョイさんの体に吸い込まれていった。
途端に苦しみだすジョイさん。
「お前も使えるのか ⋯⋯ 」
「あの方に授けてもらいましたので。さて、残る方も大人しく受けてほしいのですが」
「断るに決まってるだろう。みんな、あいつの言葉に返事しなければ大丈夫だ」
「残念です。無理やりは嫌いなんですが、この場合は仕方ありませんよね。ミトラ、殺す手前までやってください」
王座からずりながら降りきたミトラはまるで獣のように四つん這いでこちらを睨みつけてくる。
「いきなさい!」
ミトラが床を蹴った──直後、私の隣に立っていた白虎くんが飛ばされていた。
「白虎!」
「だい、じょうぶ!」
そう言うものの噛み付こうとしてくるミトラを押さえきれていない。
あのままじゃ首を噛まれる!
「ど、けええ!」
白虎くんが下半身をミトラの腹部に入れて蹴り上げ飛ばす。
ミトラが離れた。
そこに隼人さんが突っ込んできて顔面パンチ。
「ぐべぼっ!」
ミトラがバウンドしながら壁に激突。
ダメージは ⋯⋯ なさそうだ。
すぐに立ち上がってきた。
「意外と苦戦しそうですね。ワンランク上げましょうか」
ムァイケルが指をパチンと鳴らすと、ミトラの額に角が生え、口から鋭い牙が、背中には蝙蝠のような翼が生えた。
「やりなさい、ミトラ」
「隼人さん、魔眼を!」
「でも、あいつは人間じゃ?」
「あんな姿になった人を人間とは呼べませんよ!」
「フラヴィオのスキルなら治せるだろう!」
「私の ⋯⋯ スキル?」
私の加護説明をしていないので、隼人さんは完全治癒とでも思い込んでいるのだろう。
違うんです。
私のスキルはそんないいものじゃないんです!
「無理です」
きっぱりと言い切る。
「ああなったら私では治せません」
「 ⋯⋯ そうか。なら仕方ないよな」
隼人さんが即死の魔眼を使ったと思う。
今にも襲いかかろうとしていたミトラが倒れた。
「ファンタスティック!」
これに驚き拍手とともに感嘆の声をあげたのはムァイケルだった。
「そのレアスキル、あの方がきっと喜ぶかと。ぜひとも持ち帰りたいものです。そう思いませんか、豊月様」
「 ⋯⋯ 」
隼人さんは引っかからない。
ムァイケルはあからさまにため息をつくと、
「仕方ありませんね。ミトラを失った以上、私がやりましょう。出てきてください、みなさん」
みなさん?
誰のことを──ええええ!?
ムァイケルの影からエルフやら獣人やら人間やらが次々と姿を現す。
みんな目が虚ろの割にはしっかりと立ったり歩いたりしている。
けど、生気はまったく感じられなかった。
「隼人さん、この人たち ⋯⋯ 」
「魂を抜かれた操り人形だ。なるほど、お前が操り主だったのか」
「いかにも。私がパペットマスターのムァイケルです」
優雅にお辞儀。
「それではいきますよ」
第2ラウンドが始まる。




