第52話 隼人さん出番ですよ!
4時起きのため、この時間に投稿です。
次回は6/15金曜の0時頃にアップします!
「大変だ、マニエルママ!」
マリーちゃんを探していたホークくんの慌てた声が聞こえてきた。
「どうしたの? マリーがなにかやらかした?」
「マリーはまだ見つけてないんだけど ⋯⋯ 東の方角からモンスターの大群が向かってきてる!」
「なんですって!?」
まさかモンスター兵?
そう思ったもののすぐに打ち消した。
数匹程度ならともかく大群のモンスターを兵士化させるのはさすがに無理があるからだ。
「数は? 種類は?」
「数はそう多くないけど、種類がやばいよ。先頭を走ってるのはブラックオークだ。それも3頭いる。あとのモンスターもみんなオークだよ!」
オークの群れと聞き思い当たることがあった。
私の記憶に間違いがなければ街から離れた場所にある広い草原を根城にしている奴らだ。
滅多に草原から出てこようとしないのに今日に限ってなんで ⋯⋯ ?
原因がマニエル様の娘マリーちゃんと宮廷魔術師ハキュロの魔法合戦だとわかったのは全てが終わってからだった。
「オークの群れって ⋯⋯ 嘘だろ」
思わず漏れた声はクレンのものだった。
顔は恐怖に染まっていた。
その気持ちは痛いほどわかる。
ブラックオークといえば獣種のモンスターでは圧倒的強者に位置している存在。
S級冒険者が10人集まってなんとかなるステータス平均が1万を超える化け物。
出会えば待っているのは死。
逃げることすら許されない圧倒的捕食者。
モンスター界のモンスター。
それが3頭もこっちに向かってきてる?
しかも他のオークを引き連れて?
悪い冗談にしか聞こえない。
「マニエルママ、どうすればいい? みんなに伝えて迎え撃ったほうがいいかな?」
「さすがに無理よ」
ですよね。
せめてマニエル様のMPが尽きていなければ どうにかなったかもしれないけど⋯⋯
「じゃ、みんなを避難させればいいわけ?」
「その必要もいらないわ」
え?
「そうよね、あたしの旦那様?」
マニエル様が微笑みかけたのは隼人さんだった。って旦那様って言ったよね?
絶対に言ったわ!
ということはつまり2人は夫婦で ⋯⋯ あれあれでもでも?
そうなるとマニエル様子沢山?
いやいやいや、やっぱり養子よね。きっと身寄りのない子供たちを引き取って育ててるんだわ。
さすがマニエル様。
聖母のようなお方だわ。
って違う違う!
今はそんなことを考えてる場合じゃなくて──
「隼人さんをお1人で行かせるつもりなんですか?」
「そうよ。隼人くんなら余裕でしょ」
ね!、とウインク1つ。
もう可愛すぎますマニエル様!
「 ⋯⋯ まあ、モンスター相手ならなあれを使えるか」
よっこいしょ、と年の割にに言った似合わない言葉を呟きながら隼人さんが立ち上がった。
「んじゃ、行ってくる。白虎はここの守りを頼むぞ」
「任せて、パパ!」
え、本当に1人で行かれるんですか?
相手はブラックオークですよ!
「気になるんならついていけば?」
「いいんですか?」
「隼人くんの邪魔だけはしないようにね」
「もちろんです!」
「というわけで、この子も連れていってくれる?」
「いいけど ⋯⋯ 」
隼人さんがこっちに近づいてきて、何を思ったのかなぜか私をお姫様抱っこ!
きゃーきゃーきゃー!
お姫様抱っこしてもらっちゃった。
女の子ならともかく男の娘の私にこんな瞬間がくるななんて ⋯⋯ やば、涙出そう。
「急いでるから本気で走るよ」
「え ⋯⋯ ええええええええええええええええ!」
隼人さんが私を抱いたままジャンプ。
瞬きする時間もなく、体は遥か上空に。
ちょちょちょ!
3階建ての家を越えてるんですけど!
「っと、飛びすぎた。ま、いっか」
良くないですぅ!
同じ調子でぴょんぴょんと飛び跳ねて目的の場所へ。
降ろされた私はもう頭がぐらんぐらん。
元々絶叫系が苦手なこともあって、その場にへたり込んでしまった。
そこに空からホークくんが降りてくる。
どこからか水を摘んできてくれた。
優しい、ありがとう!
「あれは父様が悪いよ」
「だよね」
「父様も昔は怖がってたくせに」
「そうなの?」
「うん。睦月ママがそう言ってたもん」
はい、新しい情報きましたよ!
睦月ママ?
誰かなそれは〜って、さっきマニエル様が言ってた気が ⋯⋯
あ、パルアイス将軍に手刀入れた美少女だ!
まさかの二股疑惑!
これだから男ってば ⋯⋯ 不潔。
「なにやら視線が痛いんですけど ⋯⋯ 」
「知りません!」
「なに怒ってんだ? まあなんでもいいけど、とりあえず今から絶対俺の前には出ちゃだめだからな」
頼まれたって出ませんよ!
「念のため上に行っててもらうか。ホーク、よろしく」
「はーい! お姉ちゃん、上に行くよ」
ホークくんに背中から抱っこされ上空へ。
そこから見える光景に戦慄を覚えた。
ブラックオークを筆頭に豚、豚、豚の大群。
人間が1人で相手できるレベルじゃない!
「隼人さん、あれは無理です。今からでも逃げてください!」
「お姉ちゃん、父様なら大丈夫だよ。マニエルママや桜雪ママにだって勝ってるんだから!」
「マニエル様に、おゆ、き?」
聞き間違いかな?
いま私のもう1人の憧れの名前が聞こえたんだけど ⋯⋯
「その、桜雪ママっていうのは?」
「ここにはいないけど、4番目のママで勇者してるんだ。すっごく強いんだから!」
やっぱり聞き間違いじゃなかった。
しかも4番目ってどういうこと!?
隼人さん、あなたいったい何人に手を出しているんですか!
私の憧れを汚さないでください。
もう女の敵に認定します、ぷんぷん!
そんなことを考えているうちにもモンスターの群れが隼人さんに迫ってきていた。
隼人さんはまだなにも動いていない。
先頭のブラックオークが隼人に牙を剥いた。
危ない!?
そう思った直後、ブラックオークがなぜか自分から横にずれていき倒れた。
後ろを走っていたブラックオーク2頭も隼人さんを避けながら倒れる。
ブラックオークだけじゃない。
他のオークたちも次々と隼人さんに迫っては左右に別れていき、最終的にバッタバッタと倒れていった。
隼人さんがなにかしたんだろうか?
動いたようには見えなかったけど ⋯⋯
「はい終わり! 2人とも降りてきていいぞ」
地上に戻る。
恐る恐るオークの1匹に近づくが動く気配はなかった。
確かに死んでいる。
「なにを、したんですか?」
「モンスターが相手だったから遠慮なく卑劣な手を使わせてもらったんだ。あ、手じゃなくて目か」
「目、ですか?」
「即死の魔眼。俺の目に宿ってる能力だよ。さ、帰ろう」
さらっと恐ろしいことを言ってくれる。
即死の魔眼なんかチート級のスキルなんですけど ⋯⋯
「──隼人さんって本当に何者なんですか?」
「んー」
隼人さんが天を向き、しばらく唸ってからこう言った。
「ただの子沢山の男かな」
答えになってなーい!




